顕熱比(SHF)とは?計算方法と空調設計での使いかたを初心者にもやさしく図解
空調の負荷計算や空気線図の問題で出てくる顕熱比(SHF)。名前はいかめしいですが、意味は「部屋から取りのぞく熱のうち、温度を下げる仕事が何割か」というシンプルな割合です。この記事では、顕熱・潜熱のおさらいから、SHFの計算例、SHFが空調設計でどう使われるかまで、図解でやさしく解説します。
顕熱比(SHF)とは?
部屋から取りのぞく全熱量のうち、顕熱が占める割合。SHF = 顕熱 ÷(顕熱 + 潜熱)で求める(SHF:Sensible Heat Factor)。
💡 なぜ? エアコンは温度(顕熱)と湿気(潜熱)の両方を処理している。その比率が分からないと、どれだけ除湿すべきか=吹出す空気の状態が決められないから。
まず「顕熱」と「潜熱」をおさらい
部屋にたまる熱には2種類あります。顕熱(けんねつ)は温度を上げる熱で、照明・パソコン・日射・人の体温などから出ます。潜熱(せんねつ)は湿気のもとになる熱で、人の汗の蒸発や調理の湯気などから出ます。
冷房は、温度を下げる(顕熱を取る)だけでなく、湿気を取りのぞく=除湿(潜熱を取る)も同時にやっています。ジメジメした部屋が涼しく感じないのは、潜熱が残っているからです。
👉 くわしく知りたい方はこちら顕熱・潜熱とは?空調の基本を初心者にもやさしく図解
SHFの計算はかんたん
SHFの求め方
① 部屋の顕熱負荷を求める → 例:8kW(照明・機器・日射・人の体温など)
② 部屋の潜熱負荷を求める → 例:2kW(人の汗・湯気など)
③ 全熱 = 顕熱 + 潜熱 = 8 + 2 = 10kW
④ SHF = 顕熱 ÷ 全熱 = 8 ÷ 10 = 0.8
SHFは0〜1のあいだの値になります。1に近いほど「温度を下げる仕事ばかり」、小さいほど「除湿の仕事が多い」ことを表します。もし潜熱がゼロ(湿気の発生がない部屋)ならSHF=1です。
建物ごとのSHFのめやす
① 一般の事務室:0.8前後(人はいるが湿気の発生は少なめ)
② 人が密集する会議室・講堂:0.7前後(汗=潜熱が増える)
③ 飲食店・厨房のある店:0.6〜0.7(湯気と人で潜熱が多い)
🤔 なぜ飲食店はSHFが小さいの?
鍋やゆで釜からの湯気(潜熱)と、お客さんの汗(潜熱)が多いからです。潜熱が増えると分母(顕熱+潜熱)が大きくなるので、SHFは小さくなります。SHFが小さい部屋ほど、空調は除湿をがんばる設計にする必要があります。
SHFで何が決まる?(空気線図での使いかた)
空調の設計では、湿り空気線図という温度と湿気のグラフの上で、「室内の空気を、どんな状態の空気にして吹き出せばよいか」を決めます。このとき、室内の点から引く線の傾きを決めるのがSHFです。
SHFが1に近ければ線はほぼ水平で、温度だけ下げればOK。SHFが小さいほど線は下向きになり、コイルでしっかり除湿(=空気をより低い温度まで冷やして水分を取る)必要があります。つまりSHFは、冷却コイルの設計条件を決める大事な手がかりなのです。
🔧 現場の使いどころ
空調機の仕様書には冷却能力が「全熱◯kW・顕熱◯kW」と併記されています。これはまさにSHFの考え方で、部屋のSHFと機器のSHFが合っていないと、「温度は下がるのにジメジメする」「寒いのに湿気が取れない」といった不具合につながります。
💡 覚え方
SHFは「温度シゴトの割合」とイメージしましょう。1に近い=ほぼ温度を下げるだけ。小さい=湿気取り(除湿)のシゴトが多い。「湿気が多い部屋ほどSHFは小さい」と結びつけておくと、計算問題でも迷いません。
試験でのポイント
ここが問われる
① SHF = 顕熱 ÷(顕熱 + 潜熱)。分母は全熱(顕熱+潜熱)
② 潜熱がゼロならSHF=1(顕熱だけの部屋)
③ 人や湯気が多い部屋ほど潜熱が増え、SHFは小さくなる
④ SHFが小さいほど除湿量が多い設計が必要になる
よくある質問
Q. SHFが1より大きくなることはありますか?
A. 冷房ではありません。SHFは全熱に対する顕熱の割合なので、最大でも1(潜熱ゼロのとき)です。
Q. 暖房のときもSHFを使いますか?
A. SHFが主に活躍するのは、除湿の量を決める必要がある冷房の設計です。暖房では加湿の検討が中心になるため、SHFが話題になるのはほとんど冷房側と覚えておけば大丈夫です。
Q. 顕熱負荷と潜熱負荷にはそれぞれ何が入りますか?
A. 顕熱負荷は日射・照明・OA機器・人体の体温・すきま風の温度分など、温度を上げる熱です。潜熱負荷は人体の汗(発汗)・調理や給湯の湯気・すきま風の湿気分など、水蒸気として持ちこまれる熱です。人体は顕熱と潜熱の両方を出すことに注意しましょう。
まとめ
・顕熱=温度を上げる熱、潜熱=湿気のもとの熱
・SHF = 顕熱 ÷(顕熱 + 潜熱)。0〜1の割合
・事務室は0.8前後、人や湯気の多い部屋ほど小さくなる
・SHFが小さい=除湿をがんばる設計が必要(空気線図の線の傾き)
