第8章 施工管理 | 第53回 | 目次を見る:1級 / 2級

この記事でわかること

  • 工事価格の内訳がわかります
  • 直接費と間接費のちがいがわかります
  • 歩掛かりが何を表しているかがわかります
  • 実行予算と見積りの関係がわかります

原価管理は出題数は多くありませんが、用語の意味を問う問題が確実に出ます。お金の流れの全体像をつかんでおきましょう。

工事価格の内訳

工事費の内訳を入れ子の四角で表した図。いちばん内側の直接工事費から、共通仮設費・現場管理費・一般管理費等・消費税と外へ広がっていくことを示している。
いちばん内側が「実際にモノを作るお金」。外へ行くほど、現場や会社を動かすお金が足されます。
区分 中身
直接工事費 材料費・労務費・直接経費(その工事に直接かかるお金)
共通仮設費 現場事務所・仮設電気・運搬など
現場管理費 現場の人件費・保険料・事務用品など
一般管理費等 本社の経費と利益
  • 純工事費 = 直接工事費 + 共通仮設費
  • 工事原価 = 純工事費 + 現場管理費
  • 工事価格 = 工事原価 + 一般管理費等
  • 工事費 = 工事価格 + 消費税

💡 覚え方

「直接 → 純 → 原価 → 価格 → 工事費」と外側へ広がっていくと覚えます。いちばん内側が「実際にモノを作るお金」で、外へ行くほど「まわりを支えるお金」になります。

直接費と間接費

直接費とは?

その工事のためだけに使ったと、はっきり分かるお金です。配管の材料費、その工事に入った職人の労務費など。

間接費とは?

複数の工事に共通してかかり、どれにいくらとは分けにくいお金です。現場事務所の家賃、本社の経費など。

工期と費用の関係(重要)

  • 工期を短くすると、直接費は増える … 残業代・応援・機械の増強がいるため。
  • 工期を長くすると、間接費は増える … 現場事務所や管理者を長く置くため。
  • 両方を足した総費用がいちばん小さくなる工期=最適工期(経済速度)。

🔰 簡単なたとえ

引っ越しにたとえると、1日で終わらせようとすると人をたくさん雇う(直接費増)。1か月かけると、その間ずっと二重に家賃を払う(間接費増)。どこかにちょうどいい日数がある——それが最適工期です。

歩掛かり(ぶがかり)

歩掛かりとは?

ある作業を1単位するのに、どれだけの人手や材料がいるかを表した数字です。例=「配管100Aの敷設は、1mあたり0.3人日」。

  • 数量 × 歩掛かり = 必要な人工(にんく)
  • 必要な人工 × 労務単価 = 労務費
  • 数量 × 材料単価 = 材料費
  • 例 100Aの配管を200m敷設する。歩掛かりは1mあたり0.3人日、労務単価は1人日あたり25,000円。労務費は?
  • ① 必要な人工 200 × 0.3 = 60人日
  • ② 労務費 60 × 25,000 = 1,500,000円

なぜ歩掛かりが必要なのか?

「勘」で見積もると、人によってばらばらになるからです。過去の実績を数字にしておけば、誰が計算しても同じ答えになります。公共工事では、国や自治体が標準の歩掛かりを公表しており、それをもとに予定価格が決まります。

実行予算

実行予算とは?

受注したあとに、社内で立てる「実際に使ってよいお金」の計画です。見積り(受注のための金額)とは別物です。

見積り 実行予算
目的 受注するため 利益を出すため
いつ 受注前 受注後・着工前
相手 発注者 社内
中身 標準的な単価 実際に手配できる単価

💡 覚え方

「見積りは外向き、実行予算は内向き」。実行予算は受注金額より低く組みます。その差が利益になるからです。

原価管理の流れ

  • ①実行予算を立てる
  • ②実際に使ったお金(実績原価)を記録する
  • ③予算と実績を比べる
  • ④差が出た原因を調べ、手を打つ
  • → これもPDCAです(第51回)。

コストダウンの考え方

工期を横軸、費用を縦軸にしたグラフ。工期を短くすると直接費がふえ、長くすると間接費がふえ、その合計である総費用がいちばん小さくなる点が最適工期であることを示している。
工期は短すぎても長すぎても原価が上がります。総費用が最小になる工期が最適工期です。
  • VE(バリューエンジニアリング) … 機能を落とさずにコストを下げる/同じコストで機能を上げる
  • プレハブ化・ユニット化 … 現場での手間を工場に移す
  • 材料のロスを減らす … 定尺を活かした割付け
  • 手待ち・手戻りをなくす … 段取りと総合図(第48回)が効く

VEの基本の考え方

価値(V)= 機能(F)÷ コスト(C)という式で考えます。コストを下げるか、機能を上げるかで、価値が上がります。「安かろう悪かろう」はVEではありません——機能を落とさないのが条件です。

試験ではこう出る

  • ①内訳 … 「工事原価は、純工事費と現場管理費の合計である」→正しい。
  • ②直接費と間接費 … 「工期を短縮すると、間接費は増加する」→誤り。直接費が増えます。
  • ③最適工期 … 「直接費と間接費の和が最小となる工期を、最適工期という」→正しい。
  • ④実行予算 … 「実行予算は、発注者に提出するものである」→誤り。社内用です。
  • ⑤VE … 「VEは、機能を低下させてもコストを下げる手法である」→誤り。

よくある質問

Q.「人日(にんにち)」「人工(にんく)」とは何ですか?

A.1人が1日働く量を1人日(1人工)といいます。3人が2日働けば6人日です。作業量を、人数と日数に分けて考えられるので、「人を増やせば日数が減る」といった検討ができます。ただし人を増やしても比例して早くならない作業もあるので、計算どおりにはいきません。

Q.材料費を安くすれば、原価は下がりますか?

A.単純にはそうなりません。安い材料は加工に手間がかかったり、不良が出て手戻りになったりすることがあります。原価は「材料費+労務費+手直しの費用」で見るのが正しく、これがVEの発想です。

Q.原価管理と工程管理は、どちらを優先しますか?

A.どちらも同じくらい大事で、たがいに影響し合います。工程が遅れれば間接費が増え、急げば直接費が増えます。ただし、安全だけは常に最優先です(第48回)。「安全 > 品質・工程・原価」という順位だけは動きません。

このページのまとめ

  • 直接工事費 → 純工事費 → 工事原価 → 工事価格と外へ広がる
  • 工期を短くすると直接費が増え、長くすると間接費が増える
  • 両方の和が最小になるのが最適工期
  • 歩掛かり=1単位あたりに必要な人手や材料
  • 見積りは外向き(受注用)、実行予算は内向き(社内用)
  • VE=価値 = 機能 ÷ コスト。機能は落とさない