第2章 水と流れのきほん | 第10回 | 目次を見る:1級 / 2級

この記事でわかること

  • ベルヌーイの定理が何を言っているかわかります
  • 位置・圧力・速度の3つのエネルギーの関係がわかります
  • 圧力損失がなぜ起きるかがわかります
  • 管径と流速と圧力損失の関係がわかります

流体の分野はこの1回にほとんどが集約されています。ポンプ(第11回)もキャビテーション(第12回)も水撃(第13回)も、ここが土台です。

ベルヌーイの定理

管の太い所と細い所で、位置・圧力・速度の3つのエネルギーの合計が変わらないことを示した図
立ち上がり管の水の高さが、その場所の圧力です

ベルヌーイの定理とは?

摩擦がないと考えたとき、流れの中では「位置」「圧力」「速度」の3つのエネルギーの合計がいつも一定になるという法則です。

  • 位置水頭 + 圧力水頭 + 速度水頭 = 一定
  • 位置水頭 … z(高さ[m])
  • 圧力水頭 … p ÷ (ρg)(圧力を高さに直したもの[m])
  • 速度水頭 … v² ÷ (2g)(速さを高さに直したもの[m])

🔰 簡単なたとえ

滑り台を思い浮かべてください。上にいるときは高さのエネルギーだけ。滑り降りると高さが減って、そのぶん速さになります。合計は変わりません。水も同じで、高さ・圧力・速さのあいだでエネルギーが姿を変えているだけです。

💡 覚え方

「3つの合計はいつも同じ。だから、どれかが増えれば、どれかが減る」。速くなれば圧力が下がる——この一点が、キャビテーション(第12回)の原因にもベンチュリ管のしくみにもつながります。

管が細くなると、速くなって圧力が下がる

連続の式

流量Q = 断面積A × 流速v。流量が同じなら、断面積が小さいほど流速は速くなります。

  • 例 同じ流量で、断面積が半分になると?
  • 流速は2倍になります。
  • ベルヌーイより、速度水頭は v² に比例するので4倍。
  • その分圧力水頭が下がります。

ここが効いてくる場面

  • ポンプの吸込み口 … 速くなって圧力が下がりすぎると、水が沸騰して気泡ができる=キャビテーション(第12回)。
  • 絞り弁・オリフィス … わざと絞って圧力差を作り、流量を測る。
  • クロスコネクション対策 … 圧力が下がると、汚れた水が吸い込まれる(逆サイホン)(第28回)。

圧力損失──実際には摩擦がある

流速を2倍にすると圧力損失が4倍になることを棒グラフで示した図
圧力損失は流速の2乗で効きます。速く流すほど急に苦しくなります

圧力損失とは?

管の中を流れるあいだに、摩擦などで失われるエネルギーのことです。これがあるから、ポンプで押してやる必要があります。

区分 原因 よび名
直管部の損失 管の内面との摩擦 摩擦損失(主損失)
局部の損失 曲がり・分岐・弁・断面の変化 局部損失(従損失)

ダルシー・ワイスバッハの式

圧力損失 h = λ ×(L ÷ d)×(v² ÷ 2g)
λ=管摩擦係数、L=管の長さ、d=管の内径、v=流速

式を丸暗記する必要はありません。「何が増えると損失がどうなるか」だけ押さえてください。

大きくなるもの 圧力損失は
管の長さ L 比例して増える
流速 v 2乗で増える
管摩擦係数 λ(管が古い・粗い) 増える
管の内径 d 減る(反比例)

💡 覚え方

「流速の2乗で効く」のがいちばん大事です。流速を2倍にすると、損失は4倍。だから管を細くして流速を上げると、ポンプの動力が一気に増えます。管を太くするのは、材料費は上がるが電気代が下がる——これが設計のトレードオフです。

局部損失の考え方

  • 相当長(等価長)で表すことが多い … 「この弁は、直管〇mぶんの損失と同じ」という言い方。
  • 曲がりが多い・弁が多い配管ほど損失が大きい。
  • 玉形弁は仕切弁よりずっと損失が大きい(第43回)。

ポンプの揚程との関係

  • 全揚程 = 実揚程 + 配管の全圧力損失
  • 実揚程 … 実際に水を持ち上げる高さ
  • 全圧力損失 … 直管の摩擦損失 + 局部損失

なぜ実揚程だけでは足りないのか?

配管の中で、摩擦にエネルギーを取られるからです。10m持ち上げたいからといって10m分の力だけ与えても、途中で摩擦に食われて、届きません。「持ち上げる分」+「摩擦で失う分」の両方をポンプが出す必要があります。

流速の目安

配管 流速の目安 理由
給水(一般) 0.9〜1.5m/s 速すぎると騒音とウォーターハンマー
給湯の循環 1.2m/s以下 銅管のかい食を防ぐ(第42回)
排水(横引き) 0.6〜1.5m/s 遅いと固形物がたまり、速いと水だけ先に行く

💡 覚え方

「速すぎると壊れる・うるさい、遅すぎるとたまる」。流速には上限だけでなく下限もあるのが排水配管の特徴です。

試験ではこう出る

  • ①ベルヌーイ … 「流速が増加すると、静圧は低下する」→正しい。
  • ②圧力損失と流速 … 「圧力損失は流速に比例する」→誤り。流速の2乗に比例します。
  • ③管径 … 「管径を大きくすると、圧力損失は小さくなる」→正しい。
  • ④局部損失 … 「弁や継手による損失は、相当長に置き換えて計算できる」→正しい。
  • ⑤全揚程 … 「ポンプの全揚程は、実揚程と配管の圧力損失の和である」→正しい。

よくある質問

Q.「水頭(すいとう)」とは何ですか?

A.エネルギーを「水の高さ」で表したものです。圧力も速さも、「何mぶんの水の高さに相当するか」に直すと、ぜんぶ足し算できます。単位がmにそろうので比べやすく、ポンプの性能もm(メートル)で表すのはこのためです。

Q.管摩擦係数λは、どうやって決まるのですか?

A.レイノルズ数と、管内面の粗さで決まります(第9回)。層流ではλ=64÷Reという簡単な式になりますが、乱流では線図(ムーディ線図)や実験式から求めます。実務ではヘーゼン・ウィリアムスの式や流量線図を使って直接読み取ることがほとんどです。

Q.古い管はなぜ流れが悪くなるのですか?

A.内面がさびて粗くなり、さらにスケールが付いて内径が小さくなるからです。λが大きくなる(粗い)+dが小さくなる(詰まる)で、圧力損失が二重に増えます。だからライニング管や樹脂管で内面を守ることに意味があるのです(第42回)。

このページのまとめ

  • 位置+圧力+速度のエネルギーの合計は一定(ベルヌーイ)
  • 流量Q = 断面積A × 流速v。細くなれば速くなる
  • 速くなれば圧力は下がる(キャビテーション・逆サイホンの原因)
  • 圧力損失は、長さに比例・流速の2乗に比例・内径に反比例
  • 全揚程 = 実揚程 + 圧力損失
  • 給水は0.9〜1.5m/s、給湯循環は1.2m/s以下