大きなビルや工場の熱源機械室で活躍する吸収冷凍機。その現在の主流が二重効用(にじゅうこうよう)吸収冷凍機です。名前だけ聞くとむずかしそうですが、ポイントはたったひとつ。「加熱に使った熱を、捨てずにもう1回使う」——これだけです。この記事では、吸収冷凍機のおさらいから二重効用のしくみ、一重効用との違いまで図解でやさしく解説します。

二重効用吸収冷凍機とは?

吸収冷凍機のうち、再生器を高温・低温の2段構えにして、高温再生器で発生した蒸気の熱を低温再生器の加熱にもう一度使う方式。一重効用にくらべて効率が大きく向上する。

💡 なぜ? 一重効用では、再生器から出る高温の蒸気が持つ熱をそのまま凝縮器で捨てていた。この「まだ熱い蒸気」をもう1回加熱に使えば、同じ冷房能力を少ない燃料で出せるから。

まず吸収冷凍機をおさらい

吸収冷凍機のしくみ(4つの部屋のループ)④ 凝縮器③ 再生器① 蒸発器② 吸収器冷媒の蒸気液にもどって降りる蒸気が吸われるポンプで送る冷水ここで冷水を作る加熱(ガス・蒸気)冷媒は「水」。熱のちからでぐるぐる回して冷水を作る
吸収冷凍機のしくみ。冷媒は水。蒸発→吸収→再生→凝縮の4つの部屋をぐるぐる回る

吸収冷凍機は、電気で圧縮機を回すふつうの冷凍機とちがい、熱のちからで冷水を作る冷凍機です。冷媒はなんとただの水。機械の中を強い真空にすると、水はわずか5℃前後でも蒸発できるようになり、蒸発するときにまわりから熱をうばって冷水を作ります。

4つの部屋のはたらき

蒸発器:真空の中で水(冷媒)が蒸発し、冷水から熱をうばう(ここで冷水完成)

吸収器:蒸発した水蒸気を吸収液(臭化リチウム)がぐんぐん吸いこむ

再生器:水を吸ってうすまった吸収液を加熱し、水分を追い出して元にもどす

凝縮器:追い出された水蒸気を冷やして水にもどし、蒸発器へ返す

つまり吸収冷凍機の心臓部は、うすまった吸収液を煮つめて復活させる再生器です。ここでどれだけ上手に加熱できるかが、機械全体の効率を決めます。

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二重効用のしくみ:熱を2回使う

二重効用=加熱に使った熱を2回使う高温再生器(1回目の加熱)低温再生器(2回目の加熱)凝縮器燃料(ガスなど)高温の蒸気この蒸気の熱を捨てずにもう1回使う!熱を2回使うので、同じ冷房能力を少ない燃料でまかなえる
高温再生器で発生した高温の蒸気を、低温再生器の加熱源としてもう一度使う

二重効用は、この再生器を高温再生器と低温再生器の2段構えにしたものです。流れを追ってみましょう。

二重効用の流れ

高温再生器をガスバーナーや蒸気で加熱する(1回目の加熱)

② 吸収液から追い出された高温の水蒸気が出てくる。この蒸気はまだ熱い!

③ その蒸気を低温再生器の加熱源として使う(2回目の加熱)

④ 2回目の加熱でさらに水分を追い出せるので、燃料が少なくてすむ

「効用」とは加熱に熱を使う回数のこと。1回しか使わなければ一重効用、2回使えば二重効用です。お風呂の残り湯を洗濯に使うように、まだ使える熱を捨てずに使い切るのがミソです。

💡 覚え方

「二重効用=熱の2度づかい」とそのまま覚えましょう。高温再生器から出た蒸気は「まだ熱いお湯」。捨てずに低温再生器の「追いだき」に使う、とイメージすると忘れません。

一重効用とどれくらい違う?

一重効用と二重効用のちがい① 一重効用再生器 1つ加熱は1回だけ効率(COP)約0.7② 二重効用(いまの主流)高温再生器低温再生器熱を2回使う効率(COP)約1.2〜1.3
一重効用の効率(COP)は約0.7、二重効用は約1.2〜1.3と大幅に向上する

効率(成績係数COP)の目安は、一重効用が約0.7、二重効用が約1.2〜1.3。同じ冷房能力なら燃料消費が大きく減るため、現在ビルに納入される吸収冷凍機は二重効用が主流です。なお、さらに熱を3回使う三重効用も実用化されています。

🤔 吸収冷凍機はなぜ電気が少なくてすむの?

ふつうの冷凍機で一番電気を食う圧縮機がないからです。吸収冷凍機で電気を使うのは吸収液を送る小さなポンプくらい。そのかわり熱(ガス・蒸気)をエネルギー源にするので、電気の受電容量をおさえたいビルや、排熱・蒸気が手に入る工場と相性抜群です。

🔧 現場の使いどころ

吸収式は圧縮式にくらべて捨てる熱(排熱)が多く、冷却塔がひとまわり大きくなります。図面で冷却塔の容量が大きいときは「熱源は吸収式かな?」と推測できます。また、ガスを直接焚いて冷水も温水も作れる直焚き吸収冷温水機は、ボイラーを別に置かなくてよいのでビルの熱源として人気です。

試験でのポイント

ここが問われる

① 吸収冷凍機の冷媒は水、吸収液は臭化リチウム(LiBr)

② 圧縮機がなく、熱(ガス・蒸気)で駆動。電力消費が少ない

③ 二重効用=高温・低温の2つの再生器で熱を2回使い、効率アップ

④ サイクルは蒸発 → 吸収 → 再生 → 凝縮の順

⑤ 圧縮式より排熱が多く、冷却塔は大きめが必要

よくある質問

Q. 直焚き吸収冷温水機とは何ですか?

A. 高温再生器をガスや油のバーナーで直接加熱するタイプの吸収冷凍機で、夏は冷水、冬は温水を1台で作れます。ボイラーを別に設置しなくてよいため、ビルの熱源として広く使われています。

Q. 吸収冷凍機にフロンは使われていますか?

A. 使われていません。冷媒は水、吸収液は臭化リチウム水溶液で、オゾン層破壊や地球温暖化係数の心配がない組み合わせです。

Q. 二重効用があるなら、なぜ一重効用も残っているのですか?

A. 一重効用は80〜90℃程度の低い温度の熱源でも動かせるからです。工場の排熱や太陽熱、コージェネレーションの排湯など「安く手に入る低温の熱」を活用する場面では一重効用が選ばれます。

まとめ

・吸収冷凍機=熱で冷水を作る冷凍機。冷媒は水・吸収液は臭化リチウム

・サイクルは蒸発 → 吸収 → 再生 → 凝縮

・二重効用=高温・低温の2段再生器で熱を2回使ういまの主流

・効率は一重の約0.7に対し二重は約1.2〜1.3

・圧縮機がないので省電力、そのかわり冷却塔は大きめ