「ネットワーク工程表、用語が多くて頭が混乱する…」——そんな方へ。じつはネットワーク工程表は、解き方のコツさえつかめば“必ず点が取れるラッキー問題”です。この記事では、用語の意味から過去問の解き方まで、図を使ってやさしく解説します。

ネットワーク工程表とは?

ネットワーク工程表とは、工事やプロジェクトの作業を矢印(→)と丸(○)の図で表した工程表です。

「どの作業が終われば、次にどの作業を始められるか」という作業の順番と関係が一目でわかります。

棒グラフ式(バーチャート)と違い、作業どうしのつながりや“同時に進められる作業”がはっきり見えるのが最大の特徴です。

まずは「休日の家事」でイメージ

むずかしく考えず、休日の家事で考えてみましょう。洗濯機を回している“間に”、掃除機やお風呂洗いを進められますよね。

この“同時に進められる作業”を図にできるのが、ネットワーク工程表です。

休日の家事で“並行作業”をイメージ洗濯機を回す 40分干す 10分掃除機 15分お風呂を洗う 15分(待ち)
休日の家事の例。「洗濯機を回す(40分)」の“間に”「掃除機・お風呂洗い(計30分)」を片づけられる=並行作業のうまみ。○がイベント、→がアクティビティ(作業)。

ほかの工程表とのちがい

工程表にはいくつか種類があります。その中でネットワーク工程表が試験で重視されるのは、作業どうしの前後関係と「クリティカルパス(最重要ルート)」がはっきりわかるからです。

代表的な3つを比べてみましょう。

ネットワーク式 バーチャート
(横線式)
曲線式
(出来高累計)
作業の前後関係 ◎ ひと目でわかる △ わかりにくい ✕ わからない
クリティカルパス ◎ 求められる ✕ 求められない ✕ 求められない
図の作りやすさ △ 慣れが必要 ◎ かんたん ○ ふつう
進み具合の管理 ○ できる ○ できる ◎ 出来高で管理

このように、「どの作業を急げば工期が縮むか」までわかるのがネットワーク工程表の強みです。だからこそ作り方・読み方が試験で問われます。

ネットワーク工程表の基本用語

まずは図の“部品”の名前を覚えましょう。下の図とセットで見るとスッと入ります。

ネットワーク図の“部品”(用語)A(作業名)3日→=アクティビティ(作業)点線=ダミー(0日)○=イベント(結合点)日数=デュレイション
アクティビティ(作業):ひとつの作業のこと。図では矢印(→)で表します。「壁を塗る」「配管をつなぐ」など、時間がかかる仕事のことです。矢印の根元の○が始まり・先端の○が終わりを表します。
イベント(結合点):作業の開始点・終了点。図では○(丸)で表し、番号をふります。イベント自体は時間を使いません(点なので0日)。「ある作業が終わった瞬間=次の作業を始められる瞬間」を表す“区切り”だと思ってください。
デュレイション(所要日数):その作業にかかる日数。矢印のそばに数字で書きます(例:3日)。この数字を足したり引いたりして、工期や余裕を計算していきます。
ダミー:作業の順序だけを示す“見えない作業”。点線の矢印で表し、所要日数は0日です。「実際の作業はないけれど、こっちが終わらないと次へ進めない」という前後関係だけを伝えるための矢印です。

📌 ポイント ある作業を“別の道の作業の先行条件”にもしたいときに使うのがダミーです(くわしくは、このあとの「ダミー(点線)はなぜ必要?」の図で解説します)。
パス/クリティカルパス:スタートからゴールまでの道すじ=パス。その中でいちばん日数が長い道クリティカルパスです。

📌 ポイント 全部の作業が終わる=いちばん時間のかかる道が終わること。だからこの道の長さ=工期になり、ここが1日遅れると工期もそのまま1日延びます。工程管理でいちばん注目すべき道です。
リミットパス:クリティカルパスの次に長い(余裕の少ない)パス。クリティカルパスほどではないものの余裕(フロート)が小さいので、少しの遅れで工期に響きやすい“要注意の道”です。
最早開始時刻(EST):その作業をいちばん早く始められる時刻。スタートを0として、矢印の向きに日数を足していく(前進計算)と求められます。

