第1章 ボイラーの構造 | 第4回 | 学習カリキュラムの目次を見る

第3回の丸ボイラーは大きな胴に水をためる形でした。第4回の水管ボイラーは反対に、細い管の中に水を通して熱を受け取るボイラーです。中でも貫流ボイラーは、ビルや工場の小形の蒸気ボイラーとしてよく見かける形です。公表試験問題でもくり返し出ています。この回では、水の流れ方による3つの分類から始めて、それぞれの長所と弱点を理由つきで整理しましょう。

水管ボイラーとは?

ドラム(水や蒸気をためる円筒)と多数の水管を組み合わせ、水管の中を流れる水を燃焼ガスで熱して蒸気をつくるボイラー。

💡 なぜ? 水を細い管に分けて流すと、伝熱面積を大きくとれるうえ、細い管は高い圧力に耐えやすいからです。そのため高圧・大容量のボイラーに向いているのです。

水管ボイラーは、水の流れ方で3つに分かれる

自然循環式・強制循環式・貫流式の3つの水管ボイラーで、水の流れ方の違いを並べたイメージ図
自然に回る、ポンプで回す、回さずに一方通行で流す。この違いで3つに分かれます。

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自然に回る、ポンプで回す、回さずに一方通行で流す。この違いで3つに分かれます。
方式 水の流れ方 ひとことで
自然循環式 温まった水が上がり、冷たい水が下がる密度の差で自然に回る ポンプなしで回る
強制循環式 循環の通り道にポンプを設けて、強制的に水を回す ポンプで回す
貫流式 管の入口から入れた水が、一方通行で流れながら蒸気になって出ていく 回さない

第2回で見たように、自然循環の力は水と蒸気の密度の差から生まれます。圧力が高くなるとこの差が小さくなり、循環力が弱くなるのです。

⚠ 注意

「自然循環式は、高圧になるほど密度差が大きくなり、循環力が強くなる」は誤り(令和6年4月公表)。高圧ほど密度差は小さく、循環力は弱くなります。だから高圧では、ポンプで回す強制循環式が使われるのです。

💡 覚え方

「高圧になると、蒸気が押し縮められて水に近づく」。重さの差が小さくなれば、浮き上がる力も沈む力も弱くなる——と考えると、循環力が弱まる向きを間違えません。

🤔 なぜ細い管は、高い圧力に強いのですか。

圧力が同じなら、管や胴が太いほど、壁を引き裂こうとする力が大きくなるからです(第5回でくわしく扱います)。細い管なら同じ厚さでも高い圧力に耐えられるので、大きな胴に水をためる丸ボイラーより、高圧に向いています。

自然循環式・強制循環式の水管ボイラー

二胴形水管ボイラー

よく使われる形が二胴形水管ボイラーです。上に蒸気ドラム、下に水ドラムの2つの胴があり、そのあいだをたくさんの水管でつないだ形です。

さらに燃焼室の壁の内側にも水管を並べて水冷壁にしています。二胴形は、水冷壁と、上下のドラムをつなぐ水管群を組み合わせた形が一般的です。

水管には、温まった水と気泡が上がっていく管と、ドラムから水が下りてくる管があります。この上り下りの道を分けておくことで、水がスムーズに回るのです(第2回の水循環)。

放射形ボイラー:高圧・大容量の主役

発電所のような高圧・大容量の水管ボイラーでは、炉の壁全面を水冷壁にした放射形ボイラーが多く使われています。炎からの放射熱を水冷壁で大量に受け取る形で、蒸発部の接触伝熱面(ガスが触れて流れる面)は少ないのが特徴です。

⚠ 注意

「放射形ボイラーは、接触伝熱面で吸収する熱の割合が大きい」は誤り(令和5年10月公表)。名前のとおり、放射で受け取る割合が大きいのが放射形です。

💡 覚え方

「放射形=炎を水冷壁で抱きかかえる形」。炉の壁一面が水冷壁なので、炎の光と熱をそのまま受け取る。だから接触伝熱面は少なくて済む、とつなげて覚えましょう。

🤔 なぜ高圧・大容量では、放射で熱を受け取る形にするのですか。

大容量のボイラーでは、炉の中でとても大きな炎が燃えます。その強い放射熱を、炉の壁全面の水冷壁で直接受け取るほうが、効率よく大量の熱を水に渡せるからです。水冷壁は同時に、炉の壁を熱から守る役目も果たします。

