第1章 ボイラーの構造 | 第2回 | 学習カリキュラムの目次を見る

第2回では、ボイラーを1台まるごと見ていきましょう。どこで火が燃え、どこで熱を受け取り、水がどう動いているか。これが分かると、このあと学ぶボイラーの種類や附属品の話がすべてつながるはずです。後半では、ボイラーの容量(能力)と効率の表し方も扱います。どちらも公表試験問題でくり返し出ているテーマです。

伝熱面とは?

ボイラーの壁のうち、片側が燃焼ガスに触れ、反対側が水(または蒸気)に触れている面。ここを通って熱が水へ渡ります。

💡 なぜ? 熱は燃焼ガス→鉄の壁→水の順に伝わるからです(第1回の熱貫流)。伝熱面が広いほど、たくさんの熱を水に渡せるので、ボイラーの大きさを表す目安にもなるのです。

▶ この回は動画でも勉強できます(約43分)

動画と記事は同じ内容です。読むのが苦手な方は動画で、復習は記事で、どうぞ。

ボイラーは「燃やす所」「受け取る所」「見張る部品」でできている

ボイラーの断面で、燃焼室の炎、伝熱面、水と蒸気、附属品の位置関係を表したイメージ図
燃焼室で燃やし、伝熱面で熱を受け取り、附属品が圧力や水位を見張っています。
” alt=”ボイラーの断面で、燃焼室の炎、伝熱面、水と蒸気、附属品の位置関係を表したイメージ図” style=”max-width:100%;height:auto;border-radius:8px;” />
燃焼室で燃やし、伝熱面で熱を受け取り、附属品が圧力や水位を見張っています。

ボイラーは、大きく3つの部分に分けて考えると整理しやすくなります。

部分役目主なもの
燃焼室・燃焼装置燃料を燃やして熱をつくるバーナ・火格子・燃焼室(火炉)
ボイラー本体熱を水に渡して蒸気やお湯をつくる胴・ドラム・炉筒・煙管・水管
附属品・附属設備圧力や水位を見張り、安全に運転する安全弁・圧力計・水面計・給水装置

このあとの講座も、この3つの分け方に沿って進めていきましょう。第3〜5回は本体の種類と構造、第6〜7回は附属品、第8回は自動制御。燃焼装置は「燃料と燃焼」の科目でくわしく扱う予定です。

燃焼室(火炉):燃料を燃やす場所

燃焼室は、燃料を燃焼させて熱を発生させる部分で、火炉(かろ)とも呼ばれる場所です。供給された燃料をすばやく着火・燃焼させ、燃料から出るガスと空気をよく混ぜて完全燃焼させるのが役目です。

燃焼室の中を大気より高い圧力にして燃やす方式を加圧燃焼方式といいます。中の燃焼ガスが外へ漏れないように、燃焼室は気密構造です。

燃焼装置:バーナと火格子

燃焼装置は、燃料の種類によって違うものを選びます。重油などの液体燃料・ガスなどの気体燃料・粉にした石炭(微粉炭)にはバーナの出番です。粉にしていない一般の固体燃料には、燃料を載せて燃やす火格子(ひごうし)を使うのです。

伝熱面:放射伝熱面と対流伝熱面

伝熱面は、どこにあるかで呼び方が変わるのが特徴です。

呼び方場所主な熱の受け取り方
放射伝熱面燃焼室に直面している伝熱面炎からの放射
対流伝熱面(接触伝熱面)燃焼室を出た高温ガスの通り道にある伝熱面ガスが触れて流れる対流(熱伝達)

⚠ 注意

試験では、この2つを入れ替えた選択肢が誤りとして出題されました。「燃焼室に直面=接触伝熱面」「ガス通路=放射伝熱面」はどちらも逆です。炎が見える所は放射、ガスが通り過ぎる所は対流(接触)と、場所の様子で区別してください。

ボイラーの中で、水はぐるぐる回っている

ボイラーの水は、じっとしているわけではありません。温められた水や、気泡を含んだ水は軽くなって上へのぼります。そのあとへ温度の低い重い水が下りてきて、ボイラーの中に水の循環流ができるのです。この流れはポンプを使わなくても自然に生まれるので、自然循環と呼ばれます。

水循環とは?

