第2章 ボイラーの取扱い | 第9回 | 学習カリキュラムの目次を見る

ここからは2つ目の科目「ボイラーの取扱い」です。最初の第9回では、ボイラーに火を入れて、蒸気が出るまでの手順を順番に追います。この場面は事故が起きやすく、試験でも、令和5年10月〜令和8年10月公表の7回分のすべてに出題されました。点火の失敗は爆発や空だきに直結するからです。

手順の1つひとつに「なぜそうするのか」があるので、理由とセットで覚えると選択肢の入れ替えにだまされなくなります。

プレパージとは?

点火する前にファンを回して、炉と煙道の中の空気を入れかえること。

💡 なぜ? 炉の中に前の運転で残った燃料のガスがたまっていると、点火した瞬間に爆発するおそれがあるからです。火を入れる前に中をからっぽにしておくのが、点火の第一歩です。

点火前の点検・準備

ボイラーの点火前に、水面計で水位を確かめ、圧力計の針を点検し、ファンで炉内を換気する手順を表したイメージ図
水位・圧力計・水位検出器・換気の順に確かめてから、火を入れます。

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水位・圧力計・水位検出器・換気の順に確かめてから、火を入れます。

火を入れる前には、水位・計器・換気を確かめます。どれも空だき(水がないまま燃やすこと)や爆発を防ぐための確認です。

このほか、燃料と水の量も確かめておきます。液体燃料なら油タンクの油量、ガス燃料ならガス圧力が適正かを調べましょう。あわせて、給水タンクに十分な水量があるかも点検します(令和3年10月・令和4年4月公表で正しい記述)。

① 水位を確かめ、常用水位にそろえる

最初の確認は水位です。水面計を点検してから水位を見て、低ければ給水、高ければ吹出しで常用水位(ふだんの運転の水位)に合わせましょう。

験水コックは、水位を確かめるための小さなコックです。験水コックがあるボイラーでは、水部にあるコックを開けて、水が噴き出すことを確認します。水が出てくれば、その高さまで確かに水があるという証拠です。

⚠ 注意

「験水コックから水が噴き出さないことを確認する」は誤り(令和7年4月公表)。水部のコックから水が出ることを確かめるのが目的です。

② 水位検出器を動かして試す

次は水位検出器の試験です。水位を上下させて、きちんと働くかを試してみましょう。設定した水位の下限で、給水ポンプが起動する(給水調節弁が開く方向に動く)ことを確かめます。

⚠ 注意

「設定水位の下限で、給水調節弁が閉方向に動作する」(令和5年10月公表)は誤り。「設定水位の上限で給水ポンプが起動する」(令和3年10月・令和7年4月公表)も誤り。水が減ったら(下限)、水を入れる(開く・起動)のが当たり前の動きです。

③ 圧力計の残針を確かめる

圧力がかかっていないのに、圧力計の針が0に戻っていない状態を残針と呼びます。残針があるのは圧力計が狂っているしるしなので、予備の圧力計と取り替えましょう。狂った圧力計のまま運転すると、本当の圧力が分からず、上がりすぎに気づけないからです。

④ ダンパを全開にして、プレパージする

煙道の各ダンパ(ガスの通り道の開き具合を変える板)を全開にし、ファンを運転して炉と煙道を換気します(プレパージ)。

⚠ 注意

「換気は、煙道の各ダンパを半開にしてファンを運転し、徐々に行う」は誤り(令和4年4月公表)。プレパージのときのダンパは全開です。

油だきボイラーを手動で点火するときは、換気が終わったらダンパを点火位置に合わせます。点火位置とは、点火に合わせて決めてあるダンパの開き具合のことです。そのうえで炉内通風圧(炉の中の空気を引く・押す圧力)を調節し、点火に進みます(平成31年4月公表で正しい記述)。

たき始めるときの弁の開け閉め

火を入れるときの各弁の状態は、試験で表の形でよく出題されます。1つずつ理由を考えれば、暗記しなくても決められるはずです。

弁・コック たき始め 理由
主蒸気弁 閉 まだ蒸気が出ていない。冷えた配管へ送らない
胴の空気抜弁 開 中の空気を外へ逃がす
吹出し弁・吹出しコック 閉 開いていると水が抜けて水位が下がる
水面計とボイラー間の連絡管の弁・コック 開 閉じていると水面計に本当の水位が出ない
圧力計のコック 開 閉じていると圧力が計れない

⚠ 注意

「水面計の連絡管の弁・コック=閉」は誤り(令和5年10月・令和7年10月公表)。水面計はボイラーとつながっていて初めて水位を示せるので、開です。

💡 覚え方

「見る物は開け、出す物は閉める」。水面計・圧力計の弁は見るためなので開。主蒸気弁・吹出し弁は蒸気や水を出すものなので、たき始めは閉。空気抜弁だけは「空気を出す」ので開と覚えましょう。

