第2章 電気を配る | 第6回 | 学習カリキュラムの目次を見る

前の回で、電気を家まで配る3つの方式を見ました。この回では、その配線をするときに必ず考える電圧降下を扱います。

電線にも、わずかですが抵抗があります。そのため、電源から遠くへ行くほど電圧が下がっていきます。100Vで送り出したのに、末端では97Vしか来ていない——そういうことが実際に起きるのです。

過去問の問1〜10でも、たびたび顔を出すテーマです。覚える式は3つだけなので、ここできちんと整理しておきましょう。

電圧降下は「電線の抵抗で失われる電圧」

電圧降下=電線の抵抗で、届くころには電圧が下がる同じ電線でも、長いほど・電流が大きいほど下がります電源100V負荷97V電線の抵抗で 3V ぶん失われる電圧降下 = 電流 × 電線の抵抗(×本数)単相2線式は行き帰りで2本ぶん → e = 2 × I × r長さが2倍になれば、電圧降下も2倍になります
電線にも抵抗があるので、末端に届くころには電圧が下がっています。これが電圧降下です。

用語電圧降下とは?

電圧降下とは、電線の抵抗によって、送り出した電圧より末端の電圧が低くなることです。記号はeで表し、単位は電圧と同じV(ボルト)です。

なぜ?なぜ電線でも電圧が下がるのか?

電線にも抵抗があるからです。第1回で学んだオームの法則のとおり、抵抗に電流が流れれば、そこで電圧が使われます。電線は抵抗が小さいので少しずつですが、長い距離を流れるあいだに、無視できない大きさになります。

もう少しかみくだくと、こういうことです。電圧は「電気を押す力」でした。電線という細い道を通るあいだに、その押す力が少しずつ使われてしまい、ゴールに着くころには弱くなっている——それが電圧降下です。

覚える電圧降下が大きくなる3つの条件

電線が長い … 長さに比例して抵抗が増えます。距離が2倍なら、電圧降下も2倍。

電線が細い … 断面積(電線を輪切りにした面の広さ)が小さいほど抵抗が増えます。1.6mmより2.0mmのほうが、電圧降下は小さくなります。

電流が大きい … 流れる電流に比例します。同じ配線でも、たくさんの機器を使えば電圧降下は増えます。

覚える覚え方

水道のホースで考えると分かりやすいです。ホースが長いほど、細いほど、水をたくさん出そうとするほど、先端の勢いは弱くなります。電気もまったく同じで、長い・細い・たくさん流す、の3つで弱くなります。

配線方式で、かけ算する数が変わる

電圧降下の考え方はどの配線でも同じですが、「何本ぶんの電線で電圧が下がるか」が方式によって変わります。覚えるのは2・1・√3の3つだけです。

配線方式で、かけ算する本数が変わる式の形はどれも「電流×抵抗×何か」です2単相2線式 e = 2 I r行きと帰りで2本ぶん1単相3線式 e = I r中性線に電流が流れない前提で1本ぶん√3三相3線式 e = √3 I r三相は√3をかける
覚えるのは「2・1・√3」の3つだけ。どれも 電流×1本あたりの抵抗 にこれをかけます。

なぜ?なぜ単相2線式だけ「2倍」なのか?

電気は行って帰ってくるからです。単相2線式は2本の電線で行きと帰りを作っているので、往復2本ぶんの抵抗で電圧が下がります。

では単相3線式で「1倍」なのはなぜか?
単相3線式は中性線をはさんで、上下の負荷(電気を使う機器)が釣り合っていることを前提にします。バランスが取れていれば中性線には電流が流れません。そのため、片道1本ぶんだけを数えればよいことになります。

注意単相3線式の注意

「1倍」でよいのは上下のバランスが取れている(平衡している)ときだけです。

片方にだけ機器が集中していると中性線にも電流が流れ、その分だけ電圧降下が増えます。

試験では「平衡負荷」「バランスがとれている」といった条件が書かれていることが多いので、問題文をよく読んでください。

計算例① 単相2線式

1問題 電線1本の抵抗が0.15Ω、流れる電流が10Aの単相2線式回路。電圧降下は何Vか。

2単相2線式なので、式は e = 2 × I × r

3数字を入れる e = 2 × 10 × 0.15

4順に計算 2 × 10 = 20 → 20 × 0.15 = 3V

5答え:3V(送り出しが100Vなら、末端の電圧は97V)

計算例② 三相3線式

1問題 電線1本の抵抗が0.1Ω、線電流が20Aの三相3線式回路。電圧降下は約何Vか。(√3=1.73)

