第1章 冷凍のきほん | 第5回 | 学習カリキュラムの目次を見る

この記事で分かること

  • 冷凍能力の式が使えるようになります
  • 1冷凍トン=3.86kWの意味が分かります
  • 冷媒循環量・圧縮動力・凝縮負荷の関係が分かります
  • 成績係数(COP)の計算ができるようになります

保安管理技術には計算問題が2〜3問出題されます。ただし使う式は主に4つで、すべてモリエル線図(第4回)の上でつながっています。ここを一度整理しておけば、以降の計算がぐっと進めやすくなるでしょう。

まず、記号の意味をそろえる

記号 呼び名 単位 意味
qmr 冷媒循環量 kg/s 1秒間に回る冷媒(熱を運ぶ物質)の重さ
h1 圧縮機の吸込み蒸気の比エンタルピー kJ/kg 蒸発器を出たところ
h2 圧縮機の吐出しガスの比エンタルピー kJ/kg 圧縮した直後
h3(=h4) 膨張弁前後の比エンタルピー kJ/kg 凝縮器を出たところ
Φo 冷凍能力 kW 蒸発器で奪う熱
P 圧縮動力 kW 圧縮機に入れる力
Φk 凝縮負荷 kW 凝縮器で捨てる熱

用語比エンタルピーとは?

比エンタルピーとは、その物質1kgが持っている熱の量のことです。単位はkJ/kg。モリエル線図の横軸がこれです。2点の差(引き算)が、やり取りされた熱になります。

覚える覚え方

「エンタルピーの差 × 循環量 = 熱の量」。この一文が、以下の式全部の正体です。1kgあたりの熱(差)に、何kg回っているか(循環量)をかける——それだけのことです。

4つの式

冷凍サイクルの4つの機器に、冷凍能力Φo、圧縮動力P、凝縮負荷Φk、膨張弁のh3=h4という4つの式を重ねた図。
4つの式は、冷凍サイクルのどこの話かで区別できます。
  • ①冷凍能力 Φo = qmr ×(h1 − h4) … 蒸発器で奪う熱
  • ②圧縮動力 P = qmr ×(h2 − h1) … 圧縮機が加えた熱
  • ③凝縮負荷 Φk = qmr ×(h2 − h3) … 凝縮器で捨てる熱
  • ④ Φk = Φo + P … 捨てる熱=奪った熱+加えた力

例簡単な例え

④は当たり前のことを言っています。部屋から奪った熱と、圧縮機がモーターで加えた熱——その両方が、最後は外に捨てられる。エアコンの室外機から出る熱が、部屋から取った熱より多いのは、このためです。

注意計算のときのつまずき

  • h1 − h4 の順番 … 大きいほうから小さいほうを引く(蒸発器と圧縮機は「出口−入口」、凝縮器は「入口−出口」)。逆にすると符号が変わります。
  • 単位をそろえる … qmrがkg/hで与えられたら、3600で割ってkg/sにします。
  • kJ/s = kW … エンタルピーの単位がkJ/kgなので、kg/sをかけるとそのままkWになります。
  • 例題 冷媒循環量0.5kg/s、h1=400kJ/kg、h2=440kJ/kg、h3=h4=250kJ/kg。冷凍能力・圧縮動力・凝縮負荷は?
  • ① Φo = 0.5 ×(400 − 250)= 0.5 × 150 = 75kW
  • ② P = 0.5 ×(440 − 400)= 0.5 × 40 = 20kW
  • ③ Φk = 0.5 ×(440 − 250)= 0.5 × 190 = 95kW
  • ④ 検算 75 + 20 = 95kW ✔ 合っています

覚える覚え方

最後に④で検算する習慣をつけましょう。Φo + P = Φk になっていなければ、どこかで引き算を間違えています。試験中に自分でミスを見つけられるのがこの式の一番の価値です。

成績係数(COP)

冷凍能力75kW、圧縮動力20kW、凝縮負荷95kWを棒の長さで並べ、75+20=95になることと、冷凍のCOP3.75・暖房のCOP4.75を示した図。
Φk=Φo+Pの検算と、2つのCOPの関係。

用語成績係数(COP)とは?

