第3章 燃料及び燃焼 | 第17回 | 学習カリキュラムの目次を見る

燃料を燃やすと、熱と一緒にNOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)などが出てきます。さらに重油に含まれる水分・スラッジ・硫黄は、ボイラーの装置そのものを傷める原因です。第17回は燃料と燃焼の科目の最終回として、大気汚染物質とその抑え方、重油が起こす障害、そして低温腐食をまとめましょう。

NOxなどの大気汚染物質は、令和5年10月〜令和8年10月公表の7回中6回出題された定番です。そのうち4回はNOxの抑え方で、抑える向きと増やす向きの入れ替えがくり返し問われています。

NOx(ノックス)とSOx(ソックス)とは?

NOx=窒素酸化物(窒素と酸素の化合物)、SOx=硫黄酸化物(硫黄と酸素の化合物)。どちらも燃焼で生まれる大気汚染物質です。

💡 なぜ? NOxとSOxは、雨に溶けて酸性雨の原因になるからです。だから燃焼の段階でできるだけ出さない工夫が求められます。

燃焼で出る大気汚染物質

ボイラーの煙突から出る排ガスに含まれるNOx・SOx・すす・ダストと、それを減らす装置を表したイメージ図
排ガスにはNOx・SOx・すす・ダストが含まれます。燃やし方の工夫と装置で減らします。

” alt=”ボイラーの煙突から出る排ガスに含まれるNOx・SOx・すす・ダストと、それを減らす装置を表したイメージ図” style=”max-width:100%;height:auto;border-radius:8px;” />

排ガスにはNOx・SOx・すす・ダストが含まれます。燃やし方の工夫と装置で減らします。
物質 おさえるポイント
NOx 排ガス中のNOxは大部分がNO(一酸化窒素)
SOx 排ガス中のSOxは大部分がSO2(二酸化硫黄)
すす 燃焼で分解した炭素が遊離炭素として残ったもの
ダスト 燃料に含まれる灰分などが固体の粒になったもの

⚠ 注意

「NOxは大部分がNO2」(令和6年4月公表)は誤りで、大部分はNOです。「ダストは、分解した炭素が遊離炭素として残ったもの」(令和5年10月公表)も誤り。それはすすの説明です。

💡 覚え方

「NOxはNO、SOxはSO2」。どちらも排ガスの中では酸素の少ないほうが主役と覚えておくと、入れ替えにだまされません。すす=炭素の燃え残り、ダスト=灰です。

SOxとNOxは、どちらも酸性雨の原因になります(令和5年10月・令和6年4月公表で正しいとされた記述)。雨に溶けると酸になり、森や湖、建物に被害を与えるため、ボイラーの排ガスには規制がかけられているのです。

2種類のNOx

種類 でき方
サーマルNOx 燃焼用の空気中の窒素が、高温で酸素と結びついてできる
フューエルNOx 燃料に含まれる窒素化合物が酸化されてできる

サーマル=熱(thermal)、フューエル=燃料(fuel)。名前のとおり、高温が原因か、燃料の窒素が原因かの違いです。

すすが多いのは不完全燃焼のしるしでもあります。原因は、空気が足りない・霧が粗い・混ざり方が悪い、などです。第9回や第15回で学んだ燃焼の調整が、そのまま汚染物質を減らすことにつながるのです。

NOxを減らす方法

NOxは、高い温度・多い酸素・高温にさらされる時間の長さがそろうほど増えます。だから減らす方法は、その逆をすることです。

NOxを減らす方法(試験で「正しい」とされたもの)

①燃焼域・燃焼ガスの酸素濃度を低くする

②燃焼温度を低くし、特に局所的な高温域をつくらない

③高温燃焼域に燃焼ガスがとどまる時間を短くする

④窒素(窒素化合物)の少ない燃料を使う

⑤排ガス再循環法・二段燃焼法・濃淡燃焼法で燃やす

⑥排煙脱硝装置を設けて、排ガスからNOxを取り除く

⚠ 注意

NOxの問題で誤りとして出るのは、どれもNOxを増やす方向の記述です。「空気予熱器を設けて燃焼温度を高くする」(令和6年10月・令和8年10月公表)。「高温燃焼域の滞留時間を長くする」(令和7年4月公表)。「酸素濃度を高くする」(令和7年10月公表)。

