音の大きさを表すdB(デシベル)は、普通の足し算ができない数字です。60dBの音が2つ鳴っても120dBにはならず、約63dBにしかなりません。管工事の試験では、この「2つ合わせると約3dB増える」と「距離が2倍で約6dB減る」の2つが繰り返し出題されています。この記事では、なぜそうなるのかを中学生の算数で説明し、練習問題で計算できるところまで進めましょう。

音圧レベル(dB)とは?

音の強さを、人が聞こえるいちばん小さい音を基準(0dB)にして、何倍かを目盛りで表した値。10dB上がるごとに、音のエネルギーは10倍になります。

💡 なぜ? 人の耳は、小さな音から大きな音まで、とても幅広い強さを聞き分けられるのが特徴です。そのまま倍率で書くと桁が大きくなりすぎるので、掛け算を足し算に直せる目盛りを使っているのです。

dBは「掛け算の目盛り」になっている

同じ大きさの音を出す機械が2台並び、音の波が重なっている様子を表したイメージ図
機械が2台に増えても、音の大きさは2倍の数字にはなりません。

dBの目盛りは、10dBごとに音のエネルギーが10倍になるように作られています。40dBの音は30dBの10倍、50dBの音は30dBの100倍のエネルギーです。

dBの差 エネルギーの倍率 覚え方
+3dB 約2倍 2台にすると+3dB
+6dB 約4倍 2倍をもう1回=+3+3
+10dB 10倍 目盛りの決まり
+20dB 100倍 10倍をもう1回=+10+10

ここで大事なのは、エネルギーの「掛け算」がdBでは「足し算」になる点です。2倍が+3dBなら、2倍の2倍(4倍)は+3+3=+6dBと計算できます。

🤔 なぜ2倍が「+3dB」なのですか。

dBは「倍率を10の何乗かで表して、10を掛けた数」です。2は10の約0.3乗(10を0.3乗すると約2)なので、0.3×10=約3dBになります。試験でこの計算をする必要はありません。「2倍=+3dB」という結果だけ覚えておけば十分です。

💡 覚え方

「2倍で3、10倍で10」。エネルギーが2倍なら+3dB、10倍なら+10dB。dBは倍率を足し算に変える物差しだと考えると、このあとの計算がすべてつながります。

計算1:同じ大きさの音を2つ合わせる

同じ大きさの音が2つ鳴ると、音のエネルギーは2倍です。エネルギー2倍は+3dBなので、答えは元の数字+3dBです。

50dB+50dBの計算

①50dBの音が1つ

②同じ50dBの音をもう1つ足す → エネルギーは2倍

③2倍は+3dB

④答え=50+3=約53dB(100dBではない)

この「50dBを2つ合わせると約53dB」は、令和6年度の1級管工事でそのままの数字で出題されています。「100dBになる」は誤りだと、すぐ判断できるようにしておきましょう。

台数が増えたときの早見表

同じ大きさの音が何台ぶん重なったかで、増える量が決まります。倍率をdBに直すだけなので、表で覚えておくと便利です。

同じ音の数 エネルギー 増えるdB
2つ 2倍 約+3dB
3つ 3倍 約+5dB(正確には4.8)
4つ 4倍 約+6dB
10個 10倍 +10dB

⚠ 注意

台数を2倍にしても、うるささの感じ方は2倍にはなりません。人の耳は、おおむね10dB上がると「2倍うるさくなった」と感じるといわれます。エネルギーの倍率と、耳で感じる大きさは別の話なので混ぜないようにしてください。

計算2:大きさの違う音を合わせる

70dBと64dBのように、大きさが違う音を合わせることもあります。このときは、大きいほうの音に、差に応じた分を足すだけです。

2つの音の差 大きいほうに足す量
0dB(同じ) +3dB
1dB +2.5dB
2dB +2.1dB
3dB +1.8dB
4dB +1.5dB
6dB +1dB
10dB +0.4dB(ほぼ増えない)

