第2章 機器のしくみ | 第12回 | 学習カリキュラムの目次を見る

この記事でわかること

  • 膨張弁が何をしているかがわかります
  • 温度自動膨張弁が過熱度を保つしくみがわかります
  • 内部均圧形と外部均圧形の使い分けがわかります
  • キャピラリチューブ・電子膨張弁との違いがわかります

膨張弁は小さいのに、とても賢い部品です。自動で流量を調整して、過熱度(蒸発しきったガスの温度が、蒸発温度より何度高いか)を一定に保っています。その理屈がわかると、装置全体の動きが読めるようになります。

膨張弁の2つの仕事

膨張弁のしくみ

用語膨張弁とは?

高圧の冷媒液を絞って、低い圧力まで下げる部品です。同時に蒸発器へ送る冷媒の量を調整しています。

  • ①減圧する … 高圧の液を細い通路で絞り、蒸発できる低い圧力まで下げる
  • ②流量を調整する … 蒸発器の出口の過熱度が一定になるように、開き具合を変える

例簡単な例え

ホースの先を指でつまむと、勢いよく細く出て、圧力が下がります。膨張弁がやっているのは、これと同じ「絞り」です。違うのは、つまむ強さを自動で変えている点。冷えすぎたら絞り、冷え足りなければ開く——それを機械だけでやっています。

なぜ?なぜ圧力を下げると冷えるのか?

圧力が下がると、沸点(蒸発温度)が下がるからです。常温の液体でも、圧力を十分に下げれば−20℃でも沸騰します。沸騰=蒸発するとき、まわりから熱を奪う——これが冷える仕組みです。

温度自動膨張弁(TXV)のしくみ

温度自動膨張弁のしくみ(感温筒・ダイヤフラム・過熱度調整ばね)
感温筒が蒸発器出口の温度を感じ、その圧力でダイヤフラムを押して弁を開け閉めしています。

用語温度自動膨張弁とは?

蒸発器の出口の温度を感じて、自動で開き具合を変える弁です。感温筒という小さな筒を蒸発器の出口の配管に取り付け、その中のガスの圧力で弁を動かします。

  • ①感温筒が蒸発器出口の温度を感じる
  • ②中のガスの圧力が変わる(温かい→圧力が上がる)
  • ③ダイヤフラム(薄い膜)を押す
  • ④弁が開く → 冷媒が多く流れる → 蒸発器がよく冷える
  • ⑤出口の温度が下がる → 感温筒の圧力が下がる → 弁が閉じる

覚える覚え方

「出口が熱ければ開き、冷たければ閉じる」。ぬるいシャワーの蛇口を自分でひねっているような動きだと思ってください。これで過熱度がおおむね3〜8℃に保たれます。

覚える弁を動かしている3つの力

  • ①感温筒の圧力 … 弁を開ける向き
  • ②蒸発器内の冷媒の圧力 … 弁を閉じる向き
  • ③過熱度調整ばねの力 … 弁を閉じる向き
  • → ①=②+③でつり合った位置で止まります。ばねを強くすると過熱度が大きくなります。

内部均圧形と外部均圧形

どこの圧力を使うか向いている場面
内部均圧形弁の出口(蒸発器の入口)の圧力蒸発器の圧力降下が小さい場合
外部均圧形細い管を引いて、蒸発器の出口の圧力を使う蒸発器の圧力降下が大きい場合

なぜ?なぜ外部均圧形が必要なのか?

蒸発器を通るあいだに、冷媒の圧力が下がるからです。入口と出口で圧力が違うと、入口の圧力で判断していては、出口の本当の過熱度が分かりません。内部均圧形のままだと、出口より高い入口の圧力が弁を閉じる向きに働くので、弁が必要以上に絞られます。その結果、出口の過熱度が大きくなりすぎて冷えが悪くなります(能力不足)。そこで出口の圧力を直接引いてきて判断します。

コツ選び方の目安

  • 蒸発器の圧力降下が、飽和温度(その圧力で冷媒が沸騰する温度)で2℃相当を超えるようなら外部均圧形を使います。
  • ディストリビュータ(分配器)を使う蒸発器は、圧力降下が大きいので外部均圧形です。

