ネットワーク工程表の問題で多くの人がつまずきやすいのが、トータルフロートとフリーフロートの区別です。どちらも「余裕の日数」なのに、なぜ2つあるのか。どう使い分けるのか。

この記事は工程表をまったく見たことがない状態から読めるように書いています。言葉の意味から始めて、最後は同じ工程表で両方とも計算します。数式は出しません。足し算と引き算だけです。

まず「フロート」が何なのかを押さえる

用語フロート

工事の作業が持っている「余裕の日数」のこと。何日までなら遅れても大丈夫か、を数字で表したものです。

なぜ余裕を数字にしておく必要があるのか?

現場では雨が降り、材料が遅れ、職人が足りなくなります。そのとき「この作業はあと何日粘れるのか」が分かっていないと、どこを優先するか判断できないからです。

フロートには種類があります。代表的なのは次の3つです。

名前 日本語 ざっくり言うと
トータルフロート 全余裕 工期を守る範囲で使える最大の余裕
フリーフロート 自由余裕 次の作業に迷惑をかけずに使える余裕
インターフェアリングフロート 干渉フロート 使うと次の余裕が減るぶん

この記事では上の2つを扱います。

計算に必要な4つの時刻

フロートを出すには、工程表の丸(イベント)に書き込む4つの時刻を知っておく必要があります。名前は長いですが、中身は単純です。

用語最早開始時刻(さいそうかいしじこく)

その作業をいちばん早く始められる日。前の作業が全部終わっていないと始められないので、前の作業から順に足していって求めます。

なぜ「いちばん早く」と限定するのか?

前の作業が複数ある場合、いちばん遅く終わるものを待たないと始められないからです。早い方に合わせて始めることはできません。

用語最遅完了時刻(さいちかんりょうじこく)

その作業が遅くともこの日までに終わっていればよいという日。全体の工期から逆算して、後ろから引いていって求めます。

なぜうしろから逆算するのか?

「完成日」という動かせないゴールが先に決まっているからです。ゴールから逆にたどると、各作業の締め切りが出てきます。

この2つが分かれば、フロートは引き算で出ます。

同じ例で2つとも計算してみる

作業Cの余裕を、数直線で見る最早開始8日・所要5日・次の作業Dは17日から・最遅完了19日のとき8日開始13日最早完了17日次のDが開始19日最遅完了作業C(5日)フリーフロート 4日干渉フロート 2日トータルフロート 6日トータル6日 = フリー4日 + 干渉2日3つはいつもこの関係になります4日までなら影響なし。それ以上は作業Dがずれる。
同じ作業でも、「全体の完成日まで」で測るとトータル6日、「次の作業が始まる日まで」で測るとフリー4日になります。

例例にする場面

・作業Cは8日目から始められる(最早開始時刻=8日)
・作業Cは5日かかる
・作業Cの次の作業Dは、早ければ17日目から始められる
・作業Cは遅くとも19日目までに終わっていればよい(最遅完了時刻=19日)

トータルフロートを出す

コツトータルフロートの計算手順

ステップ1 作業Cがいちばん早く終わる日を出します。
 8日目に始めて5日かかる → 13日目に終了。

ステップ2 遅くていい終わりの日を確認します。
 19日目です。

ステップ3 引きます。
 19 − 13 = 6日 これがトータルフロートです。

意味はこうです。作業Cは6日まで遅れても、工事全体の完成日は1日も動きません。

フリーフロートを出す

コツフリーフロートの計算手順

ステップ1 次の作業Dがいちばん早く始められる日を確認します。
 17日目です。

ステップ2 作業Cがいちばん早く終わる日を確認します。
 先ほど出した13日目です。

ステップ3 引きます。
 17 − 13 = 4日 これがフリーフロートです。

意味はこうです。作業Cは4日までなら遅れても、次の作業Dは予定どおり17日目に始められます。誰にも影響がありません。

2つの違いを、言葉で言い直す

数字だけ見ると「6日と4日」ですが、意味がまったく違います。

トータルフロート フリーフロート
何と比べているか 工事全体の完成日 すぐ次の作業の開始日
今回の値 6日 4日
使ったときの影響 5〜6日目を使うと、次の作業の余裕が減る 1〜4日目なら、誰にも影響なし
現場での扱い 「限界はここまで」 「ここまでなら気楽に使える」

覚える覚え方・語呂合わせ

トータル=「全体(=工期)」を見ている/フリー=「次の人」だけを見ている
名前の通り、トータルは全体の話、フリーは自分の直後だけの話です。
見ている相手が違うから、数字も違う——ここを押さえれば混乱しにくくなります。

2つの大小関係には決まりがある

トータルの中に、フリーと干渉が入っているフリー 4日干渉 2日トータルフロート 6日緑のあいだ=自由に使ってよい誰の予定も動かないオレンジのあいだ=使えるけれど次の作業の余裕が減る
フリーはトータルの“中の一部”です。だからフリーがトータルを超えることはありません。

試験で特に狙われやすいのがここです。

フリーフロート ≦ トータルフロート

フリーフロートがトータルフロートより大きくなることは絶対にありません。等しくなることはあります。

用語なぜフリーがトータルを超えられないのか?

トータルフロートは「持っている余裕の全部」です。フリーフロートはその中の「気楽に使える部分」です。
全体の一部が、全体より大きくなることはありえません。財布に6千円しか入っていないのに、7千円は使えないのと同じです。

試験ではどう出るのか

例出題される4つの形

形1 「フリーフロートはトータルフロートを超えることがある」→ 誤り。超えません。

形2 「トータルフロートが0の作業はクリティカルパス上にある」→ 正しい。

形3 工程表を与えて「作業Eのフリーフロートは何日か」→ 次の作業の最早開始時刻から、自分の最早完了時刻を引きます。

形4 「フリーフロートを使っても後続作業に影響しない」→ 正しい。これが定義そのものです。

よくある質問

トータルフロートが0なら、フリーフロートも0ですか?

はい。フリーフロートはトータルフロート以下なので、トータルが0ならフリーも0にしかなりません。クリティカルパス上の作業はこの状態です。

フリーフロートとトータルフロートが同じ数になることはありますか?

あります。次の作業に余裕がまったくない場合がそれです。この場合、自分の余裕を使ってもよいのは「次が始まる日まで」で、それがそのまま全体の限界にもなっています。このとき干渉フロートは0日です。

どちらを優先して覚えればいいですか?

まずトータルフロートです。出題数が多く、クリティカルパスの判定にも直結します。トータルフロートの意味が分かっていれば、フリーフロートは「その中の気楽に使える部分」として理解できます。

実務ではどちらを見るのですか?

両方見ます。トータルフロートは「この作業を後回しにしてよいか」の判断に、フリーフロートは「後ろに謝らずに済むか」の判断に使います。現場では後者のほうが日常的です。

まとめこの記事のまとめ

・トータルフロート=最遅完了時刻 − 最早完了時刻(工期を守る限界)
・フリーフロート=次の作業の最早開始時刻 − 自分の最早完了時刻(迷惑をかけない範囲)
・フリー ≦ トータル 逆転は絶対にない(試験の定番ひっかけ)
・トータルが0=クリティカルパス上。このときフリーも0

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