70dB+64dBの計算

①差を出す=70−64=6dB

②表から、差6dBなら+1dB

③答え=大きいほうの70+1=約71dB

差が10dB以上あると、足してもほとんど変わりません。小さいほうの音は、エネルギーで比べると10分の1以下しかないからです。

3つ以上の音は、2つずつ順番に合わせる

音が3つ以上あるときも、2つずつ合わせていけば同じ表で計算できます。例として70dB・70dB・64dBの3台を考えてみましょう。

70dB・70dB・64dBの計算

①まず同じ大きさの2つ=70+70 → 約73dB

②次に73dBと64dB → 差は9dB

③差9dBなら足す量は約0.5dB

④答え=73+0.5=約73.5dB

試験では2つの合成までがほとんどです。まずは2つの計算を確実にしてから、3つ以上に進んでください。

🔧 現場の使いどころ

工場の騒がしい機械室で、小さなポンプを1台止めても、うるささはほとんど変わらないことがあります。いちばん大きい機械の音が支配しているためで、騒音対策は「いちばん大きい音」から手をつけるのが基本です。

計算3:音源から離れると、どれだけ小さくなるか

音は、音源から離れるほど広い範囲に散らばって弱くなります。どれだけ弱くなるかは、音源の形によって違うのです。

点音源とは?

点とみなせるほど小さな音源。音は球の形に広がる。機械1台を遠くから聞く場合などがこれにあたるでしょう。

点音源の音は、球の表面に散らばっていきます。半径が2倍なら球の表面積は4倍なので、1か所あたりのエネルギーは4分の1です。

点音源で距離が2倍になったとき

①距離2倍 → 表面積は2×2=4倍

②エネルギーは4分の1

③4倍は+6dBなので、4分の1は−6dB

④答え=距離が2倍になるごとに約6dB下がる

これに対して、交通量の多い道路のように音源が線のように長いものは線音源といいます。線音源の音は円筒の形に広がるので、距離が2倍でも約3dBしか下がりません。

点音源 線音源
例 機械1台・スピーカー1つ 交通量の多い道路・長い配管
広がる形 球 円筒
距離2倍で広がる面積 4倍(2×2) 2倍
距離2倍で下がる量 約6dB 約3dB

円筒の側面の広さは半径に比例します。だから距離2倍で面積も2倍だけになり、エネルギーは2分の1、つまり−3dBで済むわけです。

💡 覚え方

点は6、線は3。球に広がる点音源は弱まり方が大きい。筒に広がる線音源は弱まり方が小さい——広がる形を思い浮かべると、数字を取り違えません。

練習問題で計算してみよう

ここまでの3つの計算を、数字を変えて解いてみましょう。どれも「倍率をdBに直して足し引きする」という同じ型です。

問1:同じ60dBの送風機が4台

答えの出し方

①同じ音が4つ → エネルギーは4倍

②4倍は+6dB(2倍×2倍=+3+3)

③答え=60+6=約66dB

問2:2mで80dBの機械を、8m離れて聞く(点音源)

答えの出し方

①2m→8mは4倍の距離=2倍を2回(2→4→8)

②2倍ごとに−6dBなので、−6−6=−12dB

③答え=80−12=約68dB

問3:72dBのポンプと69dBのポンプを同時に動かす

答えの出し方

①差=72−69=3dB

②表から、差3dBなら+1.8dB

③答え=72+1.8=約74dB

問4:10mで70dBの道路(線音源)を、40m離れて聞く

答えの出し方

①10m→40mは4倍の距離=2倍を2回

②線音源は2倍ごとに−3dBなので、−3−3=−6dB

③答え=70−6=約64dB(点音源なら−12dBで約58dB)

同じ距離でも、点音源か線音源かで答えが6dBも変わります。問題文の「点音源」「球面状に広がる」という言葉を、必ず確認してから計算しましょう。

計算以外で出る「音」の知識

音の問題では、計算と一緒に次のような知識の選択肢が並びます。どれも理由とセットで押さえておくと迷いません。

人の耳は、高めの音に敏感

人が聞こえるのはおおむね20〜20,000Hz(Hz=1秒間に振動する回数)の音です。同じ音圧レベルでも、3,000〜4,000Hz付近の音がいちばん大きく聞こえます。

そのため音の大きさ(ラウドネスレベル)は、同じ大きさに聞こえる1,000Hzの純音の音圧レベルで表す決まりです。

NC曲線:高い音ほど許される値が小さい

NC曲線とは?