ボイラーの中で、温まって軽くなった水が上がり、冷たく重い水が下がることで生まれる水の流れ。

💡 なぜ? 水が回っていると、伝熱面にいつも新しい水が触れて熱を受け取り続けられるからです。

💡 覚え方

鍋で湯を沸かすとき、底で温まった湯が上がり、上の冷たい湯が下りてくる。あの動きが、ボイラーの中でも起きているのです。温まると軽くなって上へ、冷えると重くなって下へ——この1つの性質だけで、水循環の問題はほとんど判断できます。

水循環がよいと、伝熱面は水温に近い温度に保たれる

水がよく回っていれば、伝熱面が受け取った熱はすぐ水に運び去られるでしょう。そのため伝熱面の温度は、水温に近い温度に保たれるわけです。

反対に水循環が悪いと、伝熱面に気泡がとどまり、熱が水に渡らなくなってしまいます。すると鉄の壁だけが熱くなり、焼損(焼けて傷む)や膨出(ふくれ出す)の原因になるのです。

⚠ 注意

「水循環がよいほど、伝熱面の温度は水温より著しく高くなる」は誤りです(複数回出題)。よく回るほど冷やされるので、伝熱面は水温に近くなるが正解です。

ボイラーの形によって、循環の工夫が違う

ボイラー水循環の工夫
丸ボイラー(大きな胴の中に水をためる形)伝熱面の多くが水の中にあり、水が自然に対流しやすいので、特別な循環の通り道はいらない
炉筒ボイラー(胴の中に火を燃やす筒がある形)循環をよくするため、炉筒を中央から片方へ少しずらしたものがある
水管ボイラー(細い管の中に水を通す形)水と気泡が上がる管と、水が下りる管を分けて設けたものが多い

貫流ボイラーは、水が管の入口から出口まで一方通行で流れるしくみです(第4回でくわしく扱います)。ぐるぐる回る循環そのものがありません。「上昇管と下降管を区別して設ける」のは、貫流ボイラーではなく水管ボイラーの説明です。

🤔 自然循環式の水管ボイラーで、圧力が高くなると何が困るのですか。

水循環の力は、水と蒸気の重さ(密度)の差から生まれます。圧力が高くなると蒸気が押し縮められて重くなり、水と蒸気の密度の差が小さくなるのです。その結果、循環する力が弱くなります。高い圧力では、ポンプで水を回す方式(強制循環)が使われるのはこのためです。

ボイラーの容量(能力)の表し方

ボイラーの大きさ・能力は、1時間にどれだけ蒸気をつくれるかで表します。

蒸気ボイラーの容量とは?

最大連続負荷(無理なく続けて出せる最大の運転)の状態で、1時間に発生する蒸発量。単位はkg/hやt/hです。

💡 なぜ? ボイラーを使う側にとって知りたいのは、どれだけの蒸気を送れるかだからです。「1時間に消費する燃料量」で示すという選択肢は誤りです。

換算蒸発量:条件の違うボイラーを同じ物差しで比べる

同じ1,000kgの蒸気をつくるのでも、蒸気の圧力・温度や、入れる水(給水)の温度によって必要な熱は変わります。冷たい水から高い圧力の蒸気をつくるほど、たくさんの熱がいるのです。

そこで、実際の蒸発量を基準の状態でつくったらどれだけになるかに直したものを換算蒸発量といいます。基準の状態とは、100℃の水を100℃の蒸気にすることで、このとき1kgあたりに必要な熱が2,257kJです。

換算蒸発量の求め方

①実際に給水から蒸気をつくるのに使った熱量を出す

 =実際の蒸発量 ×(発生蒸気の比エンタルピ − 給水の比エンタルピ)

②その熱量を2,257kJ/kgで割る

③答え=換算蒸発量(kg/h)

💡 覚え方

2,257は「100℃の水を100℃の蒸気にする熱」。どのボイラーの仕事も、この共通の物差しで何kgぶんかに直したものが換算蒸発量、と考えると式が組み立てられます。

ボイラー効率:入れた熱のうち、何%が蒸気に入ったか

ボイラー効率とは?

燃料などで入れた全部の熱(全供給熱量)のうち、発生した蒸気が受け取った熱(吸収熱量)の割合。

💡 なぜ? 燃料の熱は、煙突から出ていく排ガスなどで一部が逃げてしまうからです。効率が高いほど、同じ燃料でたくさんの蒸気をつくれるわけです。

ボイラー効率の式

ボイラー効率(%)= 蒸気が受け取った熱 ÷ 燃料の熱 × 100

蒸気が受け取った熱=実際の蒸発量 ×(発生蒸気の比エンタルピ − 給水の比エンタルピ)

燃料の熱=燃料消費量 × 燃料の低発熱量

ここで燃料の発熱量には、一般に低発熱量を使うのが決まりです。

高発熱量と低発熱量とは?

