第1章 熱と空気のきほん | 第5回 | 目次を見る:1級 / 2級

この記事でわかること

  • 湿り空気線図に何が描いてあるかがわかります
  • 2つの値が決まれば、他がぜんぶ読めることがわかります
  • 冷却・加熱・加湿・除湿が線図の上でどう動くかわかります
  • 混合したときの状態の求め方がわかります

湿り空気線図は空調のすべてが載っている1枚の地図です。最初は線だらけで戸惑いますが、1本ずつ意味が分かれば、その上で計算せずに答えが読めるようになります。

線図に描いてある7つの量

湿り空気線図に描かれている乾球温度・湿球温度・絶対湿度・相対湿度など7つの量の位置と向きを示した図
線図の「縦・横・曲線・斜め」の向きが分かれば、どの量を読むのかが分かります
量 線の向き 単位
乾球温度 縦の線(横軸) ℃
絶対湿度 横の線(縦軸) kg/kg(DA)
相対湿度 右上がりの曲線 %
湿球温度 右下がりの斜め線 ℃
比エンタルピー 湿球温度とほぼ平行な斜め線 kJ/kg(DA)
比容積 急な右下がりの斜め線 ㎥/kg(DA)
飽和線 左上へ向かう曲線=相対湿度100% —

💡 覚え方

「縦は温度、横は水分の量、曲線は湿度、斜めは湿球とエンタルピー」。まずこの4つだけ見えるようになれば、試験の問題はほとんど読めます。

kg/kg(DA)とは?

乾き空気(Dry Air)1kgあたりに、水蒸気が何kg含まれているかという意味です。「湿った空気1kg」ではなく「乾いた空気1kg」を基準にするのがポイントで、こうすると加湿しても分母が変わらないので計算が楽になります。

2つ決まれば、ぜんぶ決まる

湿り空気線図の使い方の基本

7つの量のうち、どれか2つが分かれば、線図上の点が1つに決まります。点が決まれば残りの5つは読み取るだけです。

  • 例 乾球温度26℃、相対湿度50%の空気は?
  • ① 26℃の縦線と50%の曲線の交点を打つ
  • ② その点から左へ水平にたどれば 絶対湿度
  • ③ その点から左下の斜め線をたどれば 湿球温度
  • ④ 同じく斜めの目盛りで 比エンタルピー
  • ⑤ 左へ水平に進んで飽和線とぶつかった所の温度が露点温度

💡 覚え方

「露点は、水平に左へ行って飽和線にぶつかった所」。水分の量を変えずに冷やしていくと、いつか湿度100%になる=そこが露点。だから水平移動なのです(第3回)。

4つの変化の描き方

加熱・冷却・加湿・除湿の4つの変化が湿り空気線図の上でどちらへ動くかを矢印で示した図
空気の状態がどちらへ動くかを、矢印の向きで覚えます
操作 線図上の動き 絶対湿度は
加熱(顕熱のみ) 右へ水平 変わらない
冷却(露点より上) 左へ水平 変わらない
冷却減湿(露点より下) 左へ水平 → 飽和線に沿って左下へ 減る
加湿(水噴霧) 湿球温度一定の線に沿って左上へ 増える
加湿(蒸気) ほぼ真上 増える

なぜ水噴霧の加湿では温度が下がるのか?

水が蒸発するときに、空気から熱をうばうからです。打ち水と同じで、気化熱を空気から取ります。その結果絶対湿度は増えるのに、乾球温度は下がる——これを断熱加湿といい、湿球温度がほぼ変わらないので湿球温度一定の線に沿って動きます。

蒸気加湿との違い

  • 水噴霧(気化式) … 温度が下がる。夏の冷房と相性がよい。細菌の繁殖に注意。
  • 蒸気加湿 … 温度はほとんど変わらない(少し上がる)。清潔だが、蒸気を作るエネルギーがいる。

冷却コイルの動き(いちばん出る)

冷房のとき、空調機のコイルでは温度を下げると同時に、水分も取っています。

  • ①入口の空気の点を打つ(例:27℃・50%)
  • ②水平に左へ … まだ露点に届かないので、温度だけ下がる
  • ③飽和線に触れたら(=露点)、そこから飽和線に沿って左下へ … ここから水滴が出る(減湿が始まる)
  • ④出口の点(例:15℃)
  • → 入口と出口を直線で結んだ傾き=顕熱比(SHF)(第6回)

装置露点温度(ADP)とは?

入口と出口を結んだ直線を、そのまま延ばして飽和線とぶつかった点の温度です。コイルの表面温度に相当すると考えます。コイルがこの温度まで冷やしているから、空気が結露して水が出るのです。

バイパスファクタとは?

コイルに触れずに素通りしてしまった空気の割合です。0に近いほど、コイルの性能がよいことになります。列数が多い・風速が遅い・フィンが密なほど小さくなります。

空気の混合

混合したときの状態は?

2つの空気を結んだ直線上に来ます。その位置は、風量の比で内分した点です。量の多いほうに近づきます。

  • 例 外気(32℃)を1、還気(26℃)を3の割合で混ぜると?
  • ① 2点を直線で結ぶ
  • ② 還気が3、外気が1なので、還気側から1/4の位置
  • ③ 温度は 26 +(32 − 26)× 1/4 = 27.5℃

💡 覚え方

「混合点は、量の多いほうに近い」。てんびんと同じで、重いほうに寄るとイメージすれば、比の向きを間違えません。

試験ではこう出る

  • ①線の向き … 「絶対湿度が一定の変化は、線図上で水平に移動する」→正しい。
  • ②加熱 … 「空気を加熱すると、相対湿度は上がる」→誤り。下がります(水分量は同じでも、持てる量が増えるため)。
  • ③水噴霧加湿 … 「水噴霧による加湿では、乾球温度が下がる」→正しい。
  • ④露点 … 「露点温度は、絶対湿度一定のまま冷却して飽和したときの温度」→正しい。
  • ⑤混合 … 「混合空気の状態点は、2点を結ぶ直線を風量の逆比に内分した点」→正しい。

よくある質問

Q.加熱しただけで相対湿度が下がるのはなぜですか?

A.空気が持てる水分の限界量が増えるからです。相対湿度は「いま持っている量 ÷ 持てる限界量」。加熱しても持っている量(絶対湿度)は変わりませんが、限界量は増えます。分母だけ大きくなるので、割合は下がるのです。冬に暖房すると乾燥するのは、まさにこれです。

Q.比エンタルピーは何に使うのですか?

A.熱量の計算です。必要な冷房・暖房の熱量 = 風量 × 密度 ×(入口と出口のエンタルピー差)で求められます。温度だけでは、水分の分の熱(潜熱)が計算に入りません。エンタルピーなら顕熱と潜熱をまとめて扱えるので便利なのです。

Q.線図が読めなくても、試験は通りますか?

A.計算問題は解けますが、線図の読み方を問う問題を落とします。出題は「線図上でどう動くか」を問う形がほとんどなので、4つの変化(加熱・冷却・冷却減湿・加湿)の矢印の向きだけでも覚えてください。それだけで正誤の判断ができます。

このページのまとめ

  • 7つの量のうち2つ決まれば、点が決まる
  • 縦線=乾球温度/横線=絶対湿度/曲線=相対湿度/斜線=湿球温度とエンタルピー
  • 加熱・冷却は水平移動(絶対湿度は変わらない)
  • 露点を下回ると、飽和線に沿って左下へ=減湿
  • 水噴霧加湿は湿球温度一定で左上へ(温度が下がる)
  • 混合点は2点を結ぶ直線上で、量の多いほうに近い