🤔 なぜボイラーの中の空気を抜く必要があるのですか。

空気は熱を伝えにくい気体です。蒸気に空気が混じったまま送り出すと、蒸気を使う側で熱がうまく伝わらない原因になります。空気は冷えても水に戻らないので、一度入ると抜けにくいのもやっかいな点です。そこで、たき始めのうちに空気を追い出して、ボイラーの中を蒸気だけにするのです。

空気抜弁は、白い蒸気が出てから閉じる

空気抜弁はたき始めから開けておき、中の空気を追い出すのが役目です。蒸気が発生し始めて白い蒸気が出てくるのを確認してから閉じます。白い蒸気が出る=空気が追い出された合図です。

⚠ 注意

「空気抜き弁は、蒸気が発生し始めるまで閉じておく」(令和6年10月公表)は誤り。「圧力が上がり始めで開いて空気を放出」(令和7年4月公表)も誤り。最初から開けておくのが正解です。

点火:油だきとガスだき

点火の基本は「空気が先、燃料が後」です。燃料を先に入れると、点火するまでのあいだに燃料がたまって、一気に燃え広がるおそれがあるからです。

油だきボイラーの点火の流れ(一般的な例)

①プレパージで炉と煙道を換気し、ダンパを点火位置に合わせて炉内通風圧を調節する

②点火用の火種(パイロットバーナなど)に火をつける

③燃焼用の空気を送り、続いて燃料弁を開いて主バーナに着火させる

④点火制限時間のうちに着火したかを確かめる。着火しなければただちに燃料弁を閉じて換気し直す

⑤炎が安定したら、燃焼量を少しずつ上げていく

点火制限時間とは?

燃料弁を開いてから、着火するまでに待ってよい時間。燃料の種類や燃焼室の熱負荷の大小に応じて、2〜5秒間とされています。

この時間内に火がつかなければ、ただちに燃料弁を閉じて換気しなければなりません。平成31年4月・令和2年10月・令和4年10月公表で出た決まりです。2〜5秒という数字は、平成31年4月公表で出ました。

燃焼室熱負荷とは、燃焼室の1m³あたりで、一定の時間に出る熱の量です(第15回)。つまり点火制限時間は、燃料や炉の条件によって2〜5秒の幅で決まります。

点火の前に、油を霧にする準備をしておく

油は、細かい霧にしないとうまく燃えません(第16回のバーナ)。そこで点火の前に、油を霧にする仕掛けを先に動かしておくのです。

バーナ 点火の前にしておくこと
回転式バーナ(回して油を飛ばす) バーナモータを起動しておく
蒸気噴霧式バーナ(蒸気の勢いで霧にする) 噴霧用の蒸気を噴射させておく

この2つは、平成31年4月公表で正しい記述として出ました。

バーナが2基以上あるときは、1基ずつ

バーナが2基以上あるときは、初めに1基だけ点火します。燃焼が安定してから、ほかのバーナにも点火しましょう(平成31年4月公表で正しい記述)。

⚠ 注意

「初めに1基のバーナに点火し、その後直ちに他のバーナにも点火して燃焼を速やかに安定させる」は誤り(令和4年10月公表)。安定するのを待ってから次のバーナです。

火がついた後に燃焼が不安定なとき

着火した後でも、燃焼が不安定なときは直ちに燃料の供給を止めます(令和2年10月・令和4年10月公表で正しい記述)。燃料を先に止める点は、着火しなかったとき(④)と同じです。

⚠ 注意

平成31年4月公表では、次の記述が誤りでした。「着火後、燃焼状態が不安定なときは、直ちにダンパを全開し、炉内を換気してから燃料弁を閉じる」。まず燃料を止めるのが先です。

どの手順も「燃料がたまった状態で火をつけない」ためにあると考えると、順番の意味が分かります。

逆火(ぎゃっか):炎が外へ吹き出す事故

逆火とは?