燃料が燃えると水蒸気ができます。その水蒸気が水に戻るときの熱(潜熱)まで含めた発熱量が高発熱量、含めない発熱量が低発熱量です。

💡 なぜ? ボイラーの排ガスの水蒸気は、通常水に戻らないまま煙突から出ていきます。その潜熱は実際には使えないので、使えない熱を除いた低発熱量で効率を計算するのです。

⚠ 注意

令和8年4月公表の問題で誤りだった選択肢があります。「ボイラー効率は換算蒸発量と比エンタルピの積を、燃料消費量と低発熱量の積で割って示せる」というものです。分子は実際の蒸発量×(発生蒸気の比エンタルピ−給水の比エンタルピ)で、換算蒸発量は使いません。

数字で確かめる(例)

蒸発量1,000kg/h、発生蒸気2,780kJ/kg、給水80kJ/kg

蒸気が受け取った熱=1,000 ×(2,780−80)=2,700,000kJ/h

燃料75kg/h、低発熱量40,000kJ/kg → 燃料の熱=3,000,000kJ/h

効率=2,700,000 ÷ 3,000,000 × 100=90%

換算蒸発量=2,700,000 ÷ 2,257=約1,196kg/h

練習問題:効率と換算蒸発量を3問

どれも「蒸気が受け取った熱」を先に出すのがコツです。そのあと、効率なら燃料の熱で割り、換算蒸発量なら2,257で割ります。

答えと考え方

問1 蒸発量2,000kg/h、発生蒸気2,770kJ/kg、給水100kJ/kg。蒸気が受け取った熱は? → 2,000×2,670=5,340,000kJ/h

問2 問1のボイラーの燃料の熱が6,000,000kJ/hのとき、効率は? → 5,340,000÷6,000,000×100=89%

問3 問1のボイラーの換算蒸発量は? → 5,340,000÷2,257=約2,366kg/h

問3のように、換算蒸発量は実際の蒸発量(2,000kg/h)より大きくなります。給水が100℃より冷たいぶん、基準より多くの熱を使っているからです。

試験ではこう出る

よくある記述判断
燃焼室に直面する伝熱面を接触伝熱面、ガス通路の伝熱面を放射伝熱面という誤り。直面=放射、ガス通路=対流(接触)
燃焼室は火炉ともいい、燃料を燃焼させ熱が発生する部分である正しい
加圧燃焼方式の燃焼室は気密構造になっている正しい
水循環がよいほど、伝熱面温度は水温より著しく高くなる誤り。水温に近い
炉筒ボイラーには、炉筒を中央から片方へ少しずらしたものがある正しい
貫流ボイラーは、上昇管と下降管を区別して設けているものが多い誤り。それは水管ボイラー
自然循環式水管ボイラーは、高圧になるほど循環力が弱くなる正しい
蒸気ボイラーの容量は、1時間に消費する燃料量で示す誤り。1時間の蒸発量
換算蒸発量は、実際に要した熱量を2,257kJ/kgで割ったものである正しい
ボイラー効率の算定には、一般に高発熱量を用いる誤り。低発熱量

出典:安全衛生技術試験協会 二級ボイラー技士 公表試験問題(令和6年10月〜令和8年10月公表)。これをもとに、ゼロパスが要点を整理しました。

よくある質問

Q. 「火炉」と「炉筒」は同じものですか。

A. 違います。火炉は燃焼室の別名で、どのボイラーにもある「燃やす場所」の呼び方です。炉筒は、丸ボイラーの胴の中にある円筒形の燃焼室のことで、ボイラーの形の名前に使われます(第3回)。

Q. 「最大連続負荷」とは、どのくらいの運転のことですか。

A. ボイラーが無理なく続けて出し続けられる、いちばん大きな能力での運転のことです。一瞬だけなら出せる能力ではなく、連続して安全に出せる上限で比べるので、ボイラーどうしを公平に比べられます。

Q. 高い圧力のボイラーでは、水をどうやって回すのですか。

A. 自然循環の力が弱くなるので、ポンプで強制的に水を回す方式(強制循環式)が使われます。さらに、水を管に一方通行で流して蒸気にするのが貫流ボイラーです。どちらも第4回でくわしく説明します。

Q. 換算蒸発量と実際の蒸発量、どちらが大きくなりますか。

A. 多くの場合、換算蒸発量のほうが大きくなります。実際のボイラーは冷たい給水から蒸気をつくるので、1kgあたり2,257kJより多くの熱を使っているからです。

まとめ

・ボイラー=燃焼室・燃焼装置+本体+附属品

・燃焼室に直面=放射伝熱面、ガス通路=対流(接触)伝熱面

・水循環がよいと伝熱面は水温に近く保たれる。悪いと焼損・膨出

・容量=最大連続負荷で1時間の蒸発量。換算蒸発量=熱量÷2,257kJ/kg

・ボイラー効率は低発熱量で計算する

・自然循環は高圧ほど弱くなる/上昇管と下降管を分けるのは水管ボイラー