📌 ポイント 丸に複数の矢印が入るときは、いちばん大きい値を採用します。先行作業が全部終わらないと次へ進めないからです。
最早終了時刻(EFT):その作業をいちばん早く終えられる時刻。EFT=EST+所要日数。つまり「いちばん早く始めて、かかる日数を足した」時刻です。
最遅開始時刻(LST):工期を遅らせないために、遅くともいつ始めればよいかの時刻。ゴールの時刻から後ろ向きに引いていく(後退計算)と求められます。

📌 ポイント 丸から複数の矢印が出るときは、いちばん小さい値を採用します。どの後続作業にも間に合わせる必要があるからです。
最遅完了時刻(LFT):工期を守るために、遅くともいつ終えればよいかの時刻。LST=LFT−所要日数。「ここまでに終わらせないと、後ろの作業が間に合わない」というリミットです。
フロート(余裕時間):作業に許される“ゆとり(遅れてもOKな時間)”最遅−最早の差で求められます。

📌 ポイント クリティカルパス上の作業はフロートが0です。クリティカルパスは“いちばん長い道=工期そのもの”なので、その上の作業は最早と最遅が一致してしまうから。つまり1日でも遅らせると工期がそのまま延びる=遅らせる余裕がまったくない、ということです。
トータルフロート:工期を遅らせない範囲で持てる最大の余裕TF=最遅完了時刻−最早終了時刻。「全体の工期に影響しない範囲で、その作業を最大どれだけ遅らせてよいか」を表します。ふつう“フロート”といえばこれを指します。
フリーフロート後続の作業の最早開始を遅らせずに持てる余裕。トータルフロート以下になります。「次の作業に迷惑をかけずに遅らせてよい時間」で、トータルフロートより厳しめ(小さめ)の余裕です。
インターフェアリングフロートトータルフロート−フリーフロートの残り。「自分は遅れてもセーフだが、使うと後続の作業の開始を遅らせてしまう」タイプの余裕のことです。
フォローアップ:工事の進み具合を確認し、工程表を見直し・修正すること。工程表は一度作って終わりではなく、実際の進みに合わせて更新していきます。
特急作業時間(クラッシュタイム):費用をかけて作業を最大限まで短縮したときの日数。「お金や人を増やせば、この作業は最短何日までちぢめられるか」という限界の日数で、工期短縮(突貫工事)の検討に使います。

用語が多くて不安? まずはこの3つでOK

イベント(○)とアクティビティ(→)…図の読み方の土台。
クリティカルパス…いちばん長い道=工期。問題で必ず問われます。
フロート(余裕)…クリティカルパス上は0。

EST・LSTなど残りの用語は、次の解き方の手順を1回やれば自然に身につきます。最初から全部覚えようとしなくて大丈夫です。

ネットワーク工程表の読み取り方

読み取りの基本は次の3つだけです。

① 矢印の向き=作業の流れ(左→右に進む)。
② 丸に入る矢印が全部終わるまで、その丸から出る作業は始められない。
③ 点線(ダミー)は順序だけ。日数は0。

【つまずきポイント】ダミー(点線)はなぜ必要?

用語の中でいちばん分かりにくいのがダミーです。下の例で見てみましょう。

ダミー(点線)はなぜ必要?作業A作業D作業B作業Cダミー(0日)C は A も B も必要/D は A だけでOK。この違いを点線(ダミー)で表します(日数は0)。
作業Cは「A・B両方」、作業Dは「Aだけ」終われば始められる。この“必要な先行作業のちがい”を点線(ダミー)で表す。日数は0。

もし点線がなく、AとBを同じ丸にまとめてしまうと、本来Aだけで始められるDまでBを待つことになり、順序が変わってしまいます。

そこで「AはCにも必要」という順序だけを、日数0の点線(ダミー)でつなぐのです。

ネットワーク工程表の解き方(4ステップ)

