ビルの蛇口から出る水も、空調の冷温水も、地下にたまった排水も、建物の中で水を動かしているのはすべてポンプです。この記事では、ポンプが水を送る仕組みから、カタログに出てくる揚程(ようてい)の意味、そして渦巻・多段渦巻・水中ポンプの使い分けまで、図解でやさしく解説します。

ポンプとは?

羽根車(インペラ)を回して水に圧力を与え、低い所から高い所へ・遠くへ水を送り出す機械

💡 なぜ? 水は放っておくと高い所から低い所へしか流れない。逆向きに動かしたり、配管の抵抗に打ち勝って遠くまで送ったりするには、機械の力で圧力を与える必要があるから。

ポンプが水を送る仕組み

渦巻ポンプの断面と水の流れモーター軸で羽根車を回す① 中心から水を吸い込む② 羽根車の回転で外へ飛ばす③ 渦巻で勢いを圧力に変える吐出口:圧力のついた水が出る吸込口羽根車(インペラ)渦巻ケーシング
渦巻ポンプの断面。中心から吸い込み、羽根車の回転で外へ飛ばし、渦巻で圧力に変える

建物の設備でいちばんよく使われるのが渦巻(うずまき)ポンプです。名前のとおり、カタツムリのような渦巻形のケース(ケーシング)の中で羽根車が回っています。水を送る流れは、次の3ステップです。

渦巻ポンプが水を送る3ステップ

① モーターの軸につながった羽根車(インペラ)が高速で回る

② 中心から吸い込まれた水が遠心力で外側へ飛ばされ、勢いがつく

③ 渦巻形のケーシングで勢い(速度)が圧力に変わり、吐出口から送り出される

遠心力は、ぬれた傘をくるくる回すと水滴が外へ飛んでいくのと同じ力です。羽根車が水を外へ投げ飛ばし、その勢いを渦巻形の通路でゆっくり受け止めることで、強い圧力を持った水に変わります。

🔧 現場の使いどころ

渦巻ポンプは遠心ポンプとも呼ばれます。ビルの給水ポンプ、空調の冷温水ポンプ、冷却水ポンプなど、設備工事で扱うポンプの大半がこの仲間です。図面では吸込口と吐出口の向き(吸込は軸方向・吐出は上向きが基本)もチェックされます。

揚程(ようてい)=ポンプの実力を表す数字

揚程=水を押し上げられる高さ高置水槽受水槽ポンプ揚程〔m〕
揚程のイメージ。ポンプが水をどの高さまで押し上げられるかをmで表す

ポンプのカタログには「流量 ◯m³/min・揚程 ◯m」のように書かれています。流量は「どれだけの量を送れるか」、揚程は「どれだけ高くまで押し上げられるか」です。

揚程とは?

ポンプが水を押し上げられる高さをメートル〔m〕で表した値。ポンプの圧力を高さに言い換えたもの。

💡 なぜ? 「0.5MPa」と言われるより「水を50m上げられる」のほうが、給水計画では直感的に分かりやすいから。水柱10m分の圧力≒0.1MPaに相当する。

ここで大事なのは、実際のポンプ選びでは持ち上げる高さだけでは足りないことです。水が配管の中を流れるときは、管の内面との摩擦や曲がり・弁の抵抗で圧力が失われます(摩擦損失)。その分も上乗せして考えます。

全揚程の考え方

実揚程 = 実際に持ち上げる高さ(例:受水槽の水面 → 高置水槽の水面)

摩擦損失 = 配管・弁・曲がりで失われる圧力を高さに換算した値

全揚程 = 実揚程 + 摩擦損失 ← ポンプはこの値で選ぶ

💡 覚え方

揚程は「ポンプの筋力を高さで言い表した値」とイメージすると忘れません。カタログの「揚程50m」は「50mの高さまで水を持ち上げる力がある」という意味。そして実際に必要な力は「持ち上げる高さ+配管の抵抗のぶん」=全揚程です。

ポンプの種類と使い分け

ポンプにはたくさんの種類がありますが、建物の設備でよく出てくるのは次の3つです。「基本の渦巻」「高さを稼ぐ多段」「排水の水中」と覚えると整理しやすいです。

① 渦巻ポンプ(いちばん基本)

