下水道が通っていない地域では、トイレやお風呂の水はどこへ行くのでしょうか。答えは、家や建物のそばに埋められた浄化槽(じょうかそう)です。浄化槽は微生物の力で汚れた水をきれいにしてから川へ流す、いわば「小さな下水処理場」。この記事では、水がきれいになる流れから合併処理と単独処理の違い、BOD除去率まで図解でやさしく解説します。

浄化槽とは?

トイレのし尿や台所・風呂などの生活排水を、微生物の働きで浄化してから放流する設備。下水道が整備されていない地域で使われる。

💡 なぜ? 汚れた水をそのまま川へ流すと、悪臭や水質汚濁、感染症の原因になる。下水処理場まで運べないなら、その場できれいにしてから流すしかないから。

浄化槽の中で水がきれいになる流れ

浄化槽の中で水がきれいになる流れ地面ブロワ(空気を送る)汚泥塩素剤汚れた水きれいな水① 嫌気ろ床槽② 接触ばっ気槽③ 沈殿槽④ 消毒槽微生物が汚れを食べて水をきれいにする
浄化槽の断面。嫌気ろ床槽→接触ばっ気槽→沈殿槽→消毒槽の順に水がきれいになっていく

浄化槽の中はいくつもの部屋に分かれていて、水が順番に通りぬけるあいだにだんだんきれいになっていくしくみです。主役は、汚れを食べて分解してくれる目に見えない微生物たちです。

水がきれいになる4ステップ

嫌気(けんき)ろ床槽:空気のない環境で、嫌気性微生物が大きな汚れをじっくり分解。ろ材が汚れを引っかける

接触ばっ気槽:ブロワで空気を送りこみ、好気性微生物が汚れをどんどん食べる

沈殿槽:微生物のかたまり(汚泥)をしずめて、上ずみのきれいな水だけを取り出す

消毒槽:塩素剤で大腸菌などを消毒してから放流する

2種類の微生物がリレーで働く① 嫌気性微生物空気がきらい。大きな汚れをじっくり分解する② 好気性微生物空気がすき。酸素をもらって汚れをどんどん食べる嫌気→好気の順にリレーして汚れを分解
嫌気性微生物と好気性微生物。性質のちがう2チームがリレーで汚れを分解する

微生物には、空気がきらいな嫌気性微生物と、空気がすきな好気性微生物の2チームがあります。浄化槽は嫌気→好気の順のリレーで汚れを分解するのがポイントです。先に嫌気チームが大きな汚れを分解し、あとから好気チームが残りを一気に食べつくします。

🤔 なぜわざわざ空気を送りこむの?

好気性微生物は、酸素がないと汚れを食べる元気が出ないからです。そのためにブロワ(送風機)で常に空気を送り、槽の中に細かい泡を出しています。これをばっ気(曝気)と呼びます。浄化槽のそばで「ブーン」と鳴っている小さな箱がブロワです。

合併処理と単独処理:いま新設できるのは合併だけ

合併処理と単独処理のちがい① 合併処理(いまの標準)トイレ台所・風呂浄化槽全部きれいにぜんぶ処理してから放流② 単独処理(新設禁止)トイレ台所・風呂浄化槽未処理!生活雑排水がそのまま川へ
合併処理はすべての生活排水を処理。単独処理はトイレだけで、雑排水が未処理のまま川へ流れてしまう

浄化槽には合併(がっぺい)処理浄化槽単独処理浄化槽の2種類があります。合併処理はトイレの水も台所・風呂の水もぜんぶまとめて処理します。いっぽう昔の単独処理はトイレの水しか処理せず、台所や風呂の水(生活雑排水)はそのまま川へ流れていました。

⚠ 注意

単独処理浄化槽は水質汚濁の原因となるため、現在は新しく設置することができません(浄化槽法の改正により、新設できるのは合併処理浄化槽のみ)。試験でも「浄化槽=合併処理が原則」とおさえておきましょう。

性能はBODで表す:除去率90%以上

浄化槽の「きれいにする力」は、水の汚れの指標BODで表します。BODは水中の汚れを微生物が分解するときに使う酸素の量で、数字が大きいほど汚れた水です。

BOD・CODとは?水のよごれの指標を初心者にもやさしく図解👉 くわしく知りたい方はこちらBOD・CODとは?水のよごれの指標を初心者にもやさしく図解

小型の合併処理浄化槽に求められる性能は、BOD除去率90%以上、放流水のBOD 20mg/L以下。つまり「入ってきた汚れの9割以上を取りのぞき、きれいになった水だけを流す」ことが求められています。

💡 覚え方

「9割きれいにして、20以下で流す」とセットで覚えましょう。除去率90%以上・放流水BOD20mg/L以下は、浄化槽の試験問題でくり返し出てくる数字です。

試験でのポイント

ここが問われる

① 新設できるのは合併処理浄化槽のみ(単独処理は新設禁止)

② 処理の順番は嫌気ろ床 → 接触ばっ気 → 沈殿 → 消毒

③ 性能はBOD除去率90%以上・放流水BOD20mg/L以下

④ 本体はFRP(繊維強化プラスチック)製が主流で、工場生産して現場に埋める

⑤ 設置後は保守点検・清掃・法定検査が義務づけられている

🤔 浄化槽を埋めたあとに水を張るのはなぜ?

地下水で槽が浮き上がったり、土の圧力で変形したりするのを防ぐためです。埋めもどしのときに槽内へ水を張りながら行うのが正しい施工手順で、施工の試験問題でもよく問われます。

よくある質問

Q. 浄化槽の点検はどのくらいの頻度で必要ですか?

A. 保守点検は処理方式や大きさで決まった回数(家庭用ではおおむね4か月に1回程度)、清掃は年1回以上、さらに都道府県の指定検査機関による法定検査を毎年受けることが浄化槽法で義務づけられています。

Q. 浄化槽は電気代がかかりますか?

A. かかります。微生物に酸素を送るブロワは24時間動きつづけるためです。ブロワを止めると好気性微生物が弱って処理能力が落ち、悪臭の原因になるので、勝手に電源を切ってはいけません。

Q. 浄化槽できれいにした水は飲めますか?

A. 飲めません。放流できる水質(BOD20mg/L以下)と飲める水質はまったく別のレベルです。あくまで「川や水路に流してよい水準まできれいにする」設備です。

まとめ

・浄化槽=微生物の力で排水を浄化する小さな下水処理場

・流れは嫌気ろ床 → 接触ばっ気 → 沈殿 → 消毒。嫌気→好気のリレーがミソ

・新設できるのは合併処理浄化槽だけ(単独処理は新設禁止)

・性能はBOD除去率90%以上・放流水BOD20mg/L以下

・ブロワは24時間運転。保守点検・清掃・法定検査が義務