過去問はこの4ステップで必ず解けます。下の例で一緒にやってみましょう。

最早(EST)・最遅(LST)とクリティカルパスA 3日C 4日E 2日B 2日D 1日最早0最遅0最早3最遅3最早7最遅7最早9最遅9最早2最遅6
A〜Eの5つの作業の例。赤い横一直線がクリティカルパス(①→②→④→⑤=9日)。青いL字の道(①→③→④)は余裕(フロート)のある道。各丸の上が最早・下が最遅。

STEP1:前進計算で「最早」を出す(足し算)

スタートの①を0日とします。あとは矢印の向きに、「今いる丸の数字 + 作業の日数」をたどって足していくだけです。

=①の 0 + 作業A 3日 = 3
=①の 0 + 作業B 2日 = 2
④はちょっと注意。④には矢印が2本入ります(②から作業C、③から作業D)。
 ・②からの道:②の 3 + 作業C 4日 = 7
 ・③からの道:③の 2 + 作業D 1日 = 3
 → こういうときは大きいほうを採用するので、④=7
⑤(ゴール)=④の 7 + 作業E 2日 = 9 …これが工期=9日

なぜ大きいほう? ④から先の作業は、④に入ってくる作業が全部終わらないと始められないからです。

いちばん遅く着く道に合わせます。

STEP2:後退計算で「最遅」を出す(引き算)

今度はゴールから逆向き。ゴール⑤の最遅を工期と同じ9に置き、矢印を逆にたどって「次の丸の数字 − 作業の日数」で引いていきます。

=⑤の 9 − 作業E 2日 = 7
=④の 7 − 作業C 4日 = 3
=④の 7 − 作業D 1日 = 6
①はちょっと注意。①からは矢印が2本出ます(②へ作業A、③へ作業B)。
 ・②への道:②の 3 − 作業A 3日 = 0
 ・③への道:③の 6 − 作業B 2日 = 4
 → こういうときは小さいほうを採用するので、①=0(スタートの0と一致すれば計算OKの印)

なぜ小さいほう? ①から出るどの作業も遅らせないために、いちばん厳しい(早い)リミットに合わせる必要があるからです。

STEP3:クリティカルパスを見つける

各丸の最早と最遅を見比べてピッタリ同じ(=余裕ゼロ)の丸をたどります。

①(最早0・最遅0)・②(3・3)・④(7・7)・⑤(9・9)がぴったり一致
これをつないだ ①→②→④→⑤クリティカルパス=工期9日
一方 ③は最早2・最遅6でズレている=余裕があるので、クリティカルパスではありません。

STEP4:フロート(余裕)を出す(引き算)

クリティカルパス以外の道には余裕(フロート)があります。下の道(①→③→④)を見てみましょう。

③は最早2・最遅6。その差の4日が、この道に許された余裕です。
トータルフロート = 最遅6 − 最早2 = 4日
つまり作業BやDは、合わせて4日まで遅れても工期9日には響きません。

過去問を解いてみよう(令和7年度・実践)

ここまでの4ステップを、令和7年度(1級管工事施工管理技士 一次検定)で実際に出た問題で使ってみましょう。

【問題】下図のネットワーク工程表について、適当でないもの(誤っているもの)はどれでしょう?

(1)クリティカルパスのルートは、2本で所要日数は20日である。
(2)作業内容Eのトータルフロートは、1日である。
(3)イベント⑥の最早開始時刻、最遅完了時刻は、ともに9日である。
(4)作業Dの作業日数を2日短縮すると、全体工期も2日短縮される。
【令和7年度・B問2】このネットワーク工程表B 4日D 5日G 4日J 3日F 7日E 4日A 7日C 4日H 8日I 4日
令和7年度 一次検定 B問2。矢印が作業(A〜J)、そばの数字が作業日数。点線(ダミー)は所要日数0。まずは自分で挑戦してみましょう。

STEP1・2:まず最早・最遅を出す(土台づくり)

