第7章 材料と施工 | 第44回 | 目次を見る:1級 / 2級

この記事でわかること

  • 保温・保冷・防露の目的のちがいがわかります
  • 保温材の種類と使える温度がわかります
  • 施工の順番(保温筒→補助材→外装)がわかります
  • 防湿層を「どちら側」に入れるかがわかります

保温は「熱を逃がさない」だけの話ではありません。冷たい配管では、結露を防ぐことが主目的になります。この違いが分かると、施工方法の理由も見えてきます。

保温・保冷・防露は目的が違う

保温と保冷の断面をならべた図。保温は熱が中から外へ逃げるのを保温材でせき止め、保冷は熱が外から中へ入るのを保温材と防湿層で止めることを、矢印の向きで示している。
保温は「熱いものから熱を逃がさない」、保冷は「冷たいものに熱を入れない」。熱の向きが逆です。
対象 目的
保温 熱いもの(蒸気・温水・給湯) 熱を逃がさない・やけどを防ぐ
保冷 冷たいもの(冷水・冷媒) 熱の侵入を防ぐ+結露を防ぐ
防露 冷たいもの 結露させないことが主目的

なぜ冷たい配管は結露するのか?

まわりの空気が、露点温度より冷やされるからです(第3回)。冷水管の表面が7℃、部屋の露点温度が15℃なら、管に触れた空気は水蒸気を持ちきれず、水滴になります。保温材で表面温度を露点より高く保てば、結露しません。

💡 覚え方

「保温は中の熱を守る、保冷・防露は外から守る」。守る向きが逆なので、防湿層を入れる位置も逆になります(後述)。

保温材の種類

保温材 使用温度の目安 特徴
グラスウール 350℃程度まで 安い・軽い・加工しやすい/水に弱い
ロックウール 600℃程度まで 耐熱性が高い/グラスウールより重い
けいさんカルシウム 650℃程度まで 高温用・機械的強度が高い/重い
ポリスチレンフォーム 70〜80℃程度まで 吸水しにくい=保冷に向く
ポリエチレンフォーム 80℃程度まで 柔らかく施工しやすい/保冷に向く
硬質ウレタンフォーム 100℃程度まで 断熱性能が最も高い/燃えやすい

💡 覚え方

「グラス350・ロック600・けいカル650」と「発泡系は70〜100℃止まり」。繊維系=高温に強い/発泡系=水に強いという対比で覚えると、用途の判断ができます。

保冷には発泡系を使う理由

  • グラスウールは水を吸うと、断熱性能がほぼゼロになる。
  • 保冷では結露水が出る前提なので、吸水しにくい材料でなければなりません。
  • ポリスチレン・ポリエチレン・ウレタンは独立気泡で水を吸いにくく、保冷に向きます。

施工の順番

  • ①保温筒・保温板を巻く … 継目は同一線上に並べない(千鳥にする)
  • ②補助材でとめる … 鉄線・ステープル・粘着テープ
  • ③防湿層(保冷の場合)
  • ④外装材を巻く … 亜鉛鉄板・ステンレス鋼板・アルミガラスクロス・カラー鉄板・ポリエチレンフィルム

巻き方の決まり

  • 外装材は、下から上へ巻き上げる … 水が継目に入らないように(屋根瓦と同じ考え方)。
  • 水平の管は、重ね部分を下向きにする。
  • 継目は千鳥にする … まっすぐ並ぶと、そこが熱と水の通り道になるため。
  • 鉄線の巻き数 … 保温筒1本につき2か所以上(呼び径により異なる)。

防湿層は「暖かい側」に入れる

冷水管の層のならびを正しい例とまちがいの例でくらべた図。防湿層が外側にあると水蒸気が入口で止まり、内側にあると水蒸気が保温材の中まで入ってぬれてしまうことを示している。
防湿層が外側なら水蒸気を入口で止められます。内側だと保温材がぬれて、断熱がきかなくなります。

防湿層とは?

