遠心(えんしん)冷凍機は、羽根車を高速で回し、遠心力で冷媒を外へ飛ばして圧力を上げる冷凍機です。ターボ冷凍機とも呼ばれ、大きなビルや工場の冷房を一手に引き受けています。この記事では、そもそも冷凍機とは何かから始めて、遠心冷凍機の仕組み・往復動との違い・弱点のサージングまでを図解でやさしく解説します。冷凍の知識がゼロの方でも、この記事だけで分かる内容を目指しました。

その前に:冷凍機は何をしている機械?

遠心冷凍機の話に入る前に、冷凍機そのものを30秒だけおさらいします。ここが分かっていないと、あとの話がぼんやりしてしまいます。

用語冷凍機とは?

冷凍機とは、熱を「冷やしたい場所」から「捨てていい場所」へ運ぶ機械のこと。エアコンなら、部屋の中の熱を奪って屋外へ捨てています。

💡 なぜ?
冷たさそのものを作っているのではなく、熱を移動させているだけだから。だから冷房中の室外機は熱い風を出しています。

熱を運ぶ役目をするのが冷媒(れいばい)です。冷媒は蒸発するときにまわりの熱を奪います。打ち水で涼しくなるのと同じ理屈です。

コツ冷凍機の中で冷媒がすること(4ステップ)

① 蒸発器で冷媒が蒸発 → まわりの熱を奪う(ここで冷える)

② 圧縮機で冷媒ガスを押し縮める → 高温・高圧になる

③ 凝縮器で冷やして液体に戻す → 奪った熱を外へ捨てる

④ 膨張弁で圧力を下げる → また蒸発しやすい状態に戻る(①へ)

この②の押し縮め方に、いくつかのやり方があります。遠心冷凍機は、羽根車を回すやり方を使った冷凍機のことです。

冷凍サイクルとは?熱を運んで冷やす仕組みを初心者にもやさしく図解👉 くわしく知りたい方はこちら冷凍サイクルとは?熱を運んで冷やす仕組みを初心者にもやさしく図解

遠心冷凍機とは? 羽根車で外へ飛ばす冷凍機

用語遠心冷凍機とは?

羽根車(インペラ)を高速で回し、遠心力で冷媒ガスを外周へ飛ばして圧力を上げる冷凍機。ターボ冷凍機ともいう。

💡 なぜ?
回転するものの外側では、中身が外へ押しつけられます。バケツに水を入れてぐるぐる回すと水がこぼれないのと同じ力で、冷媒を外周に集めて圧力を高めているから。

遠心冷凍機のしくみ(羽根車で外へ飛ばす)羽根車の回る向き低圧の冷媒ガス(中心から)高圧の冷媒ガス(外周から)羽根車(インペラ)が毎分数千回転中心から吸って、遠心力で外周へ飛ばす → 外周ほど圧力が高くなる
中心から吸い込み、羽根車の遠心力で外周へ飛ばす。外周ほど圧力が高くなる

例遠心冷凍機の動き

① 羽根車が毎分数千回転という速さで回る

② 低圧の冷媒ガスが、羽根車の中心から吸い込まれる

③ 回転する羽根に乗ったガスが、遠心力で外周へ振り飛ばされる

④ 外周に集まったガスはぎゅうぎゅうに押し合う=圧力が高い状態になる

⑤ 高圧になったガスが外周の出口から押し出されていく

なぜ?なぜ回すだけで圧力が上がるのか?

遠心力で外側へ押しつけられるからです。満員電車で車両が急カーブを曲がると、乗客が外側のドアに押しつけられますね。あのとき、ドア際はぎゅうぎゅうで、車両の中央は空いています。羽根車の中でも同じことが起きていて、外周ほど冷媒が密集する=圧力が高いという状態になります。

覚える覚え方

「遠心=洗濯機の脱水」とイメージすると覚えやすいです。高速で回すと、水が外側の壁へ飛んでいきますね。遠心冷凍機がやっているのも同じで、飛ばす相手が水ではなく冷媒ガスです。

往復動冷凍機とは何がちがう?

往復動とのちがいは「押す」か「飛ばす」か往復動(容積式)部屋をせまくして押す小〜中の能力遠心(ターボ)回して外へ飛ばす大きな能力が得意やっていること(冷媒の圧力を上げる)は同じ。やり方だけがちがいます遠心式だけが「回転で飛ばす」グループです
やっていること(圧力を上げる)は同じ。やり方だけが違う

冷媒の押し縮め方は、大きく分けて2種類です。この分け方さえ分かれば、冷凍機の種類はすっきり整理できます。

用語容積式(ようせきしき)とは?