選択肢を判断するには、全イベントの最早(前進計算・足し算)と最遅(後退計算・引き算)が必要です。

分かれ道では「最早は大きいほう/最遅は小さいほう」を採用。計算すると下の表のようになります。

イベント
最早(EST) 0 4 4 9 9 9 16 17 20
最遅(LST) 0 4 5 9 9 9 16 17 20

最早=最遅(余裕ゼロ)のイベントは①②④⑤⑥⑦⑧⑨。③だけ最早4・最遅5でズレています(=1日の余裕がある通過点)。

STEP3:クリティカルパスを見つける(2本ある)

余裕ゼロのイベントをたどると、①→②→④で合流したあと、ゴール手前で道が2つに分かれます

①→②→④→⑤→⑦→⑨ = B4 + D5 + F7 + I4 = 20日
①→②→④→⑥→⑧→⑨ = B4 + D5 + H8 + J3 = 20日
どちらも20日。クリティカルパスは2本、工期は20日です(※→の0日のダミーは省略)。
クリティカルパス(赤)は2本=ともに20日B 4日D 5日G 4日J 3日F 7日E 4日A 7日C 4日H 8日I 4日
クリティカルパス(赤)は2本。①→②→④で合流し、⑤→⑦経由と⑥→⑧経由に分かれてゴール⑨へ。どちらも20日。

STEP4:選択肢を1つずつ確認する

土台ができたので、4つの記述を順にチェックします。

(1)◯ 正しい …上で見たとおり、クリティカルパスは2本・ともに20日
(2)◯ 正しい …作業E(③→⑥)のトータルフロート =(⑥の最遅 9)−(③の最早 4)−(Eの 4日)= 1日
(3)◯ 正しい …イベント⑥は最早 9・最遅 9 でともに9日(余裕ゼロの通過点)。
(4)✕ これが誤り …作業Dを2日縮めても、工期は1日(20→19日)しか縮みません。
📌 ここがカギ(なぜ4が誤り?) クリティカルパスが2本あるのがポイント。Dは2本の共通部分(①→②→④)にあるので効きそうですが、Dを2日縮めると今度は別のルート ①→③→⑥→⑧→⑨(4+4+8+3=19日)が最長に変わり、そこで止まります。だから工期は1日しか縮みません。

答え(適当でないもの)=(4)。クリティカルパス上の作業を縮めても、別のルートが最長に変わると、工期短縮はそこでストップします。

過去問でよく問われるポイント

よく出るのはこの3パターン

工期(全体の所要日数)はいくつか=クリティカルパスの長さ。
クリティカルパスはどれか=最早=最遅をたどる。
ある作業のフロート(余裕)はいくつか=最遅完了−最早終了。

どれも、上の前進計算→後退計算さえやれば機械的に答えが出ます。焦らず、丸の上に「最早」、下に「最遅」をメモしていくのがコツです。

よくある質問(FAQ)

Q. クリティカルパスって結局なに?

A. スタートからゴールまででいちばん日数が長い道のこと。ここが工期を決め、1日でも遅れると全体が遅れます。

Q. 最早と最遅、どっちから計算する?

A. まず前進計算で最早(足し算)、次に後退計算で最遅(引き算)の順です。最早=最遅の丸がクリティカルパスです。

Q. 丸に矢印が複数入るときは?

A. 最早は大きいほう、最遅は小さいほうを採用します。ここを間違えやすいので注意。

Q. ダミー(点線)は計算でどう扱う?

A. 所要日数0日として、順序の条件だけ反映します。足し引きの値は0です。

Q. フロートが0の作業の意味は?

A. 余裕がゼロ=クリティカルパス上の作業。絶対に遅らせてはいけない作業です。

✅ この記事のまとめ

  • ネットワーク工程表は矢印(作業)と丸(結合点)で作業の順番を表す図。
  • 解き方は①前進計算で最早 →②後退計算で最遅 →③クリティカルパス →④フロートの4ステップ。
  • 丸が複数入るとき=最早は大きいほう、最遅は小さいほう
  • クリティカルパス=最長の道=工期。フロート0の作業は遅らせられない。