第2章 電気を配る | 第5回 | 学習カリキュラムの目次を見る

過去問には「単相2線式」「単相3線式」「三相3線式」という言葉が何度も出てきます。名前が長くて似ているので、まずここでつまずきやすいのです。

この記事では、電気をまったく知らない人を想定して、3つの違いと試験で問われやすいポイントを説明します。

そもそも「相」と「線式」とは

用語相(そう)とは?

相とは、電気の波が何組あるかを表す言葉です。単相=1組、三相=3組です。

なぜ?なぜ3組にして送るのか?

家庭用コンセントに来ている交流は、波のように大きさが変わりながら流れています。この波を3組ずらして送ると、モーターを回す力がなめらかに生まれるので、大きな機器では三相を使います。

用語線式(せんしき)とは?

線式とは、電線が何本あるかを表す言葉です。2線式=2本、3線式=3本です。

なぜ?なぜ電線の本数が問題になるのか?

電線の本数によって取り出せる電圧の種類が変わるからです。

コツ名前の読み方

「単相3線式」= 波は1組、電線は3本。
名前を「相の数」と「電線の本数」に分けて読むと、意味がつかみやすくなります。

単相2線式 いちばん単純な形

電線が2本だけの、いちばん基本の配線です。100Vが取り出せます。

用語単相2線式の特徴

電線は2本(非接地側1本・接地側1本)

取り出せる電圧は100Vのみ

小さな店舗や、古い住宅で使われている

2本の内訳 接地側と非接地側

2本の電線には、それぞれ名前があります。1本は地面につながれている側で接地側、もう1本は地面につながれていない側で非接地側といいます。接地とは、電線や機械を地面につなぐことです。この言葉は、このあとの回でもよく出てきます。

なぜ、片方を地面につなぐのか

電柱の上の変圧器の中では、6600Vの高い電気と、家に送る100Vの電気がすぐ隣り合っています。古くなったり雷が落ちたりして、もしこの2つが中で触れてしまうと、家の電線に6600Vが入り込むおそれがあります。
片方の電線を地面につないでおけば、そのときの電気は地面へ流れて逃げるので、家の電線の電圧が大きく上がるのを防げます。

対地電圧=電線と地面のあいだの電圧

対地電圧とは、電線と地面(大地)とのあいだの電圧のことです。人は地面に立っているので、もし地面に立ったまま電線にさわると、体にはこの対地電圧がかかります(もちろん、実際にはどちらの線にもさわってはいけません)。
接地側の電線は地面とつながっているので、地面との差は0V。非接地側の電線は、地面との差が100V。だから、単相2線式の対地電圧は100Vです。

注意計算での注意点

電圧降下(電線を通る間に電圧が下がること)を計算するとき、電線の長さは行きと帰りで2倍にします。

なぜ?なぜ長さを2倍にするのか?

電気は行ったきりでは流れません。必ず戻ってくるので、2本ぶんの抵抗を通ることになります。「こう長12m」(こう長=電線を引く区間の片道の長さ)と書かれていたら、計算では24mを使います。

単相3線式 今の住宅の標準

単相3線式で100Vと200Vが取れる仕組み
外側の線と中性線の間で100V、外側どうしで200V。中性線が接地されているので、100V回路の対地電圧は100Vにおさまります。

電線が3本の配線です。今の住宅ではこれが標準です。100Vと200Vの両方が取り出せます。

用語単相3線式の特徴

電線は3本 … 外側の線2本+中性線1本

外側の線と中性線のあいだ → 100V(照明・コンセント)

外側の線どうしのあいだ → 200V(エアコン・IH)

対地電圧は100V … 200Vの機器を使っていても、大地との差は100V

中性線とは何か 乾電池2本で考える

乾電池を2本、縦に積み重ねてつなぐと、上の端・下の端・2本のつなぎ目の3か所ができます。家に来る電気もこれと同じ形で、100Vの電源を2つ縦に積み重ねたものだと考えてください。上の端から1本、下の端から1本、つなぎ目から1本の、合わせて3本の電線が出ています。このうち、つなぎ目から出ている真ん中の線が中性線、上と下の2本が外側の線です。

電圧は「高さのちがい」です。中性線の高さを0とすると、上の外側の線は100高く、下の外側の線は100低くなります。上の線と中性線のあいだは100V、中性線と下の線のあいだも100V、上の線と下の線のあいだは 100 + 100 = 200V。これが、3本で2種類の電圧が取れる理由です。

中性線を地面につなぐ → 対地電圧は100V

中性線は、電柱の上の変圧器のところで地面につながれています。単相2線式と同じく、変圧器の中でもしものことがあっても、家の電線に高い電圧がかからないようにするためです。
地面につなぐと、中性線と地面は同じ高さの0になります。上の線は地面より100高く、下の線は100低いので、どちらも地面との差は100V。200Vのエアコンを使っていても、対地電圧は100Vにおさまります。

用語中性線(ちゅうせいせん)とは?