💡 覚え方

NOxを減らす3つの「低」=低温・低酸素・短時間。第7回で空気予熱器を付けるとNOxが増えることがあると学んだのは、空気を温めて燃焼温度が上がるからでした。

🤔 排ガス再循環法・二段燃焼法・濃淡燃焼法とは、何をしているのですか。

どれも炎の温度や酸素の濃さを下げる工夫です。排ガス再循環は、酸素の少ない排ガスを燃焼用空気に混ぜて温度と酸素を下げる方法。二段燃焼は、空気を2回に分けて送り、一度に高温にならないようにする方法。濃淡燃焼は、燃料の濃い所と薄い所をつくり、どちらも高温になりすぎないようにする方法です。

燃料によって、出る汚染物質が違う

燃料 汚染物質の出方
都市ガス SOxは出さない。NOxやCO2も液体燃料より少ない。すすも出にくい
重油 硫黄分からSOx、燃え残りからすす・ばいじんが出る
石炭 灰分が多く、ばいじんが多い。重油よりばいじんの発生が多い

第14回で学んだとおり、気体燃料は硫黄分や灰分が少ないので、汚染物質の面でいちばん有利です。重油は石炭よりばいじんが少ないことも、石炭との比較問題で正しいとされました。

🤔 すす・ばいじん・ダストは、どう違うのですか。

すすは、燃料の炭素が燃え切らずに残った黒い粒です。ダストは、燃料の灰分などからできる粒。ばいじんは、排ガスに含まれるすすやダストなどの固体の粒をまとめた呼び方です。試験ではすすとダストの説明の入れ替えに注意してください。

重油に含まれる水分とスラッジの障害

原因 起きる障害
水分が多い 熱損失が増える/いきづき燃焼を起こす/貯蔵中にスラッジを形成する
スラッジ 弁・ろ過器・バーナチップなどを詰まらせる(閉塞)/ポンプ・流量計・バーナチップなどをすり減らす(摩耗)

⚠ 注意

「水分が多いと炭化物が生成される」(令和5年10月公表)は誤り。「水分が多いとベーパロックを起こす」(令和7年10月・令和8年10月公表)も誤りです。ベーパロックは、第14回で学んだとおり加熱温度が高すぎて油が気化することで起きます。炭化物も、第14回では加熱温度が高すぎるときの原因として出てきました(令和2年4月公表)。

🤔 水分が多いと、なぜいきづき燃焼になるのですか。

油の中に水が混じっていると、バーナから出る油に水のかたまりが混じる瞬間が出てくるのです。その瞬間だけ燃える油が途切れたり、水が急に蒸発したりします。そのため炎が息をするようにふくらんだり縮んだりして、不安定になるのです。

スラッジは水分と一緒に、貯蔵タンクの底にたまりやすいものです。第14回で、貯蔵タンクの油取出し管は底から20〜30cm上に付けると学びました。これは、底にたまった水やスラッジを吸い込まないための決まりです。油ストレーナ(ごみを取る網)も、スラッジがバーナまで届くのを防ぐ役目を持っています。

重油の成分が起こす影響

成分 影響
残留炭素分 多いほどばいじんが増える
硫黄分 JISの重油の分類で主要な要素。燃えてSOxになり、低温腐食の原因になる
灰分 伝熱面に付いて伝熱をさまたげる。ただし重油の灰分は石炭に比べてきわめて少ない

⚠ 注意

硫黄分の量を問う記述は、どちらも誤りとされました。「質量の10%前後を構成する」(令和7年4月公表)と、「C重油1号で5%以下」(令和8年4月公表)です。「硫黄分はボイラーの伝熱面に高温腐食を起こす」(令和7年4月公表)も誤りで、硫黄分が起こすのは低温腐食です。「灰分はボイラーの伝熱を良好にする」(令和8年4月公表)も、当然誤りです。

