第三石油類・第四石油類・動植物油類|自然発火までゼロからやさしく解説【危険物乙4】
この記事でわかること
- 第三石油類・第四石油類・動植物油類の線引きが分かります
- 重油がなぜ「消しにくい」のかが分かります
- 動植物油類の自然発火のしくみと、ヨウ素価の意味が分かります
- 引火点が高い=安全ではない理由が分かります
引火点(火を近づけたときに燃え始める最低の液温)が高いグループなので「危なくなさそう」と思われがちですが、試験ではむしろ、その油断をつく問題が出ます。特に動植物油類の自然発火は、繰り返し問われやすいテーマです。
第三石油類──重油が代表


用語第三石油類とは?
第三石油類とは、引火点が70℃以上200℃未満の第4類危険物です。指定数量(これ以上扱うと許可が必要になる基準量)は 非水溶性(水に溶けない)2,000L/水溶性(水に溶ける)4,000L。
覚える重油で問われること
- 引火点は60〜150℃と幅がある … 1種(A重油)の引火点は60℃以上で、第二石油類の範囲(70℃未満)に入るものもあります。それでも品名としては重油=第三石油類として扱われます。
- 常温では引火しないが、加熱すれば引火する … ボイラーでは温めて使うので、そこが危険になります。
- いったん燃えると消火が難しい … 液温が高くなっており、水をかけると激しく沸き立って飛び散るおそれがあります。
用語スロップオーバー・ボイルオーバーとは?
スロップオーバー・ボイルオーバーとは、燃えている重油などが、水の急な沸騰によって容器の外へあふれ出す危険な現象です。スロップオーバーは、燃えて高温になった油の表面に水や泡をかけたとき、その水が急に沸騰して油をあふれさせるもの。ボイルオーバーは、タンクの底にたまっていた水に、燃焼で熱くなった油の層が届き、底の水が一気に沸騰して油を噴き出させるものです。どちらも水が水蒸気になって体積が約1,700倍にふくらみ、燃えている油を周りへ吹き飛ばします。そのため、重油の火災に棒状の水(ホースから一本の筋のように勢いよく出す水)は絶対に使いません。
第四石油類──ギヤー油・シリンダー油
用語第四石油類とは?
第四石油類とは、引火点が200℃以上250℃未満の第4類危険物です。指定数量は6,000L(水溶性・非水溶性の区別はありません)。
- ギヤー油 … 歯車の潤滑(滑りをよくして摩耗を防ぐこと)に使う。引火点220℃前後
- シリンダー油 … エンジンなどの潤滑。引火点は第四石油類の範囲(200℃以上250℃未満)
- 共通してねばりけが強く、蒸発しにくい
注意第四石油類の注意点
- 常温ではまず引火しません … 引火点が200℃以上と高く、常温では燃えるのに必要な濃さの蒸気が出ないためです。
- ただし、いったん燃えると液温が非常に高い … 重油と同じく水をかけると危険です。
- 自然発火の心配は小さい … 鉱物油(石油からとった油)なので、布にしみこんでも酸化熱(物が酸素と結びつくときに出る熱)で自然発火する心配は小さいです。自然発火が問題になるのは、次の動植物油類(特に乾性油)です。
動植物油類──自然発火がいちばんの論点
用語動植物油類とは?
動植物油類とは、動物の脂肪や植物の種子・果肉からとった油で、1気圧で引火点が250℃未満のものです。指定数量は10,000L(第4類でいちばん多い)。アマニ油・キリ油・ヤシ油・オリーブ油・大豆油など。
引火点が高いので、火を近づけたくらいでは燃えません。ところが火の気がまったくなくても、勝手に燃え出すことがあります。これが自然発火です。
用語自然発火とは?
自然発火とは、外から火をつけなくても、その物質自身が発熱して発火することです。動植物油の場合は空気中の酸素とゆっくり反応するときに出る熱(酸化熱)がたまって起こります。
例簡単なたとえ
油をふき取ったぼろ布を、丸めてゴミ箱に積んでおくとします。布にしみた油は空気と触れる面積がとても広いので、少しずつ酸化して熱を出します。普段ならその熱は空気に逃げますが、布が積み重なっていると熱の逃げ場がありません。中心の温度がじわじわ上がり、やがて発火点(火を近づけなくても自然に燃え出す温度)に達して燃え出します。これは実際の火災でも見られる原因の一つです。
用語ヨウ素価とは?
ヨウ素価とは、油の「酸化されやすさ」を表した数字です。数字が大きいほど酸化されやすく、自然発火しやすい。
覚える覚え方
「乾性油=よく乾く=よく酸化する=自然発火しやすい」。油絵の具やニスにアマニ油が使われるのは「よく乾く」からですが、その”乾く”の正体が酸化です。ヨウ素価130以上が乾性油、という数字だけ押さえてください。
覚える自然発火を防ぐには
- 油のしみた布を積み重ねない … 広げて乾かすか、水を入れた金属容器に入れてふたをする。
- 換気して熱をこもらせない
- 直射日光を避け、涼しいところに置く
「引火点が高い=安全」ではない
- 加熱されれば引火する … ボイラーや加熱設備の周りでは、常温という前提が成り立ちません。
- 霧状にすれば引火点以下でも引火する
- 動植物油類は、布や紙にしみこむと自然発火の危険が出る
- いったん燃えると液温が高く、水では消せない
覚える覚え方
引火点が高い油は「火はつきにくいが、ついたら手に負えない」と覚えてください。第一石油類が「すぐ火がつくが軽い」のと、ちょうど対になります。
よくある質問
Q.重油の引火点が60℃なら、第二石油類(70℃未満)ではないのですか?
A.数字だけ見るとそうなりますが、重油は品名として第三石油類に定められています。石油類の分類は原則として引火点で決まりますが、重油のように品名で決まっているものもあるのです。試験では「重油=第三石油類」と覚えておけば大丈夫です。
Q.てんぷら油から火が出るのも自然発火ですか?
A.違います。てんぷら油の火災は、コンロで加熱され続けて発火点(約370℃)に達したもので、発火(加熱による)です。自然発火は加熱していないのに、酸化熱がたまって発火するもの。「熱源があるかどうか」で区別してください。
Q.動植物油類の指定数量が10,000Lと多いのはなぜですか?
A.引火点が高く、普通に置いてある状態では危険が小さいからです。指定数量は危険度の裏返しで、危険なものほど少なく、危険の小さいものほど多く設定されています。特殊引火物が50L、動植物油類が10,000L——200倍の差が、そのまま危険度の差だと考えてください。
試験ではこう出る
例出題のされ方
- ①重油の消火 … 「棒状の水で消火する」→誤り。水が急に沸騰して油が飛び散る(スロップオーバー)危険。
- ②ヨウ素価 … 「ヨウ素価が大きいほど自然発火しやすい」→正しい。130以上が乾性油。
- ③自然発火の防止 … 「油のしみた布は積み重ねて保管する」→誤り。
- ④指定数量 … 第三2,000L・第四6,000L・動植物油類10,000L。
まとめこのページのまとめ
- 第三石油類=70〜200℃(重油・クレオソート油・グリセリン)。指定数量2,000L/水溶性4,000L
- 第四石油類=200〜250℃(ギヤー油・シリンダー油)。指定数量6,000L
- 動植物油類=引火点250℃未満。指定数量10,000L
- 重油の火災に棒状の水は使えない(水が急に沸騰して油が飛び散る=スロップオーバー)
- ヨウ素価130以上=乾性油=自然発火しやすい(アマニ油・キリ油)
- 油のしみた布を積み重ねない