中性線とは、3本の真ん中の線のことです。上側の負荷と下側の負荷(負荷=電気を使う機器)の、電流の差だけが流れます。

なぜ?なぜ電流が流れないことがあるのか?

上と下がまったく同じ量を使っていれば差はゼロ。つまり中性線には電流が流れなくなります。この状態を平衡といいます。

電流の通り道をたどると分かります。上の機器の電流は、上の線から機器を通り、中性線を通って電源に戻ります。下の機器の電流は、中性線から機器を通り、下の線を通って戻ります。中性線の中では、この2つが逆向きに流れようとするので打ち消し合い、残るのはちがいのぶんだけです。

たとえば上の機器に10A、下の機器に6A流れていれば、中性線に流れるのはちがいの4Aです。上下とも10Aなら、ちがいはゼロで中性線は0A(平衡)になります。

練習問題 中性線の電流 = 上と下の ちがい

同じ型の問題を3問。1問ずつ、自分で考えてから答えを開いてください。

練習 1/3上の機器 15A・下の機器 10A。中性線の電流は何A?

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5A … 大きいほうから小さいほうを引く。15(A) − 10(A) = 5A

練習 2/3上の機器 8A・下の機器 12A。中性線の電流は何A?

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4A … 今度は下が大きいので 12(A) − 8(A) = 4A。どちらが大きくても、ちがいのぶんだけ流れます

練習 3/3上の機器も下の機器も 20A。中性線の電流は何A?

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0A … 20(A) − 20(A) = 0A。この状態が平衡です

用語平衡すると電圧が上がる

上下が同じ負荷になると、中性線での電圧降下が消えるので、機器に届く電圧はむしろ上がります。

なぜ?なぜ負荷を増やしたのに電圧が上がるのか?

電気が通る道から中性線の抵抗が1本ぶん外れるからです。「負荷を増やしたのに電圧が上がる」という、試験で狙われやすい引っかけがこれです。

数字で確かめる

電源は上も下も100V、電線の抵抗は3本とも1本0.1Ωとします。
上が10A、下が6Aなら、中性線にはちがいの4Aが流れます。上の機器に届く電圧は、100から外側の線の降下(10(A) × 0.1(Ω) = 1V)と中性線の降下(4(A) × 0.1(Ω) = 0.4V)を引いて、98.6Vです。
下にも機器を足して10Aにそろえると、中性線は0A。引くのは1Vだけになり、上の機器の電圧は99Vに上がります。機器を足した側は、そのぶん少し下がります。

練習問題 上の機器に届く電圧

電源 − 外側の線の降下 − 中性線の降下の型で3問。電圧降下は「電流 × 抵抗」です。

練習 1/3電源100V、電線1本0.2Ω。上の機器に20A、下の機器に10A。上の機器に届く電圧は何V?

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94V … 外側の線 20(A) × 0.2(Ω) = 4V。中性線にはちがいの10Aが流れるので 10(A) × 0.2(Ω) = 2V。100 − 4 − 2 = 94V

練習 2/3電源100V、電線1本0.1Ω。上も下も10A。上の機器に届く電圧は何V?

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99V … 外側の線 10(A) × 0.1(Ω) = 1V。平衡なので中性線は0A、降下も0V。100 − 1 = 99V

練習 3/3電源105V、電線1本0.1Ω。上の機器に15A、下の機器に5A。上の機器に届く電圧は何V?

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102.5V … 外側の線 15(A) × 0.1(Ω) = 1.5V。中性線はちがいの10Aで 10(A) × 0.1(Ω) = 1V。105 − 1.5 − 1 = 102.5V。中性線の電流を先に出してから引き算をすると迷いません

用語中性線が切れると危険

中性線が断線すると、負荷の小さいほうに高い電圧がかかり、機器が壊れるおそれがあります。

なぜ?なぜ片方に高い電圧がかかるのか?