室内でがまんできる騒音の大きさを、周波数ごとに表した曲線(Noise Criteria=騒音の評価基準)。周波数が高いほど、許される値は小さく(厳しく)なります。

💡 なぜ? 人の耳は高めの音のほうがうるさく感じやすいからです。「周波数が高いほど許容値が大きい」は何度も出ている誤りの選択肢です。

吸音材と遮音

グラスウールやロックウールのような細かいすき間の多い材料(多孔質材料)は、中・高周波数の音をよく吸収します。逆に低い音の吸収は苦手です。

壁に音が斜めに当たると、壁が音と一緒に揺れて遮音性能が落ちることがあります。これがコインシデンス効果です。

ある音のせいで別の音が聞こえにくくなる現象はマスキング効果です。2つの音の周波数が近いほど、聞こえにくさは大きくなるのです。

機械の振動は「防振」で建物に伝えない

騒音のもとには、空気を伝わる音だけでなく床や壁を伝わる振動もあります。送風機やポンプの振動が建物に伝わると、離れた部屋で音として聞こえることがあるのです。

試験に出る防振の要点

①防振材は、機器の固有振動数・回転数・重さなどを考えて選ぶ

②金属ばねは防振ゴムより、低い周波数の振動を防ぐのが得意

③送風機とダクトのつなぎ目にはたわみ継手を入れ、振動をダクトに伝えない

④吸収冷温水機は回転する部分が少なく振動が小さいので、防振基礎は一般に不要

建設工事の騒音は「敷地境界で85dB」

騒音規制法では、くい打ちなどの特定建設作業の騒音を、作業場所の敷地の境界線で85dBを超えてはならないという決まりです。作業の時間や曜日の制限は災害時にゆるめられますが、85dBの大きさの制限は緊急時でも守る必要があります。

試験ではこう出る

よくある記述 判断
同じ音圧レベルの2つの音を合成すると、約3dB大きくなる 正しい
音圧レベル50dBの音を2つ合成すると、約53dBになる 正しい
点音源からの距離が2倍になると、音圧レベルは約6dB低下する 正しい
NC曲線の許容値は、周波数が高いほど大きい 誤り。高いほど小さい
グラスウールは、低周波数の音をよく吸収する 誤り。中・高周波数をよく吸収
マスキング効果は、周波数が近いほど大きい 正しい

よくある質問

Q. 音の計算に、対数(log)の知識は必要ですか。

A. 試験ではほとんど必要ありません。「2倍で+3dB」「10倍で+10dB」「点音源の距離2倍で−6dB」の3つを覚えておけば、出題の大半に対応できます。

Q. 80dBと80dBを足すと、なぜ160dBではないのですか。

A. dBはエネルギーそのものではなく、倍率を表す目盛りだからです。80dBの音が2つあっても、エネルギーは2倍にしかなりません。2倍は+3dBなので、答えは約83dBです。

Q. dBが0やマイナスになることはありますか。

A. 0dBは「消えた音」ではなく、基準にした音と同じ強さという意味です。基準より弱ければマイナスの値にもなります。dBは基準と比べた倍率なので、0から始まる量とは考え方が違うのです。

Q. ポンプを2台から1台に減らすと、何dB下がりますか。

A. 同じ大きさのポンプなら、エネルギーは2分の1になるので約3dB下がります。「半分にしたから半分の数字になる」わけではない点に注意してください。2台→1台で−3dB、10台→1台で−10dBと、足し算のときの逆と考えれば迷いません。

Q. 騒音計のA特性とは何ですか。

A. 騒音計で、人の耳の聞こえ方に近づくように補正して測るやり方です。人は低い音を小さく感じるので、低い周波数の値を小さめに補正しています。

まとめ

・dBは倍率を足し算に変える目盛り。2倍で+3dB、10倍で+10dB

・同じ音を2つ合わせると約+3dB(50dB+50dB=約53dB)

・違う音は大きいほうに、差に応じた量を足す(差6dBなら+1dB)

・点音源は距離2倍で約−6dB、線音源は約−3dB

・NC曲線は高い周波数ほど許容値が小さい