ビルの空調にはいくつもの方式があり、試験では「どの方式がどんな建物に向くか」が毎年のように問われます。名前は難しそうですが、見分けるコツは1つです。部屋まで熱を運ぶのが「空気」か「水」か「冷媒」か。この記事では、この運び手の違いから、定風量・変風量・ファンコイル併用・パッケージの4方式を順番に整理します。

空調方式とは?

建物のどこで空気を冷やしたり温めたりし、何を使って各部屋まで熱を運ぶかの組み合わせ方。

💡 なぜ? 建物の大きさ・使い方・予算によって、向いている運び方が違うから。方式ごとの得意・不得意を知ると、選択肢の正誤が理由から判断できるようになるでしょう。

まず「熱の運び手」で3つに分ける

ビルの各部屋へ、ダクトの空気・配管の水・冷媒管の3つのルートで熱が運ばれている様子を表したイメージ図
熱を部屋まで運ぶのは、空気・水・冷媒のどれか。ここで方式が分かれます。
グループ 部屋まで熱を運ぶもの 代表的な方式
全空気方式 空気だけ(ダクト) 定風量単一ダクト方式/変風量単一ダクト方式
空気・水方式 空気と水(ダクト+配管) ファンコイルユニット・ダクト併用方式
冷媒方式 冷媒(冷媒配管) パッケージ形空気調和機方式(マルチパッケージ)

空気は熱をたくさん運べないので、空気だけで運ぶと太いダクトと大きな送風機が必要になります。一方、水や冷媒は少ない量で多くの熱を運べるので、配管は細くて済むのです。

💡 覚え方

「空気はかさばる、水と冷媒はコンパクト」。この1つの性質から、ダクトスペース・搬送動力(送るための電気)・外気の取り入れやすさの違いがほとんど説明できます。

定風量単一ダクト方式(CAV方式)

中央の空調機で冷やした(温めた)空気を、1本の系統のダクトで各部屋へ送る方式です。送る風量はいつも一定で、室温は送る空気の温度を変えて調整します。

⭕ 送風量が多いので、室内の空気の清浄度を保ちやすい

⭕ 気流の分布がよく、部屋全体に空気が行き渡りやすい

⭕ 外気が涼しい季節に、外気をそのまま使った冷房(外気冷房)がしやすい

❌ 各部屋の負荷の変わり方が違うと、部屋ごとに温度のばらつきが出やすい

❌ 風量を減らせないので、送風の電気(搬送動力)が大きくなりやすい

🤔 なぜ部屋ごとに温度がばらつくのですか。

1台の空調機から、全部の部屋に同じ温度の空気が同じ量だけ届くからです。日が当たる部屋と当たらない部屋では必要な冷房の量が違うのに、部屋ごとに加減ができないのです。「定風量は負荷の変わり方が違う部屋が多い建物に向く」という選択肢は、だから誤りになります。

なお、ダクトの途中に付ける定風量ユニット(CAV)は、上流側の圧力が変わっても風量を一定に保つ装置です。

変風量単一ダクト方式(VAV方式)

ダクトは定風量と同じ1系統ですが、各部屋の手前に変風量ユニット(VAVユニット)を付けます。送る空気の温度は一定にして、部屋ごとに風量を増やしたり減らしたりして室温を調整するのが特徴です。

VAVユニットとは?

部屋の温度を検出し、その部屋に送る風量を自動で変える装置(Variable Air Volume=変わる風量)。

💡 なぜ? 部屋ごとに風量を加減できれば、日当たりや人数の違いにそれぞれ合わせられるからです。

⭕ 部屋ごとの負荷の変化に対応しやすい。間仕切りの変更にも対応しやすい

⭕ 必要なぶんだけ送るので、送風機の電気(搬送動力)を減らせる

❌ 風量を絞りすぎると外気(新鮮な空気)が足りなくなるので、最小風量を決めておく

❌ VAVユニットから出る騒音に注意が必要

VAVユニットの施工で問われること

①上流側をまっすぐなダクト(整流)にする。流れが乱れると風量を正しく測れない

②天井内に付けるときは、制御部を点検できるようにする

③使わない部屋・時間帯に備えて、全閉機能付きを使うことがある

④厨房の排気ダクトには使わない(油や汚れで動かなくなるため)