2三相3線式なので、式は e = √3 × I × r

3数字を入れる e = 1.73 × 20 × 0.1

4順に計算 1.73 × 20 = 34.6 → 34.6 × 0.1 = 約3.5V

5答え:約3.5V

覚える覚え方

「単2は2、単3は1、三相は√3」。配線の呼び名の順に2・1・√3と並べて覚えると、混同しにくくなります。

電圧が下がりすぎると、何が困るのか

電圧が下がりすぎたときに起こることを、照明・モーター・ヒーターの3つで示した図。照明は暗くなり、モーターは回りにくくなって発熱し、ヒーターは熱が出にくくなる
電圧が下がると、機器は本来の力を出せません。

電圧が下がると、機器は本来の力を出せなくなります。

例電圧不足で起きること

照明が暗くなる … 電球は電圧の2乗で明るさが変わるので、少し下がっただけでも目に見えて暗くなります。

モーターの力が落ちる … 回転が弱くなり、それを補おうとして電流が増え、モーターが熱を持って傷むことがあります。

ヒーターが温まらない … 発熱量も電圧の2乗に比例して減ります。

そのため、電圧降下は一定の範囲に収まるように配線を設計します。一般には電圧の2〜3%程度までを目安にすることが多く、100Vなら2〜3V以内、ということになります。

例電圧降下を小さくする3つの方法

電線を太くする … いちばん確実。1.6mm→2.0mmにすると抵抗が減ります。

配線を短くする … 分電盤(家の電気を各回路に分ける箱)を負荷の近くに置く、という設計上の工夫。

電圧の高い方式にする … 同じ電力なら電圧が高いほど電流が小さくなるので、電圧降下も小さくなります。

過去問では、こう出る

例出題のされ方

①電圧降下を計算する … 「こう長◯m、電流◯A、電線1本の抵抗◯Ω」から e を求める。基本となる形です。

②末端の電圧を求める … 電圧降下を出したあと、送り出しの電圧から引く。ここまで求めさせる問題も出ます。

③配線方式を変えたら … 「単相2線式を単相3線式にすると電圧降下は」→小さくなる。

④電線を太くしたら … 抵抗が小さくなるので電圧降下も小さくなる。

注意つまずきやすいところ

「2倍」を忘れる … 単相2線式でうっかり e=I×r としてしまう。行き帰りで2本です。

電圧降下と末端電圧を混同する … 「電圧降下は」と聞かれたら下がったぶん(3V)、「末端の電圧は」なら引いたあと(97V)。

こう長と電線の長さを取り違える … 「こう長8m」は片道8mのこと。往復ぶんは式の「2」ですでに計算に入っています。

電線を太くすると、なぜ電圧降下が減るのか

直径1.6mmと2.0mmの電線の断面を比べた図。太いほど電気の通り道が広く、断面積は約1.56倍になり、抵抗はその逆で小さくなることを示している
太い電線ほど通り道が広く、抵抗が小さくなります。

対策としてよく挙げられるのが「電線を太くする」です。なぜ効くのかを、ひと言で押さえておきましょう。

用語電線の抵抗は何で決まるのか?

長さに比例し、断面積に反比例します。つまり長いほど抵抗は大きく、太いほど小さくなります。

なぜ?なぜ太いと抵抗が小さくなるのか?

電気の通り道が広くなるからです。同じ人数が通るとき、狭い廊下より広い廊下のほうがスムーズなのと同じです。1.6mmを2.0mmにすると、断面積はおよそ1.56倍になり、抵抗はその逆数ぶん小さくなります。

ですから、「電線を太くする=抵抗が小さくなる=電圧降下が減る」という流れでつながっています。同時に許容電流(安全に流せる電流の上限)も増えるので、太い電線はより多くの電流を流せます。

よくある質問

よくある質問

Q. 「こう長」とは何のことですか?

A. 電源から負荷までの片道の距離のことです。「こう長8m」なら、電線は行き帰りで16m使いますが、式の「2」がその往復ぶんを見ていますので、計算では8mをそのまま使います。

Q. 電圧降下は何%までなら許されるのですか?

A. 一般には標準電圧の2%以内を目安に設計します。配線が長くなる場合など、条件によってはもう少し大きい値まで認められます。試験では「何Vになるか」を計算させる問題が中心なので、まずは式を使えるようにしておきましょう。

Q. 単相3線式にすると、なぜ電圧降下が小さくなるのですか?

A. 同じ電力なら、電圧が高いほど電流が小さくてすむからです。電圧降下は電流に比例するので、電流が半分になれば電圧降下も半分になります。さらに、中性線に電流が流れない前提なら1本ぶんの計算ですみます。

まとめ

まとめこの回の要点

電圧降下は電線の抵抗で失われる電圧。

長い・細い・電流が大きいほど大きくなる。

式は単相2線式=2Ir/単相3線式=Ir/三相3線式=√3Ir。

単相3線式の「1倍」はバランスが取れているときの話。

目安は電圧の2〜3%以内。

対策は太くする・短くする・電圧を上げる。