貫流ボイラー:水が一方通行で蒸気になる

貫流ボイラーは、長い管の入口から水を押し込むボイラーです。水は管を通るあいだに温められ、蒸発し、さらに熱せられて、出口から蒸気として出ていきます。

貫流ボイラーの中で起きること

①給水ポンプで、管の入口へ水を押し込む

②管の前半で、水が沸騰する温度まで温まる(予熱)

③管の中ほどで、水がどんどん蒸気に変わる(蒸発)

④出口近くで、蒸気になりきる(必要に応じてさらに過熱)

⑤出口から蒸気が取り出される。水は戻ってこない

貫流ボイラーとは?

蒸気ドラムも水ドラムもなく、管だけで構成された水管ボイラー。水は循環せず、管の中を一方通行で流れながら蒸気になります。

💡 なぜ? ドラムという大きな胴がないので、高い圧力にも耐えやすく、小さく軽くつくれるからです。小さな建物の機械室にも置きやすいのが強みになります。

分類のうえでは水管ボイラーの仲間ですが、水循環がない点がほかの水管ボイラーとの大きな違いです。

なお、「貫流」は「貫いて流れる」という意味です。水が管を入口から出口まで一度で貫いて流れることから、この名前がつきました。名前の意味が分かれば、「水循環がない」という特徴も自然に思い出せます。

超臨界圧力ボイラーには、貫流ボイラーの構造を使う

第1回で、臨界圧力という言葉が出てきました。それ以上の圧力では、水と蒸気の境目がなくなる圧力のことです。

この臨界圧力を超える高い圧力で使うボイラーが、超臨界圧力ボイラーです。

ドラムには、水と蒸気を分ける役目がありました。ところが臨界圧力を超えると、水と蒸気の区別(密度の差)がなくなります。ドラムで水と蒸気を分けることも、密度の差で水を循環させることもできません。そこで超臨界圧力ボイラーには、ドラムを持たない貫流ボイラーの構造が使われます。

⚠ 注意

「超臨界圧力ボイラーに採用される構造は?」と聞かれたら、答えは貫流ボイラーです(令和2年4月・令和4年10月公表)。選択肢には強制循環式水管ボイラーや二胴形水管ボイラーも並びます。どちらもドラムがある形なので、ここで選んではいけません。

貫流ボイラーの長所

貫流ボイラーで「正しい」とされる特徴

①ドラムがいらないので、高圧ボイラーに適している

②伝熱面積あたりの保有水量が著しく小さいので、起動から蒸気が出るまでの時間が短い

③同じ容量の丸ボイラーに比べ、据付面積が小さい

④全自動化されたものが多い

⑤暖房用・業務用・工場用の小形低圧ボイラーとして、単管式・多管式がよく使われる

貫流ボイラーの弱点と、その対策

保有水量が少ないことは、長所にも弱点にもなる性質です。貫流ボイラーでは、その裏表がはっきり表れます。

弱点 理由 対策
負荷が変わると圧力が大きく変動しやすい 水が少なく、熱のたくわえがほとんどない 給水量と燃料量にすばやく反応する自動制御が必要
水の汚れに弱い 細い管の中で給水のほとんどが蒸発し、不純物が管に残る 十分に処理した水を使う

⚠ 注意

貫流ボイラーの問題で、よく誤りとして出るのは次の2つです。「起動から蒸気発生までの時間が長い」は誤りで、正しくは短い。「丸ボイラーより据付面積が大きくなる」も誤りで、正しくは小さいです。

💡 覚え方

貫流ボイラー=「水が少ない、小さい、速い、だから自動制御と水処理が命」。保有水量が少ないことから、起動が速い・場所をとらない・圧力が揺れやすい・汚れに弱いの4つが全部出てきます。

