第1章 ボイラーの構造 | 第1回 | 学習カリキュラムの目次を見る

ボイラーは水に熱を加えて蒸気をつくる機械です。だから最初に、温度・圧力・熱・蒸気の言葉を正しく押さえておく必要があります。このテーマは、公表試験問題では7回すべてで「構造」の問1に出ました。この記事では、水がお湯になり、沸騰して蒸気になるまでを順番に追いながら、試験に出る言葉を1つずつ説明します。

飽和蒸気(ほうわじょうき)とは?

水と接していて、その圧力で沸騰している状態の蒸気。鍋で沸騰している湯の、すぐ上にある湯気のような状態です。

💡 なぜ? ボイラーの中では、水と蒸気が同じ容器の中で接したままです。そのためボイラーでできる蒸気は、基本的に飽和蒸気になります。

▶ この回は動画でも勉強できます(約49分)

動画と記事は同じ内容です。読むのが苦手な方は動画で、復習は記事で、どうぞ。

温度:℃とK(ケルビン)

ふだん使う温度の目盛りはセルシウス温度(℃)です。標準大気圧のもとで水が凍る温度を0℃、沸騰する温度を100℃と決め、その間を100等分しています。

もう1つの目盛りが絶対温度(K:ケルビン)です。これ以上冷えない最低の温度を0Kとした目盛りで、1Kの幅は1℃と同じです。

℃をKに直す式

絶対温度T[K]=セルシウス温度t[℃]+273

例:20℃ → 20+273=293K

例:0℃ → 0+273=273K

⚠ 注意

試験では「t=T+273」のように、足す向きを逆にした式が誤りとして出ています。Kのほうが273大きい(0℃でも273K)と覚えておけば、逆の式にだまされません。

圧力:Pa(パスカル)とゲージ圧力

圧力とは?

面を押す力を、面積1㎡あたりで表したもの。単位はPa(パスカル)で、1Pa=1㎡あたり1N(ニュートン)の力です。

💡 なぜ? ボイラーは密閉した容器なので、中の蒸気が壁を内側から押す力がとても大きくなります。その強さを表すのが圧力で、ボイラーの安全はこの数字で管理されているのです。

1Paはとても小さいので、ボイラーではMPa(メガパスカル)を使います。

試験に出る圧力の換算

1MPa=1,000,000Pa(10の6乗Pa)

1MPa=1N/mm²(1平方ミリメートルあたり1Nの力)

標準大気圧=水銀柱760mmが底を押す圧力=約1013hPa=約0.1MPa

ここで大事なのが、圧力計の目盛りは大気圧を0として表示しているという点です。圧力計が示す値をゲージ圧力、ゲージ圧力に大気圧を足したものを絶対圧力と呼びます。

ゲージ圧力と絶対圧力

絶対圧力=ゲージ圧力+大気圧

例:圧力計が0.5MPaなら、絶対圧力は0.5+0.1=約0.6MPa

蒸気表の圧力は「絶対圧力」

圧力ごとに、飽和温度や比エンタルピなどの蒸気の性質を一覧にした表が蒸気表です。この蒸気表の圧力は、絶対圧力で書かれています。

圧力計の読みはゲージ圧力でした。蒸気表を使うときは、圧力計の読みに大気圧の約0.1MPaを足してから表を見ることになります。

⚠ 注意

令和2年4月公表の問題では、「蒸気表中の圧力は絶対圧力で示される」が正しい記述として出ました。「ゲージ圧力で示される」と入れ替えた形に注意しましょう。

💡 覚え方

「ゲージは大気を0とする目盛り、絶対は真空を0とする目盛り」。温度で「K=℃+273」としたのと同じで、0の置き場所が違うだけです。

熱の量:顕熱と潜熱

水を加熱すると、温度が上がる段階と、沸騰して温度が一定のまま蒸気に変わる段階があることを表したイメージ図
温度を上げるのに使う熱が顕熱、温度を変えずに水を蒸気に変えるのに使う熱が潜熱です。
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温度を上げるのに使う熱が顕熱、温度を変えずに水を蒸気に変えるのに使う熱が潜熱です。

水に熱を加えると、最初は温度が上がっていくはずです。この、温度を上げるのに使われる熱を顕熱(けんねつ)といいます。

ところが沸騰が始まると、熱を加え続けても温度は上がりません。水が全部蒸気になるまで、温度は一定のままです。このとき加えた熱は、水を蒸気に変えることだけに使われています。

この状態を変えるのに使われる熱が潜熱(せんねつ)です。水が蒸気になるときの潜熱は、特に蒸発熱と呼ばれます。

💡 覚え方

顕熱は「顕(あらわ)れる熱」=温度計に表れる熱。潜熱は「潜(ひそ)む熱」=温度計に表れない熱。漢字の意味どおりに覚えると、入れ替えた選択肢にだまされません。

水の比熱:4.187kJ/(kg・K)

1kgの物の温度を1K(1℃)上げるのに必要な熱の量を比熱といいます。水の比熱は4.187kJ/(kg・K)で、試験にもこの数字のまま出題されました。

比熱を使った計算の例

水10kgを20℃から80℃へ温める(温度差60K)

必要な熱=10kg × 4.187 × 60=約2,512kJ

比エンタルピ:蒸気が持っている熱の量

比エンタルピとは?

