冷凍能力・冷凍トン・成績係数(COP)の計算|使う式は4つだけ【冷凍三種】
この記事で分かること
- 冷凍能力の式が使えるようになります
- 1冷凍トン=3.86kWの意味が分かります
- 冷媒循環量・圧縮動力・凝縮負荷の関係が分かります
- 成績係数(COP)の計算ができるようになります
保安管理技術には計算問題が2〜3問出題されます。ただし使う式は主に4つで、すべてモリエル線図(第4回)の上でつながっています。ここを一度整理しておけば、以降の計算がぐっと進めやすくなるでしょう。
まず、記号の意味をそろえる
用語比エンタルピーとは?
比エンタルピーとは、その物質1kgが持っている熱の量のことです。単位はkJ/kg。モリエル線図の横軸がこれです。2点の差(引き算)が、やり取りされた熱になります。
覚える覚え方
「エンタルピーの差 × 循環量 = 熱の量」。この一文が、以下の式全部の正体です。1kgあたりの熱(差)に、何kg回っているか(循環量)をかける——それだけのことです。
4つの式

- ①冷凍能力 Φo = qmr ×(h1 − h4) … 蒸発器で奪う熱
- ②圧縮動力 P = qmr ×(h2 − h1) … 圧縮機が加えた熱
- ③凝縮負荷 Φk = qmr ×(h2 − h3) … 凝縮器で捨てる熱
- ④ Φk = Φo + P … 捨てる熱=奪った熱+加えた力
例簡単な例え
④は当たり前のことを言っています。部屋から奪った熱と、圧縮機がモーターで加えた熱——その両方が、最後は外に捨てられる。エアコンの室外機から出る熱が、部屋から取った熱より多いのは、このためです。
注意計算のときのつまずき
- h1 − h4 の順番 … 大きいほうから小さいほうを引く(蒸発器と圧縮機は「出口−入口」、凝縮器は「入口−出口」)。逆にすると符号が変わります。
- 単位をそろえる … qmrがkg/hで与えられたら、3600で割ってkg/sにします。
- kJ/s = kW … エンタルピーの単位がkJ/kgなので、kg/sをかけるとそのままkWになります。
- 例題 冷媒循環量0.5kg/s、h1=400kJ/kg、h2=440kJ/kg、h3=h4=250kJ/kg。冷凍能力・圧縮動力・凝縮負荷は?
- ① Φo = 0.5 ×(400 − 250)= 0.5 × 150 = 75kW
- ② P = 0.5 ×(440 − 400)= 0.5 × 40 = 20kW
- ③ Φk = 0.5 ×(440 − 250)= 0.5 × 190 = 95kW
- ④ 検算 75 + 20 = 95kW ✔ 合っています
覚える覚え方
最後に④で検算する習慣をつけましょう。Φo + P = Φk になっていなければ、どこかで引き算を間違えています。試験中に自分でミスを見つけられるのがこの式の一番の価値です。
成績係数(COP)

用語成績係数(COP)とは?
成績係数(COP)とは、入れた力に対して、何倍の熱を運べたかを表す数字です。COP = 冷凍能力Φo ÷ 圧縮動力P。単位はありません(倍率)。
- 冷凍のCOP … COP = Φo ÷ P =(h1 − h4)÷(h2 − h1)
- ヒートポンプ(冷凍サイクルで熱を部屋へ運び込み、暖房に使う装置)のCOP … COP = Φk ÷ P =(h2 − h3)÷(h2 − h1)
- 暖房のCOPは、冷房のCOPよりちょうど1だけ大きい
先ほどの例題なら、冷凍のCOP = 75 ÷ 20 = 3.75、暖房のCOP = 95 ÷ 20 = 4.75。確かにちょうど1だけ大きいことが確かめられます。
なぜ?なぜ暖房のほうが1だけ大きいのか?
圧縮機に入れた力も、そのまま熱として使えるからです。冷房では「奪った熱」だけが成果ですが、暖房では「奪った熱+入れた力」がまるごと部屋に出ます。式で書くと Φk÷P =(Φo+P)÷P = Φo÷P + 1。
覚えるCOPが下がる原因(重要)
- 凝縮温度(凝縮圧力)が上がる … 外が暑い、凝縮器が汚れている、不凝縮ガス(凝縮器で液体にならない空気などのガス)が入っている
- 蒸発温度(蒸発圧力)が下がる … 着霜(蒸発器に霜が付くこと)している、冷媒が不足している
- → 「圧縮の幅が広いほどCOPは下がる」とまとめて覚えると、選択肢の判断が速くなります。
冷凍トン
用語1冷凍トンとは?
0℃の水1トンを、24時間で0℃の氷にするのに必要な冷却能力です。日本冷凍トンで約3.86kWにあたります。
- 冷凍能力[kW]÷ 3.86 = 冷凍トン
- 例 冷凍能力77.2kW → 77.2 ÷ 3.86 = 20冷凍トン
覚える法令の「1日の冷凍能力」とは別物
- ここでいう冷凍トンは、物理的な能力です。
- 法令の「1日の冷凍能力」は、算定式で決まる数字で、まったく別のものです(第21回)。
- 同じ「トン」でも中身が違う——ここを混同すると法令の問題で失点しやすくなります。
試験ではこう出る
- ①冷凍能力の計算 … 循環量とエンタルピーが与えられ、Φoを求める。
- ②COPの計算 … Φo と P、またはエンタルピーの差からCOPを求める。
- ③Φk = Φo + P … 「凝縮負荷は冷凍能力と圧縮動力の和である」→正しい。
- ④暖房COP … 「ヒートポンプの暖房COPは、冷房COPより1大きい」→正しい。
- ⑤COPが下がる条件 … 「凝縮温度が高くなるとCOPは大きくなる」→誤り。小さくなります。
よくある質問
Q.モリエル線図がないと計算できませんか?
A.試験ではエンタルピーの値が問題文に与えられるのが一般的なので、線図を読まずに計算できます。ただしh1・h2・h3がサイクルのどこかを分かっていないと式に入れられません。第4回のモリエル線図と、この回はセットで理解してください。
Q.COPが3.75というのは、どういう意味ですか?
A.20kWの電気を入れて、75kWぶんの熱を運んだということです。「入れた力の3.75倍の熱を運んだ」わけですが、エネルギーが増えたわけではありません。熱を作ったのではなく運んだだけなので、1を超えることができるのです。
Q.h3とh4が同じ値なのはなぜですか?
A.膨張弁では、熱のやり取りがないからです。弁を通るとき、冷媒は圧力が下がって一部が蒸発しますが、外から熱をもらったり、外へ熱を出したりはしていません。だから持っている熱の量(エンタルピー)は変わりません。モリエル線図で膨張が真下への垂直な線になるのは、このためです。
まとめこのページのまとめ
- Φo = qmr(h1−h4)/P = qmr(h2−h1)/Φk = qmr(h2−h3)
- Φk = Φo + P。最後に必ず検算する
- COP = Φo ÷ P。暖房COPは冷房COPより1大きい
- 凝縮温度が上がる/蒸発温度が下がると、COPは下がる
- 1冷凍トン ≒ 3.86kW
- 物理の冷凍トンと、法令の「1日の冷凍能力」は別物
費用はいくらかかる? 講座は必要?
冷凍三種はお金のかけどころがはっきりしている試験です。国家試験の前に受けられる公式の講習を使うと、本番が2科目から法令1科目だけになります。免除を持つ人の合格率は87.9%、2科目受験の人は45.0%(令和7年度)。講習・独学・通信講座の費用を、実際の金額で並べました。