中性線がなくなると、上下の負荷が直列につながった形になり、200Vを2つで分け合うことになるからです。抵抗が大きい(=電気を使わない)ほうに、電圧が偏ってかかります。だから中性線にはヒューズ(電流が流れすぎると切れて回路を止める部品)やスイッチを入れてはいけないと決められています。

中性線が切れたときの数字の例

100Vで500Wの機器(ヒーターなど)と、100Vで125Wの機器(照明など)があるとします。まず、それぞれの抵抗を出します。
500Wの機器…電流は 500(W) ÷ 100(V) = 5A、抵抗は 100(V) ÷ 5(A) = 20Ω
125Wの機器…電流は 125(W) ÷ 100(V) = 1.25A、抵抗は 100(V) ÷ 1.25(A) = 80Ω

中性線が切れると、2つは一続き(直列)になって200Vを受けます。全体の抵抗は 20 + 80 = 100Ω なので、電流は 200(V) ÷ 100(Ω) = 2A。
500Wの機器には 2(A) × 20(Ω) = 40V、125Wの機器には 2(A) × 80(Ω) = 160V がかかります。直列では抵抗の大きいほうに電圧が多く分かれるので、電気をあまり使わないほうに高い電圧が偏り、100V用の機器に160Vがかかって壊れることがあります。

中性線欠相保護付のブレーカー

それでも、事故などで中性線が切れてしまうことはあります。そこで、住宅の分電盤の大元のブレーカーには、中性線欠相保護付というものが使われることが多いです。欠相(けっそう)とは、3本のうち1本が切れた状態のこと。中性線が切れて機器に高い電圧がかかりそうになると、それを見つけて自動で回路を切ってくれます。
たとえるなら、ダイナマイトに向かって燃えていく導線を、途中で切って止めるようなもの。家電に高い電圧が届く前に、電気の通り道を断ち切ります。

三相3線式 工場やビルのモーター用

電線が3本で、波が3組の配線です。工場やビルの大きなモーターに使われます。

用語三相3線式の特徴

電線は3本。波が3組、少しずつずれて流れている

同じ太さの電線で、より多くの電力を効率よく送れる

モーターを回す力がなめらかに出るので、動力用に向いている

対地電圧は200V(200Vの三相の場合)

用語Y(スター)結線と√3

3つの抵抗の片方の端を1点に集めたつなぎ方をY結線といい、集めた点を中性点といいます。
このとき 線間電圧 = 相電圧 × √3(√3 ≒ 1.73)

なぜ?なぜ√3倍になるのか?

3本の電気はタイミングがずれてやってくるので、単純な足し算になりません。ずれを計算に入れると√3倍という数字が出てきます。試験では√3=1.73と覚えるだけで十分です。

例押さえておきたい計算

線間電圧200Vのとき、相電圧は … 200 ÷ 1.73 = 約116V

この116という数字は、そのまま覚えておくと便利です

3つを並べて比べる

単相2線式・単相3線式・三相3線式の比較
線の本数と取り出せる電圧で3つを見分けます。単相3線式だけは真ん中の中性線が接地されていて、外側との間で100V、外側どうしで200Vが取れます。

例ひと目で分かる比較

単相2線式 … 線2本/100Vのみ/対地電圧100V

単相3線式 … 線3本/100Vと200V/対地電圧100V/中性線あり

三相3線式 … 線3本/200V/対地電圧200V/モーター用

なぜ?なぜ「対地電圧」が大事なのか

絶縁抵抗(電気の漏れにくさを表す値)の基準が、対地電圧で決まるからです。

なぜ?なぜ大地との差で決まるのか?

感電の危険は電線と大地(地面)とのあいだの電圧で決まります。人は地面に立っているからです。使用電圧が同じ200Vでも、単相3線式なら対地100V、三相3線式なら対地200Vと違うため、求められる絶縁抵抗も変わります。

覚える絶縁抵抗の基準(対地電圧で決まる)

使用電圧300V以下 かつ 対地電圧150V以下 … 0.1MΩ以上
使用電圧300V以下 でも 対地電圧150V超 … 0.2MΩ以上
使用電圧300V超 … 0.4MΩ以上

1MΩ(メガオーム)は、100万Ωのことです。

練習問題 絶縁抵抗の基準

まず対地電圧を出して、それから表にあてはめる型で3問。

練習 1/3単相3線式の住宅で、200Vのエアコンの回路。絶縁抵抗は何MΩ以上?