成績係数(COP)とは、入れた力に対して、何倍の熱を運べたかを表す数字です。COP = 冷凍能力Φo ÷ 圧縮動力P。単位はありません(倍率)。

  • 冷凍のCOP … COP = Φo ÷ P =(h1 − h4)÷(h2 − h1)
  • ヒートポンプ(冷凍サイクルで熱を部屋へ運び込み、暖房に使う装置)のCOP … COP = Φk ÷ P =(h2 − h3)÷(h2 − h1)
  • 暖房のCOPは、冷房のCOPよりちょうど1だけ大きい

先ほどの例題なら、冷凍のCOP = 75 ÷ 20 = 3.75、暖房のCOP = 95 ÷ 20 = 4.75。確かにちょうど1だけ大きいことが確かめられます。

なぜ?なぜ暖房のほうが1だけ大きいのか?

圧縮機に入れた力も、そのまま熱として使えるからです。冷房では「奪った熱」だけが成果ですが、暖房では「奪った熱+入れた力」がまるごと部屋に出ます。式で書くと Φk÷P =(Φo+P)÷P = Φo÷P + 1。

覚えるCOPが下がる原因(重要)

  • 凝縮温度(凝縮圧力)が上がる … 外が暑い、凝縮器が汚れている、不凝縮ガス(凝縮器で液体にならない空気などのガス)が入っている
  • 蒸発温度(蒸発圧力)が下がる … 着霜(蒸発器に霜が付くこと)している、冷媒が不足している
  • → 「圧縮の幅が広いほどCOPは下がる」とまとめて覚えると、選択肢の判断が速くなります。

冷凍トン

用語1冷凍トンとは?

0℃の水1トンを、24時間で0℃の氷にするのに必要な冷却能力です。日本冷凍トンで約3.86kWにあたります。

  • 冷凍能力[kW]÷ 3.86 = 冷凍トン
  • 例 冷凍能力77.2kW → 77.2 ÷ 3.86 = 20冷凍トン

覚える法令の「1日の冷凍能力」とは別物

  • ここでいう冷凍トンは、物理的な能力です。
  • 法令の「1日の冷凍能力」は、算定式で決まる数字で、まったく別のものです(第21回)。
  • 同じ「トン」でも中身が違う——ここを混同すると法令の問題で失点しやすくなります。

試験ではこう出る

  • ①冷凍能力の計算 … 循環量とエンタルピーが与えられ、Φoを求める。
  • ②COPの計算 … Φo と P、またはエンタルピーの差からCOPを求める。
  • ③Φk = Φo + P … 「凝縮負荷は冷凍能力と圧縮動力の和である」→正しい。
  • ④暖房COP … 「ヒートポンプの暖房COPは、冷房COPより1大きい」→正しい。
  • ⑤COPが下がる条件 … 「凝縮温度が高くなるとCOPは大きくなる」→誤り。小さくなります。

よくある質問

Q.モリエル線図がないと計算できませんか?

A.試験ではエンタルピーの値が問題文に与えられるのが一般的なので、線図を読まずに計算できます。ただしh1・h2・h3がサイクルのどこかを分かっていないと式に入れられません。第4回のモリエル線図と、この回はセットで理解してください。

Q.COPが3.75というのは、どういう意味ですか?

A.20kWの電気を入れて、75kWぶんの熱を運んだということです。「入れた力の3.75倍の熱を運んだ」わけですが、エネルギーが増えたわけではありません。熱を作ったのではなく運んだだけなので、1を超えることができるのです。

Q.h3とh4が同じ値なのはなぜですか?

A.膨張弁では、熱のやり取りがないからです。弁を通るとき、冷媒は圧力が下がって一部が蒸発しますが、外から熱をもらったり、外へ熱を出したりはしていません。だから持っている熱の量(エンタルピー)は変わりません。モリエル線図で膨張が真下への垂直な線になるのは、このためです。

まとめこのページのまとめ

  • Φo = qmr(h1−h4)/P = qmr(h2−h1)/Φk = qmr(h2−h3)
  • Φk = Φo + P。最後に必ず検算する
  • COP = Φo ÷ P。暖房COPは冷房COPより1大きい
  • 凝縮温度が上がる/蒸発温度が下がると、COPは下がる
  • 1冷凍トン ≒ 3.86kW
  • 物理の冷凍トンと、法令の「1日の冷凍能力」は別物

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