上の断面図で説明した、羽根車1枚の基本形です。構造がシンプルで壊れにくく、給水・空調・冷却水などあらゆる場面の主役です。

⭕ 構造がシンプルで丈夫・価格も手ごろ

⭕ 流量の調整がしやすく、いろいろな用途に使える

❌ 羽根車1枚では高い揚程(強い圧力)を出しにくい

② 多段渦巻ポンプ(高いビルへ水を上げる)

多段渦巻ポンプ:圧力を積み上げる1段目2段目3段目圧力がどんどん高くなる吸込吐出(高圧)羽根車を直列に並べて圧力を積み上げる
多段渦巻ポンプ。羽根車を直列に並べ、1段ごとに圧力を積み上げる

羽根車を1本の軸に直列に何枚も並べたポンプです。1段目で圧力のついた水を2段目がさらに加圧し、3段目がさらに…と、段の数だけ圧力(揚程)が積み上がっていきます。高層ビルの給水など、高い揚程が必要な場面で使われます。

⭕ 高い揚程が出せる(高層ビルの給水・ボイラーへの給水など)

❌ 構造が複雑になり、価格も高くなる

③ 水中ポンプ(排水の主役)

水中ポンプ:水の中に沈めて使う排水が流入モーター一体・防水外へ排水電源ケーブル水中ポンプ湧水・汚水をくみ上げる
水中ポンプ。モーターと一体の防水構造で、排水槽の水の中に沈めて使う

モーターとポンプが一体になった防水構造で、そのまま水の中にドボンと沈めて使うポンプです。建物の地下にわき出る水や汚水は、いったん排水槽にためてから水中ポンプでくみ上げて外の下水道へ送ります。

ふつうの渦巻ポンプは、始動前にポンプ内を水で満たす呼び水(よびみず)という作業が必要ですが、水中ポンプは最初から水の中にあるので呼び水がいりません

⭕ 水中に置くので設置スペースや呼び水がいらない

⭕ 地下排水槽・工事現場の水替えなどで大活躍

❌ 点検・修理のたびに水中から引き上げる必要がある

試験でのポイント

ポンプ2台のつなぎ方で変わる① 直列(縦につなぐ)高く上げられる揚程(高さ)がアップ② 並列(横に並べる)量が2倍流量(量)がアップ
直列運転は揚程アップ、並列運転は流量アップ

ここが問われる

直列運転 = 揚程が増える(同じ流量で、より高く上げられる)

並列運転 = 流量が増える(同じ揚程で、より多く送れる)

③ 吸込側の圧力が下がりすぎるとキャビテーションが起きる

④ 弁の急閉やポンプの急停止でウォーターハンマーが起きる

🤔 ポンプを2台つなぐと能力は2倍になる?

理屈のうえでは、直列なら揚程が2倍、並列なら流量が2倍です。ただし実際は配管の抵抗があるため、きっちり2倍にはなりません。試験では「直列=揚程アップ・並列=流量アップ」の対応を確実に覚えれば十分です。

キャビテーションを防ぐには、ポンプをできるだけ水面の近く(低い位置)に置き、吸込配管は短く・太くして、吸込側の圧力低下を小さくするのが基本です。

キャビテーションとは?ポンプで起きる原因と対策を初心者にもやさしく図解👉 くわしく知りたい方はこちらキャビテーションとは?ポンプで起きる原因と対策を初心者にもやさしく図解

よくある質問

Q. 揚程と圧力はどう違うのですか?

A. 同じものを別の単位で表しています。水柱10mぶんの圧力がおよそ0.1MPa(約1気圧)です。「揚程50m」のポンプは、およそ0.5MPaの圧力を出せるという意味になります。

Q. 呼び水とは何ですか?

A. 渦巻ポンプは中身が空気のままだと水を吸い上げられないため、運転前にポンプとポンプまでの吸込管を水で満たします。この作業が呼び水です。水中ポンプは水の中に沈んでいるので呼び水は不要です。

Q. ポンプの音や振動が急に大きくなりました。何が起きていますか?

A. 吸込側の圧力不足で水の中に気泡が生まれて弾ける、キャビテーションの可能性があります。放置すると羽根車がむしばまれて性能が落ちるため、吸込条件(水位・配管・弁の開度)の確認が必要です。

まとめ

・ポンプ=羽根車で水に圧力を与えて送り出す機械

・揚程=押し上げられる高さ〔m〕。ポンプ選びは全揚程(実揚程+摩擦損失)

渦巻=基本/多段=高揚程/水中=排水と役割で覚える

直列=揚程アップ・並列=流量アップ