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0.1MΩ以上 … 単相3線式は200Vの機器でも対地電圧は100V。使用電圧300V以下・対地電圧150V以下なので 0.1MΩ以上

練習 2/3三相3線式200Vの、工場のモーターの回路。絶縁抵抗は何MΩ以上?

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0.2MΩ以上 … 三相3線式200Vは対地電圧も200V。使用電圧は300V以下だが対地電圧が150Vを超えるので 0.2MΩ以上。同じ200Vでも、単相3線式と三相3線式で答えが変わります

練習 3/3使用電圧が400Vの回路。絶縁抵抗は何MΩ以上?

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0.4MΩ以上 … 使用電圧が300Vを超えるので、対地電圧を見るまでもなく 0.4MΩ以上

過去問で確かめる 3問

ここ数年の試験では、問7に毎回のように単相3線式の問題が出ています。この回の内容だけで解ける3問を選びました。問題文と図は、各年度の過去問ページで確認できます。

令和7年度上期 問7 上下で電流がちがうとき

電源は上も下も103V、電線1本0.1Ω。上の機器に20A、下の機器に10A流れていて、a−b間(上の機器にかかる電圧)を問う問題です。
中性線にはちがいの10Aが流れます。外側の線の降下は 20 × 0.1 = 2V、中性線は 10 × 0.1 = 1V。103 − 2 − 1 = 100V(正解ロ)。練習問題と同じ型です。 → 令和7年度上期 問1〜10の解説

令和7年度下期 問7 上下がそろっているとき

電源は上も下も104V、電線1本0.2Ω。上の機器にも下の機器にも10Aずつ流れています。
上下が同じなので平衡。中性線の電流はゼロで、中性線の降下もゼロです。外側の線の降下は 10 × 0.2 = 2V なので、104 − 2 = 102V(正解ハ)。選択肢ロの100Vは、中性線にも10Aが流れると考えて2Vを余計に引いてしまった数です。 → 令和7年度下期 問1〜10の解説

令和8年度上期 問7 機器を足したら電圧はどうなる?

抵抗負荷3.3Ωが上下にあり、下の負荷にはスイッチSがついています。電源は105V、電線1本0.1Ω。Sを開いているときの電圧Vは99Vでした。Sを閉じるとVはどう変わるか、という問題です。
Sを開いているとき…使われているのは上の機器だけ。電流は外側の線・上の機器・中性線を一続きに通るので、抵抗は 0.1 + 3.3 + 0.1 = 3.5Ω。電流は 105 ÷ 3.5 = 30A、機器の電圧は 30 × 3.3 = 99V(問題文と一致)。
Sを閉じたとき…下にも同じ3.3Ωがつながり平衡に。中性線は0Aになり、計算から外れます。抵抗は 0.1 + 3.3 = 3.4Ω、電流は 105 ÷ 3.4 ≒ 30.9A、電圧は 30.9 × 3.3 ≒ 102V。
99Vから102Vになったので、3V上がる(正解ニ)。冒頭の「機器を増やしたのに電圧が上がる」と同じ話です。 → 令和8年度上期 問1〜10の解説

まとめ

まとめこの記事で覚えること

名前は「相の数」+「電線の本数」と読む

接地=地面につなぐこと。対地電圧=電線と地面のあいだの電圧(単相2線式・単相3線式は100V)

単相3線式=住宅の標準。100Vと200Vが使える。対地電圧は100V

中性線は、上下が同じなら電流が流れない(平衡)。平衡すると電圧は上がる

中性線にはヒューズ・スイッチを入れてはいけない

三相3線式は√3=1.73。200÷1.73=約116V

絶縁抵抗の基準は使用電圧と対地電圧で決まる

中性線に流れるのは上下のちがい。上の機器の電圧 = 電源 − 外側の線の降下 − 中性線の降下

実際の過去問で確かめる(令和8年度上期 全50問)

▶ 問1〜10
計算と電気の基礎

▶ 問11〜20
材料と工具

▶ 問21〜30
工事のルールと法令

▶ 配線図 問31〜40
図記号と傍記

▶ 配線図 問41〜50
写真の見分け

学科のあとは、技能試験の準備が要ります

技能試験は40分で実際に配線を組み立てる試験です。工具と練習用の材料がないと、実際に手を動かす練習ができません。通信講座は必要か、材料は買うか借りるか——実際の価格で比べました。

▶ 通信講座5社と工具・材料の費用を比較する