点火のときなどに、炉の中で一気に燃え広がった炎が、たき口などから外へ吹き出す現象。

💡 なぜ? 炉の中に燃料がたまった状態で火がつくと、急に大量のガスが燃えて炉内の圧力が上がるからです。

油だきボイラーの点火で逆火が起きる原因(試験に出たもの)

①煙道ダンパの開き方が足りない(ガスの逃げ場がない)

②点火のときに着火が遅れた(そのあいだに燃料がたまる)

③空気より先に燃料を供給した

④複数のバーナがあるとき、燃焼中のバーナの炎で次のバーナに点火した

⑤点火用バーナの燃料の圧力が低下している

⑤の点火用バーナは、主バーナに火をつけるための小さな種火用のバーナです。この燃料の圧力が下がっていることも、逆火の原因とされました(令和2年4月公表)。

⚠ 注意

逆火の原因として当てはまらないとされたものは次の2つです。「噴霧蒸気(空気)の圧力が強すぎるとき」(令和7年10月・令和8年10月公表)。「煙道にすすの堆積や未燃ガスが多いとき」(令和2年4月・令和8年4月公表)。後者は、煙道の中で燃え出す二次燃焼の原因として扱われます(第10回)。

ガスだきボイラーを手動で点火するとき

ガスだきの手動点火で守ること

①ガス圧力のかかった継手・コック・弁は、ガス漏れ検出器か検出液で漏れを点検する

②ガス圧力が適正で安定していることを確かめる

③点火用の火種は、適正な火力のものを使う

④隣のバーナや炉壁の熱で点火してはならない

⑤バーナが上下2段にあるときは、下のバーナから点火する

⚠ 注意

「上下2基あるときは上方のバーナから点火する」は誤り(令和2年10月・令和6年4月公表)。炎や熱いガスは上へ昇るので、下のバーナから順に点火するのが基本です。

圧力を上げていくときの注意

蒸気圧力が上がるまでの取扱い

①点火後は、本体に大きな温度差を生じさせないよう、時間をかけて徐々に昇圧する

②たき始めは水が膨張して水位が上がる。2個の水面計の水位が同じか確かめながら、水位の動きを見る

③圧力計の針の動きを見ながら、上がり方に応じて燃焼を加減する。点検のため、圧力計の背面を指先で軽くたたくこともある

④圧力計がおかしいと思ったら、下部のコックを閉めれば加圧中でも予備と交換できる

⑤整備直後は、マンホールなどのふたを昇圧中・昇圧後に増し締めする

⚠ 注意

「たき始めは本体の膨張で水位が下がるので給水する」は誤り(令和8年10月公表)。温まった水は体積が増えるので、水位は上がります。「整備直後は冷えているので、通常より燃焼量を増してたき始める」(令和7年4月公表)も誤りです。冷えているときこそゆっくり温めるのが正解です。

⚠ 注意

令和3年10月公表では、次の記述が誤りでした。「圧力上昇中の圧力計の背面を点検のため指先で軽くたたくことは、圧力計を損傷するので行ってはならない」。点検のために軽くたたくこと自体は、してよいという扱いです。

燃焼を保ち、調節する

蒸気が出始めたら、負荷(蒸気の使用量)の変化に合わせて燃焼量を増減し、蒸気圧力や温水温度を一定に保ちます。燃焼中は突然消える可能性もあるので、監視を怠りません。

燃焼の維持・調節で守ること

①炎の流れの向きを見て、ボイラー本体やれんが壁に炎が触れないようにする

②燃焼量を減らすときは燃料を先に減らし、そのあと空気を減らす(増やすときは空気が先)

③空気の量が多すぎるか少なすぎるかは、燃焼ガスのCO2・CO・O2の濃度を測って判断する

④加圧燃焼では、断熱材やケーシングの損傷、燃焼ガスの漏れを防ぐ

💡 覚え方

「空気は先に増やして、後に減らす」。燃料に対して空気が足りない時間を一瞬もつくらないための順番です。点火の「空気が先、燃料が後」と同じ考え方なので、セットで覚えましょう。

🤔 CO2・CO・O2で、なぜ空気の過不足が分かるのですか。

空気が足りないと、燃料が燃え切らずにCO(一酸化炭素)が増えるのです。空気が多すぎると、使われなかった酸素が残ってO2が増え、そのぶんCO2の割合は下がります。ガスの成分を測れば、空気がちょうどよいかを数字で確かめられるわけです(第15回の空気比)。

炎の色で空気の量を見分ける

空気の量 炎の様子
適量 オレンジ色で、炉の中の見通しがきく
少なすぎる 炎が長く、色が暗く、すすが出やすい
多すぎる 炎が短く、輝白色になる

⚠ 注意

炎の問題は入れ替えが定番です。「空気が適量なら短い輝白色」(令和7年4月公表)は誤り。「適量なら輝白色で、炉内の見通しがきく」(令和7年10月公表)も誤りです。「空気が少ないと炎は短くなる」(令和8年10月公表)も誤りです。空気が少ないと、燃え切るまでに時間がかかるので炎は長くなります。