水蒸気が保温材の中に入り込むのを防ぐ層です。アスファルトフェルト・ポリエチレンフィルムなどを使います。

なぜ「暖かい側」なのか?

水蒸気は、暖かいほうから冷たいほうへ移動するからです。冷水管なら外の空気が暖かく、管が冷たい。つまり水蒸気は外から内へ入ろうとします。だから防湿層は保温材の外側(暖かい側)に入れて、入口でせき止めるのです。内側に入れても、もう手遅れです。

保温と保冷で逆になる

  • 保冷(冷水・冷媒) … 防湿層は保温材の外側(暖かい側)。
  • 保温(蒸気・温水) … 防湿層は不要。管が暖かいので、水蒸気は内から外へ抜けていくだけです。
  • 保冷では、支持部にも断熱材を入れる … 金属の支持金具が熱橋(ヒートブリッジ)になってそこだけ結露するのを防ぐため。

🔰 簡単なたとえ

保冷の配管を、冷たいペットボトルだと思ってください。タオルを巻いても、タオルの外側にラップを巻かなければ、タオルが湿ってびしょびしょになります。ラップ=防湿層で、外側に巻くから意味があるのです。

保温をしてはいけない所

  • ポンプ・弁の周囲で、点検・操作の妨げになる所
  • フランジ・ユニオンの前後 … 取り外しができるよう、そこだけ外せる形(脱着式)にする
  • 温度計・圧力計の取り付け部
  • スプリンクラーヘッド・煙感知器のまわり
  • 排水管(一般には保温しない) … ただし結露するおそれのある所は防露する

試験ではこう出る

  • ①保冷の材料 … 「保冷にはグラスウールが適している」→誤り。吸水しにくい発泡系を使います。
  • ②防湿層の位置 … 「保冷の防湿層は、保温材の内側(管側)に設ける」→誤り。外側。
  • ③外装の巻き方 … 「外装材は上から下へ巻き下げる」→誤り。下から上へ。
  • ④継目 … 「保温筒の継目は、同一線上に揃える」→誤り。千鳥にします。
  • ⑤使用温度 … 「ロックウールはグラスウールより高い温度に使える」→正しい。
  • ⑥支持部 … 「保冷配管の支持部には断熱材を挿入する」→正しい。

よくある質問

Q.保温の厚さは、どうやって決めるのですか?

A.保温では「熱の損失をいくらに抑えるか」、保冷では「表面温度が露点より高くなるか」から決めます。実務では公共建築工事標準仕様書などの表を使い、管の呼び径と流体の温度で厚さが決まります。試験で厚さの数値まで問われることは少ないので、決め方の考え方を押さえてください。

Q.「熱橋(ヒートブリッジ)」とは何ですか?

A.断熱の途切れたところが、熱の通り道(橋)になることです。保冷配管を吊っている金属の支持金具は、熱をよく伝えるので、そこだけ冷えて結露します。だから支持部に断熱材(木製の受け材など)を挟むのです。建築でも鉄骨や梁が熱橋になることが問題になります。

Q.屋外の保温で、外装材に何を使いますか?

A.雨に耐えるもの——亜鉛鉄板・カラー鉄板・ステンレス鋼板が使われます。アルミガラスクロスは屋内向けで、屋外では雨で劣化します。また継目のシール(コーキング)をきちんと行わないと、中に水が入って保温材が使えなくなります。

このページのまとめ

  • 保温=熱を逃がさない/保冷・防露=熱の侵入と結露を防ぐ
  • 繊維系(グラス350・ロック600・けいカル650)は高温に強い
  • 発泡系(70〜100℃)は吸水しにくく保冷向き
  • グラスウールは水を吸うと断熱性能を失う
  • 継目は千鳥、外装は下から上へ巻き上げる
  • 防湿層は暖かい側(保冷なら保温材の外側)
  • 保冷の支持部には断熱材を入れる(熱橋対策)