🤔 同じ「保有水量が少ない」なのに、なぜ長所と弱点の両方になるのですか。

少ない水はすぐ温まるので、起動が速くなります(長所)。一方で少ない水は、熱や水の出入りで状態がすぐ変わるので、蒸気の使い方が変わると圧力が大きく揺れます(弱点)。小さな鍋はすぐ沸くが、すぐ冷めるのと同じで、1つの性質の表と裏です。

水管ボイラーを構成する主な部分

水管ボイラーには、熱をむだなく使うための部品がいくつも組み合わされています。名前と役目をざっと押さえておきましょう。

部分 役目
蒸気ドラム 上にある胴。蒸気と水を分け、蒸気を送り出す
水ドラム 下にある胴。水管へ水を配る
管寄せ 管を1か所に集め、または分配する容器(JIS B 0126)。たくさんの水管をまとめてつなぐ
水冷壁 燃焼室の壁に並べた水管。放射熱を受け取り、炉壁を守る
過熱器 できた飽和蒸気をさらに熱して過熱蒸気にする
エコノマイザ 排ガスの熱で給水を温めておく
空気予熱器 排ガスの熱で燃焼用の空気を温めておく

過熱器・エコノマイザ・空気予熱器は、第7回(附属設備)でくわしく扱います。どれも捨てるはずの熱を取り戻すための部品です。

丸ボイラー・水管ボイラー・貫流ボイラーの比較

比べる点 丸ボイラー 水管ボイラー(自然・強制循環) 貫流ボイラー
水のため方 大きな胴 ドラム+水管 管だけ(ドラムなし)
保有水量 多い 少ない 著しく少ない
起動の速さ 遅い 速め とても速い
圧力の変動 小さい 変動しやすい 大きい(応答の速い制御が必要)
高圧・大容量 不向き 向いている 高圧に向いている
水の管理 比較的ゆるい 厳密 特に厳密

表を見ると、左から右へ行くほど保有水量が少なくなり、特徴がはっきりしていくのが分かります。どの選択肢も、「このボイラーは水が多いか少ないか」から判断できるはずです。

水管ボイラーは、低圧・小容量から高圧・大容量まで

水管ボイラーは高圧・大容量に向いていると書いてきました。ただし、高圧・大容量だけのボイラーではありません。

構造上、低圧・小容量のものから高圧・大容量のものまでつくれるのが水管ボイラーです。ビルで使う小形の貫流ボイラーも、水管ボイラーの仲間でした。

⚠ 注意

令和5年4月公表の問題では、水管ボイラーは「構造上、低圧小容量用から高圧大容量用までに適している」が正しい記述でした。「高圧大容量向き」だけを覚えていると、これを誤りと思い込みやすいので注意してください。

戻り燃焼方式は、水管ボイラーの特徴ではない

戻り燃焼方式は、燃焼ガスを炉筒の奥で折り返して、燃焼効果を高める方式です。これは炉筒煙管ボイラー(丸ボイラー)の工夫で、第3回で扱いました。

⚠ 注意

「水管ボイラーは、戻り燃焼方式を採用して燃焼効率を高めているものが多い」は誤り(令和5年4月公表)。戻り燃焼は炉筒煙管ボイラーの特徴です。炉筒がある丸ボイラーの話と結びつけておきましょう。

練習問題:貫流ボイラーの正誤を判断する

令和7年4月公表の問題は、A〜Dの記述から正しいものだけを選ぶ形でした。同じ考え方で、次の4つを判断してみましょう。

答え=AとD

A 蒸気ドラムも水ドラムもなく、管系だけで構成される → 正しい

B 同じ容量の丸ボイラーより、起動から蒸気が出るまでの時間が長い → 誤り(水が少ないので短い)

C 同じ容量の丸ボイラーより、据付面積は大きいが全自動化されたものが多い → 誤り(据付面積は小さい)

D 負荷変動で圧力変動が大きいので、応答の速い自動制御が必要 → 正しい

Cのように、前半が誤りで後半が正しい文に注意してください。文の一部でも誤りがあれば、その記述は誤りとして扱います。

おまけの3問(分類の正誤)

①「水管ボイラーは、流動方式で自然循環式・強制循環式・貫流式に分かれる」 → 正しい

②「強制循環式は、蒸気と水の密度差だけで循環させる」 → 誤り(それは自然循環式。強制循環式はポンプ)

