【第二種電気工事士】力率と三相交流|√3が出る場所を知識ゼロから【第4回】
前の回で、交流は波のように変わり続けること、そして抵抗だけの回路なら直流と同じ計算でよいことを見ました。
この回で扱うのは、抵抗だけではない場合です。モーターや蛍光灯のようにコイル(電線をぐるぐる巻いた部品)が入った機器をつなぐと、「電圧×電流」がそのまま電力にならなくなります。そのずれを表す数字が力率です。
あわせて、工場などで使う三相交流も見ていきます。どちらも過去問の問1〜10で出題例があるテーマです。
力率とは「送った電気のうち、実際に働いた割合」

用語力率とは?
力率とは、送り出した電気のうち、実際に仕事をした電気の割合のことです。力率 = 有効電力P ÷ 皮相電力S で計算し、0〜1の数字か、%(0〜100%)で表します。
なぜ?なぜ「送ったのに働かない電気」が出てしまうのか?
コイルは、電気をいったん磁気としてため込んでから返すからです。モーターや蛍光灯の中にはコイルが入っていて、電気を受け取っては返す、を毎秒何十回もくり返しています。この行ったり来たりする電気は仕事をしませんが、電線の中はきちんと流れるので、電線を太くする必要が出てきます。
例3つの電力の呼び名と単位
有効電力 P[W](ワット) … 実際に仕事をした分。電気代になるのはここ。
無効電力 Q[var](バール) … 行ったり来たりするだけの分。
皮相電力 S[VA](ボルトアンペア) … 送り出した全部。S = 電圧 × 電流 で計算します。
この3つは直角三角形の関係になっています。底辺が有効電力、高さが無効電力、斜辺が皮相電力です。力率は「斜辺に対する底辺の割合」ということになります。
覚える覚え方
力率は「ビールの中身と泡」でイメージすると分かりやすいです。ジョッキ全体が皮相電力、飲めるビールが有効電力、泡が無効電力。泡ばかりのジョッキは、同じ大きさでも飲める量が少ない——つまり力率が悪いということです。
力率の計算例
1問題 単相100Vの回路に10Aが流れ、消費電力(有効電力)が800Wだった。力率は何%か。
2皮相電力を出す S = 電圧 × 電流 = 100 × 10 = 1 000VA
3力率を出す 力率 = P ÷ S = 800 ÷ 1 000 = 0.8
4%に直す 0.8 × 100 = 80%
5答え:80% (送った1 000VAのうち、800Wぶんが働いた)
力率が悪いと、なぜ困るのか

力率が悪いということは、同じ仕事をするのに、余計に大きな電流を流しているということです。
例力率が悪いと起きること
電線を太くしなければならない … 流れる電流が大きいぶん、細い電線では熱くなってしまいます。
電圧降下が大きくなる … 電流が大きいほど、末端に届くころの電圧が下がります(第6回)。
電気設備が余分に必要になる … 変圧器やブレーカー(電気を自動で止める装置)も、大きな電流に耐えられるものが必要です。
用語力率改善とは?
力率改善とは、コイルと逆の性質をもつコンデンサ(電気を一時的にためる部品)を、負荷(電気を使う機器)と並列につないで力率を上げることです。これに使う部品が進相コンデンサです。
なぜ?なぜコンデンサを入れると力率が良くなるのか?
コイルとコンデンサは、電気をため込むタイミングが正反対だからです。コイルが電気を吸い込むときにコンデンサが吐き出し、コイルが返すときにコンデンサが受け取る——このやりとりを負荷のすぐそばで完結させることで、電源から無効電力を送らなくてすむようになります。
三相交流は「3本の線で送る交流」
用語三相交流とは?
三相交流とは、タイミングを少しずつずらした3つの交流を、3本の線で送るものです。工場のモーターや、大きなエアコンに使われます。家庭に来ている単相は、これを1組だけ取り出したものです。
なぜ?なぜ3つに分けて送るのか?
同じ太さの電線で、より多くの電力を送れるからです。さらに三相には大きな利点があって、モーターが自分で回り出します。3つの電気が順番に押すので、回転する力が自然に生まれるのです。単相のモーターは、回り始めるための仕掛け(コンデンサなど)が別に必要になります。
用語「線間電圧」と「相電圧」とは?
線間電圧は、3本の電線のうち2本の間で測った電圧。相電圧は、1組の電源(コイル)1つぶんの電圧です。電流も同じように、線電流と相電流に分かれます。
なぜ?なぜ√3という半端な数が出てくるのか?
3つの交流がタイミングをずらして重なっているからです。単純な足し算にはならず、少しずれた分だけ差し引きされます。その結果が√3(約1.73)倍という値になります。理屈は難しいので、「Yは電圧、Δは電流に√3」と結論だけ覚えて構いません。
覚える√3が出てくる場所
Y(スター)結線(結線=三相の電源のつなぎ方) … 線間電圧 = 相電圧 × √3、線電流 = 相電流(同じ)
Δ(デルタ)結線 … 線間電圧 = 相電圧(同じ)、線電流 = 相電流 × √3
三相の電力 … どちらの結線でも P = √3 × 線間電圧 × 線電流 × 力率
三相の電力を求める計算例
1問題 線間電圧200V、線電流10A、力率80%の三相負荷。有効電力は約何Wか。(√3=1.73とする)
2式にあてはめる P = √3 × 200 × 10 × 0.8
3√3を1.73に置きかえる P = 1.73 × 200 × 10 × 0.8
4左から順にかける 1.73 × 200 = 346
5つづき 346 × 10 = 3 460 → 3 460 × 0.8 = 2 768W
6答え:約2 770W(約2.8kW)
覚える覚え方
三相の電力は「ルート3・電圧・電流・力率」の4つをかけるだけです。かける順番は自由なので、1.73 → 電圧 → 電流 → 力率と左から順に処理すると、計算ミスが減ります。
過去問では、こう出る
例出題のされ方
①力率を求める … 「電圧・電流・消費電力」が与えられて力率を出す。まずS=V×I、次にP÷S。
②三相の電力を求める … P=√3×V×I×力率にあてはめるだけ。
③YとΔの関係 … 「Y結線の相電圧は」「Δ結線の線電流は」と、√3をかけるか割るかを問う。
④力率改善の効果 … 「進相コンデンサを入れると何が減るか」→無効電力と電流。
注意つまずきやすいところ
皮相電力と有効電力を取り違える … V×Iは皮相電力(VA)。そこに力率をかけてはじめて有効電力(W)になります。
単相の式に√3をつけてしまう … √3は三相だけ。単相は P=V×I×力率 です。
YとΔで√3のつく場所を逆にする … Yは電圧、Δは電流。「Yは上(電圧)、Δは下(電流)」と位置で覚える手もあります。
よくある質問
まとめ
まとめこの回の要点
力率=有効電力P÷皮相電力S。送った電気のうち実際に働いた割合。
皮相電力S=電圧×電流。単位は[VA]。
力率が下がる原因はコイル(モーター・蛍光灯)。
力率改善は進相コンデンサを負荷と並列に入れる。
三相はYなら電圧に√3、Δなら電流に√3。
三相の電力はP=√3×線間電圧×線電流×力率。√3は1.73。
次に進む前に、ここまでの第1回〜第4回で「電気そのもの」の話は終わりです。第2章からは、その電気をどうやって家まで配るのかという話に移ります。