VAV方式の制御は「部屋→ユニット→送風機」の順につながる

VAV方式では、部屋の温度から順番に機器が動く仕組みです。試験では「何を検出して、何を動かすか」の組み合わせが問われます。

制御のながれ

①部屋の温度検出器が室温を測る

②室温に合わせて、VAVユニットが風量を増やしたり減らしたりする

③各部屋のVAVユニットの風量の合計が変わる

④それに合わせて、空調機の送風機の回転数(インバータ)を変える

送風機の回転数を下げられるので、搬送動力が減るわけです。試験に出る組み合わせは「VAVユニット―室内の温度」と「空調機のファン―VAVユニットの風量」。どちらも正しいものとして出ています。

💡 覚え方

CAVは「温度を変える」、VAVは「量を変える」。エアコンでいえば、CAVは設定温度を、VAVは風の強さを変えて調整しているイメージです。

ファンコイルユニット・ダクト併用方式

各部屋にファンコイルユニット(FCU)という小さな機器を置き、そこへ冷水・温水を配管で送る方式です。外気(新鮮な空気)だけはダクトで別に送るので、「ダクト併用」と呼ばれます。

ファンコイルユニットとは?

冷温水が流れるコイルと小さな送風機を箱に収めた機器。部屋の空気を吸い込み、冷水で冷やす(除湿もする)か、温水で温めて吹き出します。

💡 なぜ? 熱を運ぶのが水なので、太いダクトがなくても各部屋で冷暖房ができるからです。冷媒(フロン)を使う機器ではありません。

⭕ 全空気方式よりダクトスペースが小さく、搬送動力も小さい

⭕ ファンコイルごとに部屋別の温度調整(個別制御)ができる

❌ 外気冷房がしにくい(外気はダクトの少ない量しか入らない)

❌ 部屋の中に機器と水配管があるので、水漏れ(水損)のリスクがある

❌ 部屋ごとに機器があるので、フィルター清掃などの保守の手間が増える

⚠ 注意

外気の負荷(取り入れた外気を冷やす・温める仕事)は、ダクト側の空調機(外調機)が受け持つのが一般的です。「ファンコイルで外気負荷を含む熱負荷全体を処理する」という選択肢は誤りとして出ています。

パッケージ形空気調和機方式(マルチパッケージ)

圧縮機・熱交換器・膨張弁・送風機などを、屋外機と屋内機にまとめて収めた空調機を使う方式です。家庭用エアコンを大きくしたものと考えると分かりやすいでしょう。熱の運び手は冷媒です。

1台の屋外機に何台もの屋内機をつなぐタイプを、マルチパッケージ形と呼びます。中小のビルで多く使われている方式です。

⭕ 中央の熱源機械室がいらず、機械室の面積が小さくて済む

⭕ 屋内機ごとに運転・停止や温度設定ができる

⭕ 冷房と暖房を屋内機ごとに選べる機種もある(冷暖同時型は、冷房の排熱を暖房に回せる)

❌ 空調機だけでは換気ができないので、全熱交換ユニットなどで外気を取り入れる必要がある

❌ 冷媒配管の長さや高低差に制限があり、短く高低差が小さいほど効率がよい

❌ 屋内機が各部屋にあるので、保守は部屋ごとに行う

パッケージ形で問われること

①熱源の違いで空気熱源ヒートポンプ式と水熱源ヒートポンプ式がある

②インバータで電源の周波数を変え、圧縮機の回転数を変えて能力を調整する

③屋外機の圧縮機をガスエンジンで動かす機種もある

④業務用はフロン(HFC)を使うので、フロン排出抑制法の第一種特定製品にあたる

⑤据え付けたら冷媒の名前と封入量を表示する

4つの方式を比べると

比べる点 定風量(CAV) 変風量(VAV) FCU・ダクト併用 パッケージ
熱の運び手 空気 空気 空気+水 冷媒
部屋ごとの調整 苦手 得意(風量) 得意 得意
ダクトスペース 大きい 大きい 小さい 小さい
搬送動力 大きい 減らせる 小さい —
外気冷房 しやすい しやすい しにくい しにくい

表を横に読むより、縦に読むほうが覚えやすいはずです。全空気方式(CAV・VAV)は空気をたくさん送るぶん、清浄度と外気冷房に強い。水や冷媒の方式はコンパクトで省エネだが、外気の扱いが別仕事になる——という流れです。