③「貫流ボイラーは、上昇管と下降管を分けて水循環をよくしている」 → 誤り(貫流は水循環がない)

分類の問題は、「回るのか、回すのか、回さないのか」の3択で考えると、迷わず整理できるでしょう。

どんな場所で使われているか

使われ方の目安を知っておくと、特徴がイメージしやすくなります。発電所や大きな工場のように、高い圧力の蒸気を大量に使う所では大形の水管ボイラーが中心です。

一方、ビルの暖房・給湯、病院、ホテル、食品工場などでは、小形の貫流ボイラーを何台か並べて使う例が多く見られます。必要なときに必要な台数だけ動かせるので、起動の速い貫流ボイラーの長所が生きるのです。

試験ではこう出る

よくある記述 判断
水管ボイラーは、自然循環式・強制循環式・貫流式に分類される 正しい
強制循環式は、循環系路中のポンプで強制的に水を循環させる 正しい
自然循環式は、高圧になるほど密度差が大きくなり循環力が強くなる 誤り。小さく・弱く
二胴形は、水冷壁と上下ドラムを結ぶ水管群を組み合わせた形が一般的 正しい
高圧大容量には、接触伝熱面で吸収する割合が大きい放射形ボイラーを使う 誤り。放射形は接触伝熱面が少ない
貫流ボイラーは、ドラムを必要としないので高圧ボイラーに適している 正しい
貫流ボイラーは、十分に処理した水を使わなければならない 正しい
貫流ボイラーは、同容量の丸ボイラーより据付面積が大きい 誤り。小さい
超臨界圧力ボイラーには、貫流ボイラーの構造が採用される 正しい
水管ボイラーは、構造上、低圧小容量用から高圧大容量用までに適している 正しい
水管ボイラーは、戻り燃焼方式で燃焼効率を高めているものが多い 誤り。戻り燃焼は炉筒煙管ボイラー

出典:安全衛生技術試験協会 二級ボイラー技士 公表試験問題(令和2年4月〜令和8年10月公表)。これをもとに、ゼロパスが要点を整理しました。

よくある質問

Q. 単管式と多管式は、何が違うのですか。

A. 単管式は1本の長い管で、多管式は多数の管を並べた形です。ビルや工場の小形の貫流ボイラーでは、多数の管を円形に並べた多管式がよく使われています。

Q. 法令では、貫流ボイラーの大きさをどう数えるのですか。

A. 法令には、貫流ボイラーの伝熱面積を実際より小さく数える決まりがあります。そのため、小形の貫流ボイラーは二級ボイラー技士でも作業主任者になれる範囲に入ることが多いのです。くわしい数え方は法令の回(第18回)で説明します。

Q. 強制循環式で、循環ポンプが止まったらどうなりますか。

A. 水管の中の水が回らなくなり、伝熱面が冷やされなくなるおそれがあります。第2回で見たように、水が回らないと焼損や膨出の原因になるので、ポンプの運転状態は自動制御や警報で見張るのが一般的です。

Q. 貫流ボイラーは、なぜ水が全部蒸気になっても管が焼けないのですか。

A. 水を連続して送り込み続けるからです。管の中にはいつも新しい水が入ってきて熱を受け取るので、管の温度は上がりすぎません。逆にいうと、給水が止まると一気に危険になるので、給水と燃焼の自動制御がとても大切になります。

まとめ

・水管ボイラー=自然循環式・強制循環式・貫流式

・自然循環は高圧ほど弱くなる→高圧では強制循環

・放射形ボイラー=炉壁全面が水冷壁、接触伝熱面が少ない、高圧大容量向き

・貫流ボイラー=ドラムなし・水循環なし・保有水量が著しく少ない

・貫流は起動が速い・据付面積が小さいが、圧力変動が大きく水処理が厳密

・見分け方は「回る(自然)・回す(強制)・回さない(貫流)」

・超臨界圧力ボイラーには貫流ボイラーの構造(臨界圧力を超えると水と蒸気の区別がなく、ドラムで分けられないため)

・水管ボイラーは低圧小容量から高圧大容量まで/戻り燃焼は炉筒煙管ボイラーの工夫