冷媒が入っている部屋の体積を小さくして押し縮める方式。往復動(ピストンが行き来する)・スクリュー(ねじ状の歯車をかみ合わせる)・スクロール(渦巻き形の板を組み合わせる)がこの仲間。

💡 なぜ?
風船を手で握りつぶすと中の圧力が上がる、という単純な原理をそのまま使っているから。

用語遠心式(えんしんしき)とは?

羽根車を回し、遠心力で外へ飛ばして圧力を上げる方式。遠心(ターボ)冷凍機だけがこの仲間。

💡 なぜ?
体積を変えるのではなく、回転の力で冷媒を外周へ集めているから。仕組みがまったく別なので、弱点も別のものになります。

往復動(レシプロ) 遠心(ターボ)
グループ 容積式 遠心式
やり方 ピストンで部屋を狭くする 羽根車で外へ飛ばす
得意な大きさ 小〜中 大
動き 往復運動(行って戻る) 回転運動だけ
振動・騒音 出やすい 少ない
特有の注意点 部品が多く整備が要る サージング

往復動冷凍機とは?ピストンで冷媒を押しちぢめる仕組みを初心者にもやさしく図解👉 くわしく知りたい方はこちら往復動冷凍機とは?ピストンで冷媒を押しちぢめる仕組みを初心者にもやさしく図解

遠心冷凍機だけの弱点「サージング」

用語サージングとは?

遠心式の機械で、流す量を絞りすぎたときに起きる不安定な状態。冷媒が行ったり戻ったりして、機械が大きく振動する。

💡 なぜ?
羽根が押し出す力と、出口側から押し返してくる圧力がつり合ってしまい、冷媒が前に進めなくなるから。押し負けると逆流し、圧力が下がるとまた進む——これを繰り返して振動します。

遠心冷凍機だけに起きる「サージング」正常なとき冷媒がすうっと一方向に流れ続けるサージング行ったり戻ったりして機械が大きく振動する冷やす量を絞りすぎると、押し出す力と押し返す圧力のつり合いが崩れます容積式(往復動・スクリュー・スクロール)では起きません※ 対策=羽根の角度を変える/一部の冷媒を戻して流量を保つ
冷やす量を絞りすぎると、冷媒が行ったり戻ったりする

なぜ?なぜ冷やす量を絞るとサージングが起きるのか?

冷房の負荷(冷やさなければならない熱の量)が小さいとき、冷媒をたくさん流す必要がなくなります。そこで流量を絞るのですが、絞りすぎると冷媒の勢いが足りなくなり、出口側の高い圧力に押し返されてしまいます。ホースの水を細くしすぎると、遠くまで飛ばずに手前で垂れてしまうのと同じようなイメージです。

例サージングを防ぐ工夫

・入口ベーン(羽根の角度を変える板)で、流れをなめらかに絞る

・出た冷媒の一部を入口へ戻して、流れる量を確保する(ホットガスバイパス)

・複数台に分けて運転し、1台あたりの負荷を下げすぎない

注意注意

サージングは容積式では起きません。往復動・スクリュー・スクロールは、部屋の体積を小さくして押し出す仕組みなので、押し返されて逆流するということが起きないからです。試験では「どの方式で起きるか」がそのまま問われます。

試験ではどう問われる?

第三種冷凍機械責任者や管工事施工管理技士では、方式の分類・得意な大きさ・サージングの3点がよく問われます。細かい構造より、この3つを正確に押さえるほうが得点につながりやすいでしょう。

例押さえておく3点

① 遠心(ターボ)は遠心式。往復動・スクリュー・スクロールは容積式

② 遠心は大容量が得意。小さい能力は苦手

③ サージングは遠心式だけに起きる。容積式では起きない

覚える覚え方

「遠心だけが仲間はずれ」と覚えてしまいましょう。3つの容積式は「狭くして押す」という同じ発想ですが、遠心だけは「回して飛ばす」というまったく別の発想です。発想が別だから、サージングという別の弱点を持っている——とつなげて覚えると忘れにくくなります。

まとめまとめ

・遠心冷凍機=羽根車を回し、遠心力で冷媒を外へ飛ばす冷凍機(ターボ冷凍機)

・イメージは洗濯機の脱水。回すと中身が外側の壁へ飛ぶ

・外周ほど冷媒が密集するので、外周が高圧になる

・グループは遠心式。容積式(往復動など)とは発想が違う

・大容量が得意で、回転運動だけなので振動が少ない

・弱点はサージング。流量を絞りすぎると冷媒が行き戻りして振動する