結論からいうと、「実効温度差(ETD)」は、日射で熱くなった屋根や外壁から室内に入ってくる熱を計算しやすくするために使う、“見かけの温度差”です。実際の「外気温−室温」よりも大きくなり、さらに壁が熱をためて遅れて伝える「時間遅れ」まで織り込んだ値になっています。なぜ単純な温度差ではダメなのかを、たとえ話と図解でやさしく解説します。

実効温度差(ETD)ってなに?

実効温度差(ETD)と冷房負荷のイメージ

壁を通って入ってくる熱の量は、ふつう「熱の通りやすさ(熱通過率K)×面積A×温度差Δt」で計算します。

このとき温度差は、本来なら「外気温−室温」です。ところが屋根や西日の当たる壁は、直射日光で表面が外気よりずっと熱くなっているので、単純な「外気温−室温」では入ってくる熱を小さく見積もりすぎてしまいます。

そこで、日射の影響と時間遅れをまとめて織り込んだ“見かけの温度差”=実効温度差(ETD)を使い、Q=K×A×ETDとして計算します。

📘 実効温度差(ETD)とは?

Equivalent Temperature Difference の略。日射を受ける外壁・屋根からの熱の侵入を、「日射ぶん」と「時間遅れ」を含めた仮想の温度差に置き換えたもの。

方位(東西南北・水平)と時刻ごとに、表の数値として与えられます。

なぜ単純な「外気温−室温」じゃダメなの?

🔧 現場での使いどころ:冷房能力が足りなくなるのを防ぐ

真夏の屋根の表面温度は、外気が30℃でも60〜70℃に達します。もし「外気温−室温」だけで計算すると、入ってくる熱を実際より小さく見積もり、選んだ冷房機が能力不足になって部屋が冷えない、という失敗につながります。

だから日射でアツアツになった表面のぶんを上乗せしたETDで安全に見積もるのです。

💡 炎天下の車のボンネット

炎天下に置いた車のボンネットは、外気が30℃でも触れないほど熱いですよね。あれは日射で表面がぐんと熱くなっているからです。

屋根や西壁もこれと同じ。その“日なたの熱さ”を温度差に反映したのがETD、とイメージすると分かりやすいです。

「時間遅れ(タイムラグ)」も大事なポイント

壁には熱をためる性質(熱容量)があります。そのため、外が一番暑い昼すぎにすぐ室内が暑くなるわけではなく、数時間遅れて室内へ熱が届きます

しかも、厚くて重い壁(コンクリートなど)ほど遅れが大きく、ピークもなだらかになります。ETDはこの時間遅れも含んだ値なので、時刻と方位ごとに数字が変わります。

実効温度差(ETD):日射で壁が熱くなり時間差で伝わる外気温の差だけでなく、日射でたまった熱と“時間差”を見込んだのがETDです。日ざし屋根・壁熱をためる時間差で室内へ室内暑くなる方位・時刻でためる熱が変わる→ETDで冷房負荷を見込む
屋根や壁は日射で熱をため、少し遅れて室内へ伝えます。その「ためこみ+遅れ」を見込んだ温度差が実効温度差(ETD)です。

どう使う? 冷房負荷計算での位置づけ

  • 屋根・外壁からの侵入熱:Q=K×A×ETD。方位と時刻でETD表を引く。
  • 窓ガラスは別計算:ガラスは日射熱取得(日射が直接入る分)として別に扱う。
  • 日射の当たらない内壁・床:単純な温度差でOK(ETDは不要)。
  • ピーク時刻に注意:方位ごとに暑くなる時刻が違う(東は午前、西は午後など)。建物全体のピークで機器を選ぶ。

試験でのポイント

  • 定義:日射と時間遅れを含む“見かけの温度差”=ETD。
  • 計算:屋根・外壁の侵入熱 Q=K×A×ETD。
  • 方位・時刻で変わる:表から該当値を読む。
  • 重い壁ほど時間遅れが大きくピークが小さい(熱容量の効果)。

実効温度差は冷房負荷計算の頻出論点です。過去問で計算と考え方を確認しましょう。

過去問解説(1級管工事)を見る →

顕熱・潜熱とは?空調の基本を初心者にもやさしく図解👉 くわしく知りたい方はこちら顕熱・潜熱とは?空調の基本を初心者にもやさしく図解

✅ この記事のまとめ

  • 実効温度差(ETD)=日射と時間遅れを含めた“見かけの温度差”。Q=K×A×ETDで使う。
  • 屋根・西壁は日射で表面が高温(真夏の屋根は60〜70℃)。単純な内外温度差では熱を過小評価する。
  • 壁は熱をためるので、室内へ伝わる熱は遅れて・なだらか(時間遅れ)。
  • 重い壁ほど時間遅れが大きく、ピークが小さい
  • 窓ガラスはETDではなく日射熱取得として別計算

よくある質問(FAQ)

Q. ETDは「外気温−室温」より大きいの?

A. 日射の当たる屋根・外壁では大きくなります。日射で表面が熱くなる分を上乗せしているためです。

Q. なぜ時間遅れが起きるの?

A. 壁が熱をためてから室内へ放出するためです。厚く重い壁ほど遅れが大きく、ピークもなだらかになります。

Q. 窓ガラスもETDで計算するの?

A. いいえ。ガラスは日射が直接入るため、日射熱取得として別に計算します。

Q. 重い壁と軽い壁、どちらが冷房に有利?

A. 重い壁はピークが遅れて小さくなるので、ピーク負荷を抑えやすく有利になりやすいです。

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