JISの重油の分類と硫黄分

重油の規格はJIS K 2205で決められています。重油は動粘度(粘り気の強さ)で3つに分かれるのです。1種=A重油、2種=B重油、3種=C重油です。

さらに1種は硫黄分で1号・2号に、3種は動粘度で1号〜3号に分かれます。このように硫黄分は、JISの分類に使われている要素の1つです。

そして3種(C重油)1号の硫黄分は、質量3.5%以下と決められています。「C重油1号で5%以下」は、この3.5%と数字が合わないので誤りです。

高温腐食:高温部で起きる別の腐食

低温腐食と対になるのが高温腐食です。重油の灰に含まれるバナジウムなどの化合物が、過熱器のような高温の伝熱面に付いて溶け、金属を傷める腐食です。

試験では「硫黄分は高温腐食を起こす」という誤りが出ました。硫黄=低温腐食、バナジウム=高温腐食と、原因と場所をセットで区別しておきましょう。

SOxとばいじんを減らす方法

減らしたいもの 主な方法
SOx 硫黄分の少ない燃料を使う/排ガスから取り除く排煙脱硫装置を設ける
すす・ばいじん 完全燃焼させる(空気比・霧化・混合を適正に)/排ガスから取り除く集じん装置を設ける

NOxは燃やし方の工夫と脱硝装置、SOxは燃料選びと脱硫装置、ばいじんは完全燃焼と集じん装置。出さない工夫(燃やし方・燃料)と、出たものを取る装置の2段構えで考えるのが基本です。

低温腐食:冷えた所で硫酸ができる

低温腐食とは?

燃料の硫黄からできた硫酸が、温度の低い伝熱面で結露して金属を腐らせること。エコノマイザや空気予熱器など、排ガスの温度が下がる場所で起きやすい腐食です。

低温腐食が起きるまで

①燃料の硫黄が燃えてSO2(二酸化硫黄)になる

②その一部が、さらに酸素と結びついてSO3(三酸化硫黄)になる

③SO3が燃焼ガス中の水蒸気と結びついて硫酸になる

④伝熱面の温度が、硫酸を含むガスの露点(結露し始める温度)より低いと、硫酸が結露して腐食する

④のとおり、結露するかどうかを決めるのは、ガスの温度ではなく、ガスが触れる伝熱面の温度です。エコノマイザの管の表面温度は、中を流れる給水の温度に左右されます。一級ボイラー技士の公表問題で、正しい記述とされた内容です。

そのため、ガスが熱くても、給水が冷たければ管の表面は冷え、露点を下回れば結露します。防ぐには、給水温度を上げて表面温度を高く保つことが大切なのです。

低温腐食を防ぐ方法(試験で「正しい」とされたもの)

①硫黄分の少ない重油を選ぶ

②低温の伝熱面に腐食に強い材料を使う

③給水温度を上げて、エコノマイザの伝熱面の温度を高く保つ

④蒸気式空気予熱器を使って、ガス式空気予熱器の伝熱面が冷えすぎないようにする

⑤燃焼室や煙道への空気の漏れ込みを防ぎ、煙道ガスの温度が下がらないようにする

⑥燃焼ガスの酸素濃度を下げてSO2からSO3への変化を抑え、露点を下げる

⑦重油に添加剤を加えて、燃焼ガスの露点を下げる

⚠ 注意

向きの入れ替えに注意しましょう。「給水温度を下げ、エコノマイザの伝熱面を低く保つ」(令和8年4月公表)は誤り。「酸素を下げてSO3への転換を抑え、露点を上げる」(令和6年10月公表)も誤りで、正しくは露点を下げるです。

⚠ 注意

令和4年4月公表の組合せ問題で正しかったのは、⑤の空気の漏れ込みを防ぐでした。残りの3つの記述は、どれも誤りです。「燃焼ガス中の酸素濃度を上げる」(正しくは下げる)。「燃焼ガス温度を、給水温度にかかわらず、露点以上に高くする」(伝熱面の温度は給水温度に左右される)。「重油に添加剤を加え、燃焼ガスの露点を上げる」(正しくは下げる)。