水や蒸気1kgが持っている熱の量。単位はkJ/kgです。

💡 なぜ? ボイラーがどれだけの熱を蒸気に渡したかを比べるときに、1kgあたりの熱の量でそろえると計算しやすいからです。

沸騰している水(飽和水)の比エンタルピは、そこまで温めるのに使った顕熱です。そして飽和蒸気の比エンタルピは、飽和水の顕熱に、蒸発熱を加えた値になります。

比エンタルピの組み立て

飽和水の比エンタルピ=顕熱

飽和蒸気の比エンタルピ=飽和水の顕熱+蒸発熱

この組み立ては、令和7年4月公表の問題で空欄に「顕熱」「蒸発熱」を入れる形で出題されました。「潜熱」と「顕熱」を入れ替えた選択肢が並ぶので、順番を理由とセットで覚えておきましょう。

飽和・湿り・乾き・過熱:蒸気の4つの状態

呼び方どんな状態か
飽和水その圧力で沸騰する温度まで温まった水
湿り飽和蒸気蒸気の中に水滴が混じっている状態
乾き飽和蒸気水滴がなく、全部が蒸気になった状態。乾き度=1
過熱蒸気乾き飽和蒸気をさらに熱して、飽和温度より高くした蒸気

乾き度とは?

湿り蒸気1kgのうち、蒸気になっている部分の割合。全部が蒸気なら1、全部が水なら0です。

過熱蒸気の温度と、同じ圧力の飽和蒸気の温度との差を過熱度といいます。例えば飽和温度180℃の圧力で、蒸気を220℃まで熱したなら、過熱度は40℃(40K)です。温度の「差」は、℃で数えてもKで数えても同じ数字になる点も覚えておきましょう。1Kと1℃の幅が同じだからです。

圧力を上げると、蒸気の性質はどう変わるか

ボイラーの中の圧力が高くなると、水が沸騰する温度(飽和温度)も高くなります。圧力鍋で、100℃より高い温度で煮炊きできるのと同じ理屈です。このとき、ほかの値も次のように変わります。

値圧力が高くなると理由のイメージ
飽和温度高くなる押さえつけられているので、沸騰しにくくなる
飽和水の比エンタルピ大きくなる沸騰する温度が高いぶん、そこまでの顕熱が多い
飽和蒸気の比体積(1kgの体積)小さくなる圧力で押し縮められる
蒸発熱小さくなり、臨界圧力でゼロ水と蒸気の区別がだんだんなくなる

臨界圧力とは、それ以上の圧力では水と蒸気の境目がなくなる圧力です。そこでは蒸発という変化そのものが起きないので、蒸発熱はゼロになります。

⚠ 注意

試験でよく入れ替えられるのは「飽和水の比エンタルピ」と「蒸発熱」です。比エンタルピは大きくなる、蒸発熱は小さくなると、向きが逆である点に注意してください。「蒸発熱は圧力が高いほど大きくなり、臨界圧力で最大」は誤りとして出ています。

💡 覚え方

「高い圧力ほど、沸かすまでが大変(顕熱は増える)で、沸いたあとは楽(蒸発熱は減る)」。2つは逆向きに動くとセットで覚えておくと、向きを取り違えにくくなるでしょう。

熱の伝わり方:伝導・伝達・放射・貫流

ボイラーでは、燃焼ガスの熱が、鉄の壁を通って水に伝わる仕組みです。熱の伝わり方は、次の3つの基本に分けられるのです。

呼び方どこで起きるか身近な例
熱伝導1つの物体の内部で、温度の高い所から低い所へ順に伝わるフライパンの持ち手まで熱くなる
熱伝達流体(気体・液体)と固体の表面のあいだで伝わる熱いお茶が湯のみの内側を温める
放射伝熱空間を隔てて、離れた物体へ伝わるたき火に当たると顔が熱い