吹出しとゾーニングの知識

床吹出し方式と放射冷暖房

床吹出し方式は、床下から空気を吹き出します。吹出口の移動や増設がしやすく、レイアウト変更に強い方式です。暖房のときに足もとから暖まるので、上下の温度差は小さくなります(「大きい」は誤り)。

放射冷暖房方式は、天井や床の面を冷やしたり温めたりして、熱を放射で伝える方式です。こちらも上下の温度差が少ないのが特徴といえます。

シーリングディフューザー:天井の丸い吹出口

天井でよく見る何重もの輪になった吹出口がシーリングディフューザーです。吹き出した空気がまわりの室内空気を引き込み(誘引し)ながら広がるので、気流の拡散に優れているのが特徴です。

誘引作用が大きいと、冷たい空気もすぐ室内の空気と混ざるでしょう。そのため吹出し温度差を大きくとれるのが利点です。「誘引作用が小さく、拡散半径が小さい」は誤りとして出ています。

ペリメータゾーンとインテリアゾーン

建物の外壁や窓に近い部分をペリメータゾーン、中心に近い部分をインテリアゾーンと呼ぶのです。ペリメータは日射や外気温の影響を強く受けるので、空調の系統を分けて考えるのが基本です。

この分け方(ゾーニング)は方位や負荷の違いで行うのが基本。「空気清浄度別」に分けるという選択肢は誤りとして出ています。窓際の冷たい下降気流(コールドドラフト)を防ぐには、ペリメータ用の空気処理が有効です。

試験ではこう出る

よくある記述 判断
定風量単一ダクト方式は、各室の負荷変動パターンが異なる建物に適している 誤り。温度のばらつきが出やすい
変風量単一ダクト方式は、定風量に比べ搬送動力を節減できる 正しい
変風量単一ダクト方式では、外気量確保のため最小風量を設定する 正しい
FCU・ダクト併用方式は、全空気方式に比べ外気冷房を行いやすい 誤り。しにくい
FCU・ダクト併用方式は、ファンコイルごとの個別制御が困難である 誤り。個別制御できる
ファンコイルユニットは、冷媒にフロンを使って空気を冷やす 誤り。冷温水を使う
マルチパッケージ方式は、中央熱源方式より機械室面積が広く必要 誤り。小さくて済む
定風量単一ダクト方式は、FCU・ダクト併用方式より送風量が小さい 誤り。大きい
VAVユニットの上流側が整流でなくても、風量制御に影響しない 誤り。上流は直管で整流する
床吹出し方式は、暖房時の居住域の上下の温度差が大きい 誤り。小さい
シーリングディフューザーは、誘引作用が大きく気流拡散に優れる 正しい

よくある質問

Q. 結局、どの方式がいちばんよいのですか。

A. 建物によって答えは変わる、というのが正直なところです。空気をたくさん入れ替えたい大きなホールなどは全空気方式が向いています。部屋が細かく分かれた事務所はVAVやFCU併用、中小のビルはマルチパッケージが選ばれることが多いでしょう。

Q. ファンコイルユニットはどこに置くのですか。

A. 床置形は外壁の窓の下に置くのが一般的です。窓からの日射や冷気をその場で処理できるからです。天井に隠すタイプ(天井内設置)もあり、その場合は冷房時に出る結露水(ドレン)を流す勾配がとれる高さに据え付けます。

Q. 外気冷房とは何ですか。

A. 春や秋のように外の空気が室内より涼しいとき、冷凍機を動かさずに外気を取り入れて冷房することです。空気をたくさん送れる全空気方式ほど効果が大きくなります。

Q. ダクト併用の「ダクト」は何を送っているのですか。

A. 主に新鮮な外気です。外調機で温度と湿度を整えた外気を各部屋へ送り、室内の熱はファンコイルが処理します。役割分担をしていると考えてください。

まとめ

・見分けるコツは熱の運び手=空気・水・冷媒

・定風量(CAV)=温度を変える。清浄度・外気冷房に強いが、部屋ごとの調整は苦手

・変風量(VAV)=量を変える。搬送動力を減らせる。最小風量と騒音に注意

・FCU・ダクト併用=ダクト小・搬送動力小・個別制御可。外気冷房しにくい・水損リスク

・パッケージ=冷媒で運ぶ。機械室が小さい。外気は別に取り入れる