💡 覚え方

空気が足りない炎は「ろうそくのようにゆらゆら長い」、多すぎる炎は「ガスバーナーのように短く白い」。ちょうどよい炎は、そのあいだのオレンジ色です。

練習問題:たき始めの判断

答えと考え方

①「水面計で水位が高いと分かったので、給水して常用水位にした」 → 誤り(高いときは吹出し)

②「たき始めに、圧力計のコックを開けておく」 → 正しい

③「点火の前に、煙道ダンパを全開にしてファンで換気した」 → 正しい(プレパージ)

④「燃焼量を増やすとき、燃料を先に増やしてから空気を増やした」 → 誤り(増やすときは空気が先)

⑤「炉壁が熱いので、その熱でガスバーナに点火した」 → 誤り(炉壁や隣のバーナの熱で点火しない)

試験ではこう出る

よくある記述 判断
水位が高いときは、吹出しを行って常用水位に調整する 正しい
圧力がないのに残針があれば、予備の圧力計と取り替える 正しい
たき始めは、水面計の連絡管の弁を閉じておく 誤り。開
空気抜き弁は、蒸気が発生し始めるまで閉じておく 誤り。開けておき、白い蒸気を確認して閉じる
ガスバーナが上下2基なら、上方から点火する 誤り。下方から
点火前に、液体燃料なら油タンクの油量、ガス燃料ならガス圧力を調べる 正しい
炉及び煙道内の換気は、各ダンパを半開にして徐々に行う 誤り。全開
換気の後、ダンパを点火位置に合わせ、炉内通風圧を調節する 正しい
点火前に、回転式はバーナモータを起動し、蒸気噴霧式は噴霧用蒸気を噴射させる 正しい
バーナが2基以上なら、1基に点火した後、直ちに他のバーナにも点火する 誤り。燃焼が安定してから
燃料弁を開いてから2〜5秒間の点火制限時間内に着火させる 正しい
着火後、燃焼が不安定なときは、換気してから燃料弁を閉じる 誤り。直ちに燃料の供給を止める
点火用バーナの燃料の圧力が低下していると、逆火の原因になる 正しい
圧力上昇中に圧力計の背面を軽くたたくのは、損傷するので行ってはならない 誤り。点検のためしてよい
空気より先に燃料を供給すると、逆火の原因になる 正しい
たき始めは水位が下がるので、給水して常用水位に戻す 誤り。水位は上がる
燃焼量を減らすときは、燃料を先に減らしてから空気を減らす 正しい
空気が適量の場合、炎は短い輝白色となる 誤り。オレンジ色

出典:安全衛生技術試験協会 二級ボイラー技士 公表試験問題(平成31年4月〜令和8年10月公表)。これをもとに、ゼロパスが要点を整理しました。

よくある質問

Q. プレパージは、どのくらいの時間行うのですか。

A. 炉と煙道の中の空気が十分に入れかわるまで行います。自動制御のボイラーでは、決められた時間だけファンを回してから点火する手順が組み込まれています(第8回のシーケンス制御)。

Q. 着火が遅れたら、どうすればよいですか。

A. すぐに燃料を止め、ファンで炉内をもう一度換気してから点火し直します。遅れたまま燃料を送り続けると、炉内にたまった燃料に一気に火がつき、逆火の原因になるからです。

Q. なぜ燃焼中に、炎がれんが壁に触れてはいけないのですか。

A. 炎が直接当たると、れんがや本体の一部だけが高温になって傷むからです。だから炎の向きは、燃焼中ずっと見ておくことが求められています。

まとめ

・点火前=水位(低ければ給水・高ければ吹出し)→水位検出器→残針→ダンパ全開でプレパージ

・たき始め=主蒸気弁・吹出し弁は閉、空気抜弁・水面計・圧力計は開(見る物は開け、出す物は閉める)

・点火前は油量・ガス圧力・給水タンクの水量も確認。換気はダンパ全開、その後点火位置で通風圧を調節

・点火は空気が先・燃料が後。ガスの上下2段は下から。2基以上は1基ずつ、安定してから次へ

・点火制限時間(2〜5秒)内に着火しなければ燃料弁を閉じて換気。着火後に不安定なら直ちに燃料を止める

・点火前に、回転式はバーナモータ起動、蒸気噴霧式は噴霧用蒸気を噴射。圧力計の背面は点検のため軽くたたいてよい

・逆火の原因=ダンパ不足・着火遅れ・燃料が先・隣のバーナの炎で点火・点火用バーナの燃料圧力の低下(すすや未燃ガスは二次燃焼の原因)

・たき始めは水位が上がる・ゆっくり昇圧。炎は適量でオレンジ、空気不足で長い

・燃焼量は増やすとき空気が先、減らすとき燃料が先。空気の過不足はCO2・CO・O2で判断