💡 覚え方

低温腐食は「冷えた窓ガラスの結露」と同じ考え方です。面を温める(給水温度を上げる・空気の漏れ込みを防ぐ)か、結露しにくくする(露点を下げる・硫黄を減らす)か。防ぐ方法は、この2方向に整理できます。

練習問題:汚染物質と腐食

答えと考え方

①「サーマルNOxは、燃料中の窒素化合物が酸化してできる」 → 誤り(それはフューエルNOx。サーマルは空気中の窒素)

②「NOxを減らすため、燃焼ガス中の酸素濃度を低くする」 → 正しい

③「スラッジは、ポンプやバーナチップを摩耗させる」 → 正しい

④「低温腐食を防ぐため、エコノマイザの給水温度を下げる」 → 誤り(上げて伝熱面を温める)

⑤「SOxは、NOxとともに酸性雨の原因となる」 → 正しい

硫黄分の多い燃料ほど、SOxも低温腐食も増える——つまり大気にも装置にも悪いのが硫黄分です。どちらの問題でも「硫黄分の少ない燃料を選ぶ」が正しい対策として出てくるので、まとめて覚えておきましょう。

試験ではこう出る

よくある記述 判断
排ガス中のNOxは、大部分がNOである 正しい
フューエルNOxは、燃料中の窒素化合物が酸化されて生じる 正しい
空気予熱器を設けて燃焼温度を高くし、NOxを抑える 誤り。温度が上がり増える
二段燃焼法・濃淡燃焼法はNOxの抑制方法である 正しい
重油の水分が多いと、いきづき燃焼を起こす 正しい
重油の水分が多いと、油管内でベーパロックを起こす 誤り
残留炭素分が多いほど、ばいじん量は増加する 正しい
給水温度を上げて、エコノマイザの伝熱面の温度を高く保つ 正しい(低温腐食の防止)
燃焼ガス温度を、給水温度にかかわらず、露点以上に高くする 誤り。伝熱面の温度は給水温度に左右される
低温腐食を防ぐため、燃焼ガス中の酸素濃度を上げる 誤り。下げる

出典:安全衛生技術試験協会 二級ボイラー技士 公表試験問題(令和2年4月〜令和8年10月公表)。エコノマイザの表面温度は一級ボイラー技士の公表問題も参照し、ゼロパスが要点を整理しました。

よくある質問

Q. NOxを減らすと、ほかに困ることはありますか。

A. 燃焼温度や酸素を下げすぎると、不完全燃焼になってすすやCOが増えることがあります。NOxを抑えつつ完全燃焼も保つという、ちょうどよいところを探すのが燃焼管理の難しいところです。

Q. 露点を下げると、なぜ低温腐食が防げるのですか。

A. 露点とは、ガスの中の硫酸や水が結露し始める温度です。露点が低ければ、伝熱面がかなり冷えるまで結露しないので、硫酸が付きにくくなります。結露しなければ、腐食も起きにくいという考え方です。

Q. なぜエコノマイザや空気予熱器で、低温腐食が起きやすいのですか。

A. どちらも、熱を取り戻すために排ガスの温度を下げる装置だからです(第7回)。ガスの温度が下がる最後のほうに置かれるので、露点を下回りやすい場所になります。

まとめ

・NOxは大部分NO、SOxは大部分SO2。すす=炭素の燃え残り、ダスト=灰

・NOxを減らす=低温・低酸素・短時間+窒素の少ない燃料・排ガス再循環・二段燃焼・濃淡燃焼・脱硝装置

・重油の水分=熱損失・いきづき燃焼・スラッジ。スラッジ=閉塞と摩耗

・硫黄分→低温腐食(高温腐食ではない)。残留炭素分→ばいじん

・低温腐食の防止=面を温める・露点を下げる・硫黄を減らす・耐食材料

・結露を決めるのは伝熱面の温度。エコノマイザの表面温度は給水温度に左右されるので、ガス温度だけ上げても足りない

・硫黄=低温腐食、バナジウム=高温腐食。SOx対策は脱硫装置、ばいじん対策は集じん装置