そして、高温の流体から、固体の壁を通って、低温の流体へ熱が移る現象を熱貫流(熱通過)といいます。ボイラーなら燃焼ガス→鉄の壁→水の流れがまさにこれです。

熱貫流は、伝達と伝導の組み合わせ

①燃焼ガスから壁の表面へ=熱伝達

②壁の中を外側から内側へ=熱伝導

③壁の表面から水へ=熱伝達

①〜③をまとめた全体=熱貫流

熱貫流の伝わりやすさを表す数字が熱貫流率です。熱貫流率は、両側の流体と壁のあいだの熱伝達率と、壁の熱伝導率と厚さで決まります。

⚠ 注意

「物体の内部で熱が移る現象=熱伝達」は誤りです。物体の内部なら熱伝導。伝導は「中」、伝達は「表面」と区別してください。

仕事率とkWh:1kWh=3.6MJ

1秒あたりの仕事量を仕事率といい、単位はW(ワット)です。1W=1J/s(1秒に1J)になります。

1kWh=3.6MJになる理由

1kW=1秒に1,000J

1時間は3,600秒なので、1kWh=1,000J × 3,600=3,600,000J=3.6MJ

3.6は1時間=3,600秒から来ている数字です。理由が分かっていれば、丸暗記しなくても組み立てられます。

練習問題:換算と計算を3問

ここまでの式を、数字を変えて確かめてみましょう。どれも足し算・掛け算1〜2回で解けます。

答えと考え方

問1 180℃は何K? → 180+273=453K(Kは℃より273大きい)

問2 圧力計が0.8MPaを示している。絶対圧力は約何MPa? → 0.8+0.1=約0.9MPa(大気圧ぶんを足す)

問3 水20kgを10℃から60℃へ温める熱は? → 20 × 4.187 × 50=約4,187kJ(質量×比熱×温度差)

問3の「質量×比熱×温度差」は、燃料の回やボイラー効率の計算でもそのまま使う形です。温度差は「上がった分」なので、60℃ではなく60−10=50を使う点に気をつけてください。

試験ではこう出る

よくある記述判断
水の温度は、沸騰を開始してから全部が蒸気になるまで一定である正しい
過熱蒸気の温度と、同じ圧力の飽和蒸気の温度との差を過熱度という正しい
飽和水の比エンタルピは、圧力が高くなるほど小さくなる誤り。大きくなる
飽和蒸気の比体積は、圧力が高くなるほど小さくなる正しい
蒸発熱は、圧力が高くなるほど大きくなり、臨界圧力で最大になる誤り。小さくなり、臨界圧力でゼロ
乾き飽和蒸気は、乾き度が1の飽和蒸気である正しい
物体の内部で、高温部から低温部へ熱が移る現象を熱伝達という誤り。熱伝導
熱貫流は、熱伝達と熱伝導が総合されたものである正しい
t[℃]とT[K]には、t=T+273の関係がある誤り。T=t+273
ゲージ圧力に大気圧を加えたものを絶対圧力という正しい
蒸気表中の圧力は、絶対圧力で示される正しい
水の比熱は4.187kJ/(kg・K)である正しい

出典:安全衛生技術試験協会 二級ボイラー技士 公表試験問題(令和2年4月、令和5年10月〜令和8年10月公表)。これをもとに、ゼロパスが要点を整理しました。

よくある質問

Q. 比エンタルピと比熱は、何が違うのですか。

A. 比熱は「1kgを1℃上げるのに必要な熱」、比エンタルピは「1kgが今持っている熱の量」です。比熱は温まりやすさの性質、比エンタルピは持っている量と考えると区別できます。

Q. なぜボイラーでは、わざわざ過熱蒸気をつくるのですか。

A. 飽和蒸気は、少し冷えるだけですぐ水滴に戻ってしまうからです。過熱蒸気にしておくと、配管を通る間に多少冷えても水滴が出にくく、タービンなどを傷めにくくなります。

Q. 沸騰しているあいだ、なぜ温度は上がらないのですか。

A. 加えた熱が、水の粒どうしを引き離して蒸気に変える仕事に使われるからです。温度を上げることには使われないので、水が残っているあいだは温度が一定になります。全部が蒸気になってから熱を加えると、今度は蒸気の温度が上がり始めます(これが過熱蒸気です)。

Q. 天気予報のhPaと、ボイラーのMPaは同じ圧力ですか。

A. 同じ「圧力」の単位で、桁が違うだけです。天気予報の1013hPaは標準大気圧で、MPaに直すと約0.1MPaになります。ボイラーの圧力計が0.5MPaなら、大気圧のおよそ5倍の圧力が、大気圧に上乗せされている状態です。

Q. 試験で計算問題は出ますか。

A. このテーマでは、計算より言葉の正誤を問う問題が中心です。℃とK、ゲージ圧と絶対圧、1kWh=3.6MJの換算を、理由とセットで押さえておけば対応できます。

まとめ

・K=℃+273/絶対圧力=ゲージ圧力+大気圧(大気圧は約0.1MPa)

・蒸気表の圧力は絶対圧力(圧力計の読みに約0.1MPaを足して使う)

・顕熱=温度を上げる熱、潜熱(蒸発熱)=状態を変える熱。沸騰中の温度は一定

・飽和蒸気の比エンタルピ=飽和水の顕熱+蒸発熱

・圧力が上がると飽和水の比エンタルピは大きく、蒸発熱は小さく(臨界でゼロ)、比体積は小さく

・伝導=物体の中、伝達=流体と表面、貫流=伝達+伝導+伝達

・水の比熱=4.187kJ/(kg・K)/1kWh=3.6MJ(1時間=3,600秒だから)

・熱の量の計算は質量×比熱×温度差。温度差は「上がった分」を使う