そのほかの膨張装置

名前しくみ向いている場面
キャピラリチューブ(毛細管)ただの細長い管。動く部分がない家庭用冷蔵庫・ルームエアコンなど小型
定圧自動膨張弁蒸発圧力を一定に保つように動く負荷の変動が小さい装置
電子膨張弁センサーの信号でモーターが弁を動かす細かい制御ができる。インバータ機(モーターの回転数を変えて能力を調整する機械)など
フロート弁(高圧側・低圧側)液面の高さで開閉する満液式蒸発器(中を冷媒液で満たして使う蒸発器)など

用語キャピラリチューブの特徴

  • 構造が簡単で安く、故障しにくい
  • 負荷の変化に対応できない … 穴の太さが固定なので、流量を変えられません。
  • 冷媒の充填量を正確に守る必要がある … 受液器を持たない装置が多いためです。

自動制御機器いろいろ

  • 電磁弁(ソレノイドバルブ) … 電気でパチンと開閉する弁。停止中に冷媒が蒸発器へ流れ込むのを防ぐ
  • 蒸発圧力調整弁 … 蒸発圧力が下がりすぎないようにする
  • 吸入圧力調整弁 … 圧縮機の吸込み圧力が上がりすぎないようにして、モーターの過負荷を防ぐ
  • 凝縮圧力調整弁 … 冬に凝縮圧力が下がりすぎるのを防ぐ(下がりすぎると膨張弁が働かない)
  • 断水リレー … 冷却水が止まったら装置を停止させる

覚える覚え方

調整弁は「○○圧力調整弁=その圧力を守る弁」と名前どおりに読めば意味が取れます。蒸発圧力調整弁は下がりすぎ防止、吸入圧力調整弁は上がりすぎ防止——この2つだけ向きが逆なので注意してください。

試験ではこう出る

  • ①膨張弁の役割 … 「温度自動膨張弁は、蒸発器出口の過熱度を一定に保つように作動する」→正しい。
  • ②3つの力 … 「弁は、感温筒の圧力・蒸発器内の圧力・ばねの力のつり合いで開度が決まる」→正しい。
  • ③外部均圧形 … 「蒸発器の圧力降下が大きい場合は外部均圧形を用いる」→正しい。
  • ④キャピラリチューブ … 「負荷の変動に応じて冷媒流量を調整できる」→誤り。
  • ⑤吸入圧力調整弁 … 「圧縮機の吸込み圧力が設定値より高くならないようにする」→正しい。

よくある質問

Q.感温筒はどこに、どう取り付けるのですか?

A.蒸発器出口の吸込み管に、密着させて取り付けます。管の水平部分に付けるのが基本で、断熱材でくるんで、まわりの空気の温度を拾わないようにします。取り付けが悪いと実際と違う温度を感じて、弁が正しく動きません。

Q.過熱度調整ばねを強くすると、どうなりますか?

A.過熱度が大きくなります。ばねは弁を閉じる向きに働くので、強くすると弁が開きにくくなり、冷媒が絞られます。その結果、蒸発器の中で早く蒸発しきって、出口のガスがより熱くなる=過熱度が大きくなるのです。能力は下がりますが、液戻りは起きにくくなります。

Q.膨張弁が詰まると、どんな症状が出ますか?

A.低圧側の圧力が下がり、冷えなくなります。代表的な原因は水分の氷結(第3回)とゴミの詰まりです。氷結の場合は装置を止めるといったん溶けて直り、また運転すると詰まるという特徴的な症状が出ます。ドライヤ(乾燥器)の交換が対処になります。

まとめこのページのまとめ

  • 膨張弁の仕事は①減圧する ②過熱度が一定になるよう流量を調整する
  • 温度自動膨張弁は感温筒の圧力/蒸発器内の圧力/ばねの力のつり合いで動く
  • ばねを強くすると過熱度は大きくなる
  • 蒸発器の圧力降下が大きいときは外部均圧形
  • キャピラリチューブは流量を調整できないので、冷媒量を正確に
  • 蒸発圧力調整弁=下がりすぎ防止/吸入圧力調整弁=上がりすぎ防止

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